番外編、 薄汚れたガバメント
ある日の修行中のこと。
「そういや、そのハンドガン。 どこで手に入れたんだい?」
と、エドが聞いてくる。
「あ、それ私も知りたい。 なんでそんな危ないものを持っているのかな?」
修行中のヤジ係を担当してくれるサテンが合わせて来た。
「これか、話せば長いが……拾った」
「はぁ拾ったねぇ。 まぁここじゃそういうのは腐るほどあるだろうが……そんな状態の良いものは初めて見るのう」
エドは全く納得をしていないという態度で聞いてくる。
「仕方ない。 少し昔話をするか」
儂は床に座り込むが、エドが間髪入れずに突っ込んでくる。
「おいこら、休んだんじゃねえぞ」
「ムーーーー」
儂は再び立ち上がり、指先からコードを出す。
白い、長いコード。
エド曰く、これを生物に差し込むことにより情報を奪えるらしい。
儂はまだ、これを出すことしかできないが。
さて、話すとしようか。
儂の産まれを。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー物心ついた時には、周りには誰もいなかった。
壁に木の板を立てかけて雨よけにしているだけの家。
そこが儂の記憶の始まりだ。
「その時にはもう母も父もいないことには気がついていたからな。 1人で生きていく算段が必要だった」
「ほーう。 たくましいのう」
ーー寝床は確保されていたからな。
必要なのは食料だけだ。
……見つけたのはスライムだけだったが。
「あの時、サテンを食べてやりたいとどれだけ思ったことか」
「ちょっと、その時はまだ私と出会ってないでしょ」
「運命で気がついていたのだ」
「適当なこと言わないでよ」
ーーサテンが邪魔をするが……話を戻すぞ。
(ちょっと、適当なこと言ってるのはウルフでしょ)
ーー戻すぞ?
その時にはもう炎弾を放つことができたのでな。
幸いにもスライムを討伐することは可能だった。
(通称、フレイムバレット、或いはファイアーボールかのう。 それを訓練なしに使えるのは妙じゃな)
で、ガバメントの話だな?
銃自体はそこらに落ちているし、別段欲しいとは思わなかった。
だが、まさか人を見つけるとは思っていなくてな。
人が相手ならば、話が別だ。
たかだか拳銃といえど、良い武器となる。
「だから、拾い集めた。 もちろん、ほぼほぼ使い物にはならなかったし、弾もなかったがな」
「そんなもの集めてどうするの?」
「簡単だ。 組み立てた。 それぞれをバラしてな」
「たしかに、それは可能の範疇じゃろう。 貴様が子どもであることを差し引けば。 じょが、弾は? とうしたんだ」
「熱を出すことは可能だったのでな。 スズと鉛を集めて加工した。 試行錯誤の果てというやつだ」
2人が惚けた顔をしている。
やれやれだ。
だから、話したくなかったのだが。
「さて、どこまで信じてくれたかな」
「嘘だったの?」
サテンが間髪を入れず聞いてくる。
が、残念だが。
「全て本当だ。 エド、いいたいことがあるんだろ?」
「貴様の戦闘を見た。 やけに落ち着きすぎている……まるで経験値が違った。 わしなんかとは。 だが、その歳だ……何か隠していることはあるか?」
どう答えるべきか。
別に隠す理由もないが。
話すメリットもないように思う。
そうだな。
ならば、折衷案だ。
「隠し事はある。 だが、話せない」
自分が、世界の人口を1割にした男だという話。
したところで信じてはもらえないだろうし、信じられたら余計厄介だ。
まぁ、話すわけにもいくまい。
「そうか、なら……話せる日が来ることを待つぞ」
「覗かないのか? エド、お前の力を使えばわかることだろう」
「なぁに、誰にだって隠したいことの1つや2つはある」
男2人の笑い声と、それに遅れて女の子の引きつった笑いが聞こえた。