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宇宙の真理

「はーい。 イレブンも完全回復したわけだし、泊まっていきなよお兄さん。 僕も、イレブンの精査とかしたいし」


 アドミからの提案がある。

 ウルフサイドとしては願っても無い事だ。


「精査? 精密検……査か。 たしかに、イレブンが人になったっていう原因の究明もしたいしな」


「それに関しては大方察しはついてるよ。 ただ、人でないものが人になったからさ。 不具合がないかってこととか見とかないと」


「あぁ。 たしかにそうだな。 ていうか、ヒト化の原因、もう判明してるんだな」


「ん? 仮説だよ……か、せ、つ。 昔の知人にそんな力を持ってたやつがいてね。 そんな感じ」


「どんな感じなんだか。 じゃあ、えっと……部屋とか案内してくれるのか?」


「え? 一緒に寝ないの?」


「そうですよ。 私たちと一緒に寝ましょうよ」


「アホか、おまえら。 外のアニマルメイド達に客室を案内してもらうとするよ」


「ちょっとまちーや。 ウルフ。 僕たち2人にしかできない仕事が待ってるんだよ?」


「面倒ごとならパス。 悪いけどもう眠い」


「いやん。 そう言わないでーー。 その子にも関係ある話なんだよ?」


「イレブンにも?」


 アドミは右手を自身の顔に、左人差し指をこちらに向けながら答えた。


「イグザクトリー。 その、イレブンのこと。 もう使えないからさ」


「マスター……ひどい。 たしかに、もう私は使えないかもしれませんが」


「あーあ。 アドミが泣かせたー。 いーけないんだー」


「えぇ? ふぇぇえ。 ご、ごめんよぉ。 そういうことじゃないんだよぉお」


 アドミが戯けると、周囲に笑いがこぼれた。


「ははっ。 それで、イレブンが使えないってどういう意味だ?」


「あれ、怒ってない? 傷ついてないの? 良かったぁ」


「怒ってないので、説明をお願いします」


「はいっ!! アドミ、説明させていただきます。 簡単に言うと、造形物には創造主が名前をつけられるんだけど、人になった時点で自立しちゃうわけだから名前が新たに必要になるの。 それに、人の名前がナンバーってのもなかなか……ね?」


「じゃあ、儂たちで名付け親になるってことか? それなら、本人につけさせればよかろうに」


「いやぁ。 それはだめ」


「え? どうして」


「私がつけていいんでしたら、一つ考えてるものがあります」


 イレブンが、手を上げて、ぴょんぴょんと跳ねる。


「……あー。 では、イレブンさん。 どうぞ」


 アドミがどこからともなくマイク取り出して、イレブンに手渡した。


「闇の災厄。 ダークネス・カラミティ。 というのはどうでしょうか?」


 一点の曇りのない瞳。

 変わらず平坦な、呼吸と脈拍。

 冗談で言っているわけではなさそうだ。


「ね? 僕たちが名前をつけるとそうなるんだ。 だから、ウルフにつけて欲しいなぁ」


「えっ!? そんなに変な名前ですか? かっこよくないです?」


「んー。 まぁ、たしかに悪くはないな」


「え? ウルフもそういう感じかい?」


「ですよね。 やっぱりですよね」


「だって、カラミだろ? アドミと似ているし……まぁわかりやすいだろう」


 イレブンから、目のハイライトが消える。


「マスターと似ているなんて、自殺ものです。 やっぱり、何か考えてもらったもいいですか?」


「うーん。 人の名前……ね。 儂も自分以外につけたことがないからな」


 ーー正邪。 なんかある?


 ーーーーン? アァ。 例エバ、俺ノイタ世界デハ、最初ノ人工知能二付ケラレタ名前ハ、HAL。 ダッタナ。 コノ意見ハ参考ニナリマシタカ?


 ーー十分。 ありがとう。


 ーーーードウイタシマシテ。


「同居人は、ハルっていうのはどうかって」


「ハル……いい名前ですね。 私も春は好きです」


「ハル……ね。 2001年宇宙の旅か。 孫と観に行ったなぁ。 その後、僕は死ぬんだけどね」


「おい。 不吉なこと言うなよ」


「ごめんごめん。 で? イレブン。 気に入ったんだっけ?」


「はい。 いい名前であると思います」


「それはよかとばい。 ハルという名前に誇りを持ってほしいとね」


「どうして博多弁なんだ……じゃあ。 ハルって名前、アジトのみんなには伝えておくよ」


「ありがとうございます。 あの、特にサテンちゃんには、よろしくお願いします」


「あぁ。 任せとけ」


「じゃあ、僕はハルの調整と検査に入るから、ほら、でてっておくれ。 部屋は案内させるよ。 夜の方も……君が希望するなら。 ね?」


「あほ。 いらんわいそんな……いや、まぁ考えとく」


「あ、えっとウルフさん。 ありがとうございました」


「あぁ。 また、元気な姿を見せてくれ」


 客室へ、案内されたウルフは、夜を明かすまで、ベッドにどっぷりと浸かった。

 意識が朦朧としていく中、五感が、何かを感じる。

 ただ、気持ちが良かった。

 その夜、何があったかは、ウルフと……姉妹たちにのみ、明かされる。

今回より、イレブンの名前はハルに改名されます。

ブクマ8ありがとうございます

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