第1章 エピローグ
アジトの大広間には、煌びやかな装飾がされ、眩しさを感じる。
食事は、スラムで取れる様なスライムや、獣などではなかった。
かつての、懐かしき記憶。
小さい頃、なにかの催しで参加したパーティ。
そこで出されていたもの。
暖かくて、栄養のあるもの。
七面鳥や、ロブスター。
他にも、豪華絢爛、あるいは贅沢なものが並んでいた。
「大佐、これは?」
流石に不自然すぎる。
たしかに、スラム全体を束ねる組織であれば、規模も大きいだろう。
だが、スラムに似つかわない。
こんな……パーティは貴族とかでやるものだろう。
「これは……とは?」
「とぼけるな。 襲ったのか? べつに、それを責めようとかはないが」
「いや、1つ言えることは、本部は意外にいいところだよと言ったところか」
「そうか。 なぁ大佐、頼みがあるのだが」
「何かね?」
「儂とやりあってくれないか?」
「だが、君は怪我をしているではないのか?」
服を緩め、包帯を外して怪我の様子を見せる。
もっとも、すでに完治しているため、綺麗な肌を見せているわけだが。
「これならどうだ? やってくれるか?」
大佐とやらなければならない理由がある。
自分が、この世界でどれだけ弱いのか。
それを知らなければならない。
「わかった。 付いて来たまえ」
大佐がパーティ会場を後にする。
大佐は歩幅が広く、付いていくのがやっとだった。
かなり奥に進んでいく。
そしてたどり着くのは鉄の……いや、鉄なのかはわからないが、金属の扉だった。
「まずは、その傷の完治の秘密について話してくれないか?」
「話したくないな」
秘密と手札は多いほうがいい。
その理論では何故かUNOでは勝てないのだが。
「なら、この話は終わりだが」
「……………………」
「どうするのかね」
仕方がないか。
そうだな。 話してもそこまで大きな被害はあるまい。
それよりも、今はここで大佐の力を見て……自分の弱さの確認をするほうが優先か。
「こいつを知っているか?」
ネックレスを外し、ロケットを開く。
そこから、緑に発光した石を取り出した。
「魔石かね?」
「さぁな。 ただ、これがあると傷の治りが早いんだ。 あるいは、あの程度の傷なら1時間もいらない」
「それは、魔石……というより、西洋の賢者の石に近いな。 持つ者の、真理を開く。 君の場合は生きる意志だろうか」
意志か。
石だけに?
……ちょっと面白いな。
「さて、話したぞ。 もういいだろ」
「あぁ。 構わんよ。 後悔はするなよ?」
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結論から言うと、ぼろ負けだった。
他に伏せ、もう動けないでいる。
ガバメントには弾はもう残されていない。
疲労がたまり、ピクリと動かすだけで体は拒否反応を見せる。
「やるな。 大佐」
跳弾、目くらまし、力技。
全てを試したが銃弾は消え失せ、攻撃は避けられる。
「やはり、見事だな。 その歳でもうそこらの奴になら負けそうもない」
「だが、大佐には負けた」
「私の力……受け継いで見ないかね?」
「はっ?」
受け継ぐだと?
どう言う意味だ?
「エドのもとで10年、修行を積みたまえ。 その後、どうするか判断する」
「大佐の力……面白い。 分かったやってみよう」
儂はこの日から、エドを師として、修行を積むこととなった。
ーー強く。
ただ強く。




