第6話 リッツ
次の日の朝
「んー。何着て行こう…」
朱奈はルーフェストとのデートに着ていく服を悩んでいた。
服はいつも部屋のクローゼットに沢山用意されてるのから着てるけど、この世界じゃどれがデート向きなんだろう…
後、ルーフェストの好みも分からない。
まあ、自分の好みで選ぶしかないよね。
朱奈は可愛らしい膝丈の薄ピンク色のフリルのついたワンピースを着て、ラベンダー色のショールを羽織った。
「まあ、シュナ様とってもお似合いです。お出かけですか?」
「ええ、ルーフェストと」
「デートですか⁈」
「えっ…ええ。それじゃあ、出かけてきます」
「あっ、ルーフェスト様はまだお支度が…」
「今日は外で待ち合わせなの。折角外に出るし、私は早めに出て散歩したいだけ」
フリのボロが出る前に話を切り上げ、朱奈は外に出た。
馬車の運転手に散歩したいと言ったら、街の外れにある緑豊かな遊歩道に連れてきてくれた。
朱奈は馬車を降り、遊歩道を歩いた。朝早くの散歩は気持ち良い。ここは緑がとても多くて空気も美味しい。街の中心からは少し離れているが、屋敷からはさほど遠くない。ここなら歩いてもそう遠くなさそうだ。
歩いていると、湖が見えた。朝日を浴びて水面がキラキラと輝いている。のぞいてみると、とても水が綺麗だ。
すると近くでバシャバシャと水の音が聞こえた。
気になり、音の方を向くと、裸の男性が水浴びをしていて、湖から出ようとしていたところだった。
「きゃあああああ‼︎‼︎‼︎」
裸‼︎なんで⁈
朱奈は大きな叫び声を上げた。
すると裸の男は叫び声に気づきこちらを向いた。
「あっ…」
男は気恥ずかしそうにそそくさと茂みの方へ身を隠す。
暫くすると、その男は服を着て出てきた。
「やあ…先程はすまない。まさかこんな朝早くに人が来るとは思わなくて」
「こちらこそ…びっくりして大きな声を出してすいません」
裸の男、もとい銀色の髪の男は、よく見るととても整った顔立ちで優しそうな笑みを浮かべている。髪は襟足に少しかかるくらいで、瞳は灰色で細身な体。
グレーやベージュの薄めの色でまとめたラフな格好のコーディネートがとてもよく似合っている。
「君はよくここに来るの?」
「いや、初めてです。最近この街に来たので、まだよく分からなくて。色々散策してみようかなと」
「そうなんだ。オレもだよ。一週間前にこの街に来て、この湖が気に入ってよくここに来るんだ」
彼の雰囲気はとても柔らかく、こちらまで優しい気持ちになる。
「私もここ、すごく気に入りました。緑も湖も綺麗で…とても気持ち良い場所ですよね。…でも、私もうすぐ寮に入るからあまり来れないかもな…」
「寮?」
「私魔法学校へ入学するんです」
「へぇ。オレももうすぐ忙しくなるからたまにしか来れないけど、また会えたら良いね」
「そうですね。それじゃあ、私用事があるので」
そう言い朱奈は立ち去ろうとした。
「あっ、まって‼︎君の、名前聞いても良いかな?」
「朱奈よ、あなたは?」
「リッツだよ、シュナ」
そう言い、リッツは朱奈な前に立った。そして手を取り小さな細長い金属の物を手渡した。
「これは…栞?」
「ああ、ここに咲いているリンクルスの花が書かれた栞だよ」
朱奈は足元を見ると、白い小さな花が咲いていた。リンクルスの花。この国の国花である。
「魔法学校へ入学すると言っていたから。本はよく読むだろうし、よかったら使ってよ」
「ありがとう、リッツ。またね」
朱奈はもらった栞をポケットにしまい、街の広場に向かった。
「シュナ、きっとすぐに会えるよ」
リッツはそう呟いてその場を去った。