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第2章 アンドロイドは英国の夢を見るか 一編 不気味の谷

「こんなところでどうだろうか」


 どうやら、軽い捻挫だったようで骨に別状はなかった。

 包帯を巻き、冷やして炎症を抑える。

 少しはマシになるだろうか。


「えぇ、痛みがかなり引きました。 ありがとうございます」


 うん、処置は適切だったようだな。

 さて、ここからどうするか。

 何も聞かないって約束をしたか。

 別に守る必要はないが、まぁ答えてくれるわけもない。

 ここは信用を勝ち取るか。


「まだスライムと遭遇することもあるだろう。 お前がいいとこまでなら送るぞ?」


「それでもいいのですが……帰る場所がなくなってしまいました」


 なくなった?

 どういう意味だろうか。


「どーゆーことだ?」


「帰る場所を、あのスライム達に壊されてしまって、あなたを信用させてください」


 信用させてください……ね。

 普通に考えたら、泊めてくれとかそういうことだろ?

 アジトに連れてくか……信用してもいいのか?

 アジトに連れていって取られる情報と、こちらが得られる情報を差し引いてもおつりが出そうだな。


「わかった。 儂はある組織に所属しているのだが、そのアジトに連れて行こう」


「組織……ですか?」


 演技には見えないが、連れて行く以上疑わざるを得ないか。


「あぁ、少し遠いが歩けそうか?」


「えぇ、なんとか。 その、ありがとうございます」


 2人はアジトに向かって歩き出した。

 イレブンの足取りはそれほど悪くはなく。

 いや、普通すぎるな。

 炎症は確かに見て取れたが。


「なぁ、聞いてもいいか?」


「何をですか?」


「兄弟とかいるの?」


「………………」


 沈黙が帰ってくる。

 少し間を置いてからイレブンは答えた。


「えぇ、います」


 無機質な声だった。

 事務的な、そう言うようにマニュアル化されているような。

 あるいは、そういえと指示されたような。


「何人?」


「ノーコメントです」


「そ。 まぁ興味ないけどね」


「興味がないのに聞いたのですか?」


「うん、君の兄弟には興味はないよ。 ただ君に興味はあるかな」


「そうですか」


 なんというか、感情が希薄だな。

 例えるなら機械。

 指示を全うし、プログラムされた内容に従う。

 それを淡々とこなす。

 人間らしさが薄い印象だ。

 まぁ、そういう人間も過去には多く見てきたが。

 その後は適当な会話が続いた。

 こちらが質問すると、答えたり、答えなかったり、有用な情報は、まるで情報規制がされているようで、それが得られることはなかった。


「ついたぞ。 少し待っていてくれるか? 事情を話してくる」


「はい、わかりました」


 イレブンを残し、エドの元へ急ぐ。

 エドは待っていたと言わんばかりにこちらを出迎えてくれた。


「話を聞こうか」


「エド巡査!!」


「誰が巡査だ」


「被疑者確保しました」


「警察ごっこか? あん?」


「ほら、さ。 待たせたんだから迎えに行こうぜ」


 相変わらずエドはノリが悪あがきだな。

 PP全部失いましたか?

 って感じだ。


「……部下に確認はさせた。 あれは目撃証言と一致した。 黒だ」


「だと思ったから連れてきた。 その場でとらえるか?」


「いや、泳がせたい。 1人じゃ情報は取れない」


 エドと儂は玄関口で待つイレブンを迎えにいった。


「待たせたな。 このおっさんがここで1番偉い人だ」


「そうですか。 それは、失礼します」


 言い終えると、イレブンは上着を緩め肌を露出させる。

 一瞬、呆気にとられた。

 もしくは、見惚れただろうか。

 意識と時間が奪われ、イレブンの攻撃はエドを捉えようとした。

 右手にはナイフ、左手には雷を纏う。


「……甘いわ」


 ナイフを捌き、奪ったのち地面に突き刺す。

 左手はビンタのようにエドの顔面近くをはたいたが、エドはスウェーバックで回避する。

 その刹那、左手を鉄砲のように変化させ雷を放出する。

 まずいか、と思われたがエドは逆方向から雷を同威力でぶつけ相殺する。

 いや、単発のエドの雷と照射するイレブンでは効果時間が違う。

 時間稼ぎにしかならないのでは?

 と、思ったが杞憂だった。

 イレブンの雷は足元へ落ちていき、エドに届くことはなかった。


「なるほど、そのためのナイフか」


 地に突き刺さるナイフは避雷針の役割を担い雷を誘導する。


「見ての通りじゃ。 捕らえろ」


 儂は、ガバメントを構えて狙いを定める……が、当てるビジョンが見えない。

 大人しくしまうこととなった。


「その狙いは私なのでしょうか……それとも?」


 イレブンが、小声で儂に聞いてくる。


「さて、な。 ノーコメントだ」


 イレブンは周りの組員たちに手錠をはめられ連れていかれた。


「エド、ここじゃ強姦とかはしないよな?」


「なんじゃ。 したかったのか?」


「……そこまではなぁ」


「しても構わんが」


「いやしないって」


「さて、どこまで本当じゃろうな」


 エドに地下牢と手枷の鍵を渡され、エドはそのまま奥へと消えていった。

 さて、楽しみはここからだな。




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