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第11話 新入生歓迎会 前編

 暫くすると、三人降りてきた。


「あっ…」


「…お前も同じ寮か…。まあ、ギリギリ入学ならここの可能性は高いか」


 その内の一人は、先程文句を言ってきたキーリである。同じ寮で不服の様だ。


「そうよ。手続きが遅い人はこの寮だものね。じゃあ、あなたは何なの?あなたもこの寮じゃない」


 そうだ。新入生は五人この寮に入った。ここは手続きが遅かったものとか、諸事情があるものとか、そういう人たちの集まりだ。

 …多分私は両方。領主の息子の推薦だからね。

 でも、よく考えたら人には言いにくい事情の人もいるかもしれない。この聞き方は軽率だったかも。そう反省していると、エリオスが話し始めた。


「オレはねー、ライト家って言う侯爵家の生まれなんだ。でも妾の子でさー、正妻やその子供たちによく思われていないんだよー。だから、違う領土の学校にきたんだー。自分の領土内だと正妻の子供と一緒になっちゃうしさー。まあ、そんな生い立ちだからこの寮ってわけ」


 エリオスはあっけらかんと、自分の身の上話を語った。


 おっ…重い‼︎めっちゃ、軽そうに話してたけど、話重いよ‼︎


 皆もそう思ったのか、空気がどんよりしている。


「ごっ、ごめんね。私が変な事言ったばっかりに。話しにくい話を…」


「気にしない、気にしない。オレは別に自分の出自が不幸だなんて思ってないよ。確かに家では色々あったけど、お金には恵まれたから生活には困らなかったし。でも、あいつらと一緒は確かに辛いこともあったから、こうして家から離れて生活出来て今が一番幸せだよ」


 なんて良いやつなんだ‼︎


 この発言に感化されたのか次々と皆が身の上話を始めようとした。


「オレは…」


 キーリが話し始めようとすると、中から一人出てきた。


「おい、お前たちここで話し始めるな‼︎そういうのは、オレたちを交えて自己紹介してくれよー」


 五人揃ったのになかなか入ってこない新入生に痺れを切らした一人の先輩が中から出てきた。先輩は先に入り扉を閉めた。

 中からどーぞと言う声が聞こえたので、私たちは扉を開いた。


「「「入学おめでとう‼︎そして、ようこそ我らが寮へ‼︎」」」


 先輩たちの歓迎の声とともに、クラッカーがなる。飾り付けられた部屋、たくさんの豪華な食事。どうやら入学、入寮パーティーを開いてくれるようだ。


「なかなか入ってこないと思ったら、外で身の上話を始めちゃうし、どうしようかと思ったよー」


「はははっ、すいませーん」


「そんな話はいいから。さあ、まずは食べましょう。折角の美味しい料理が冷めちゃうわ」


 そう言われ、取り敢えず乾杯し、ご飯を食べる事にした。

 食べ始めて暫く経つと一人の先輩が話し始めた。先輩は少しガタイが良く、背も高い。茶色の髪と瞳をしており、髪は短い。


「えー、では。そろそろ自己紹介したいと思います。まずはオレ。ライアス=コルッツォ。騎士科に所属。実はオレもルーフェスト様に昨年拾われて、剣の道を進ませてもらえた。だから、ルルリカ。君と似たようなものだよ。ルーフェスト様はお金がないけど学びたい者に手を差し伸べてくださる。オレ以外にも過去に一人そういう人がいたよ。その人は今の王宮筆頭魔導師だよ。オレたちもルーフェスト様の恩に報いないとな」


 皆が騒ついた。まさか、私以外にも二人同じように支援を受けている人がいるとは。しかも、一人は王宮筆頭魔導師。私も頑張らねば…‼︎


 ライアス先輩が席に着くと、今度は隣にいた女性が席を立った。紫の腰より長いウェーブのかかった髪に紫の瞳。なんだかこれで三角の帽子被ったら、私の中の、向こうの世界の魔女のイメージそっくりの女性だ。


「私はモナティ=コーン。魔法科所属。魔女の末裔よ。だからこの寮にいるわ」


 この世界の魔女。それは生まれながらにして莫大な魔力を保有している存在。森の集落でひっそりと暮らしており、年頃になると人里に現れ子を成して集落に戻る。魔女の子は必ず女子(おなご)で、集落には女性しかいない。男子禁制の集落である。

 ーーそう本には書いてあった。


「あっ、昔よりは他の人に溶け込んで普通に暮らしている人も多いのよー。集落のばばあたちは結構昔ながらの凝り固まった考えの人多いけどねー。私は別に男を探しにきたんじゃないわよー。最近は色んな魔法を知る為に魔法学校に通う子も多いんだからー。みんな、モナって呼んでねー、よろしくー♪」


 その話を聞き、一同(特に男子)はホッとする。まだまだ、魔女の存在はレアなようだ。


 モナ先輩が席に座ると、そのとなりのハーヴェル先輩が立つかと思ったが立たない。それどこれか、先輩たちの話も聞かず、黙々と食べている。なんてマイペースな先輩だ。


「ちょっと、ハーヴェル‼︎あんたの番よ‼︎」


 モナ先輩に体をゆすられ気づいたハーヴェル先輩は飲み物を飲んで落ち着いてから座ったまま話し始めた。


「ハーヴェル=マリル。……魔法科所属。……よろしく」


 終わるとまた黙々と食べ始めた。


「ごめんねー。こいつ変わったやつで。でもいい奴だからさ。因みに魔法科だけど、意外にも剣術も大したものなのよー♪じゃあ次、新入生の皆、自己紹介よろしくー♪」


 すると、エリオスが席を立った。まあ、彼は端に座っていたし順番的には妥当だろう。

そして、先程私たちに話した自己紹介をした。エリオスが座り、次はその隣に座っている私の番だ。


「シュナ=リュークレスです。魔法科です。ルーフェストに拾われて、魔法を学ぶ機会を与えてもらいました。恩に報いる為にも頑張りたいと思います。よろしくお願いします」


 まあ、こんな感じが無難かな?


「ねえねえ、ルーフェスト様と付き合ってるんだよねー。馴れ初めとか聞いてもいいー?」


 なっ、馴れ初め⁈そんなの特に無いんだけど。モナ先輩からの思わぬ質問であたふたしていると、ライアス先輩がさらに爆弾を投下した。


「えっ?恋人のフリじゃないの?」


 えぇえええーーーーーー‼︎

 なんで知ってるんですかー‼︎ってか言っちゃダメでしょー‼︎


 冷や汗の止まらない朱奈は、嘘がバレないように、引きつった顔で笑うのが精一杯であった。



今回は前後編に分けました。

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