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今明かされるー衝撃のー真実ー

「おんやぁ。 まだ治療が終わってないなんて僕も鈍ったかな」


 部屋に戻ると、金属のベッドに横たわる少女、イレブンがいる。

 彼女は、緑の光で包まれていた。

 アドミの言い分も合わせると、まだ治療中の証だろう。


「ずいぶんと可愛らしい寝顔ですね」


「なんだい。 襲っちゃうのかい? お兄さん。 良いよ……その代わり横で見てるけど」


「なんだよその条件。 絶対に嫌だわ」


「えーーっ。 せっかく生のAVが見られると思ったのに」


「生なのにビデオて……」


「やーれーよ!! やーれーよ!!」


「だからやらねえっていってるだろっ!!」


「ちぇっ。 もうやりたいっていったも知らないからね……あっ!? もしかして……」


「もしかして……なんだよ?」


「僕とやりたい……「そんなわけないだろっ!!」


「あはっ。 だよねこんなおばさんなんて誰もいらないよね」


「はっ? おばさん……どういうこと?」


「あれ? 言ってなかった? 僕、今年で500歳ですわよ。 おばちゃまですわよ。 おほほはほ」


「ええ……じゃあお前に欲情したらロリコンじゃなくてババコンになるわけか」


「おいおい。 なんだい? ババコンって。 力道山の弟子か?」


「……今ので相当な年齢差を感じたわ。 ていうか、こっちにも力道山とジャイアントさんいるんだな」


「んー。 この世界じゃあったこともないね。 まぁ僕、生まれはこの世界じゃないし」


 ここで明かされる障害の真実だった。

 ウルフは驚きの声をあげ、手に持っていたティーカップを落とした。

 幸い、中身はからで、カップが割れなかったため、大事には至らなかった。


「それ、どういう意味だよ?」


「どういう意味って。 多分、ウルフも別世界から来たのかなって思ったから言ってみたけど……あたりだった?」


「当たりって……」


 ウルフは、動揺しながらも、情報規制の必要性について模索する。

 この場合、ほぼバレているため、隠すことに意味はない。

 そう判断して、言葉を続けた。


「……そうだな。 力道山ってことは、もしかして同じ世界か?」


「ふうん。 そうかぁ……で? 君は、異世界からやってきた人なのかい?」


 同じ質問が帰ってきた。

 意味がわからない……いや、わからなくはないが。


「どういう……意味なんですか?」


「その敬語は迫力に押されて出たのかい? それとも、罪悪感からなのかな? まぁいいさ。 教えてあげるよ、ウルフ。 僕たちの罪を」


「つっ……罪?」


 ウルフの頬を汗がつたる。

 視界は湾曲になり、呼吸音が……心音が聞こえる。


「そう。 罪さ……僕たち異世界転生者は、この世界に肉体を持たないから、存在するために他の体を持つ必要がある。 そして、その対象が人だった場合」


「人だった場合」


「ーー精神を食いのっとる」


 ゴクリ、唾液が喉へ送り込まれる。

 明らかに動揺をしていた。


「お前も……そうしたのか?」


「僕の場合? うーん。 僕の場合は、運が良かったのか悪かったのか……死んじゃったんだ。 あの子」


「死んじゃった? だと。 なら、儂の場合は?」


「君の場合……ね。 どうなんだろうね。 だってウルフ、君、ホムンクルスだもんなぁ。 どうせ、精神も作られたものだろうし……ねぇ?」


 ウルフは、アドミの肩を掴み壁に押し付ける。

 装飾品と化した試験管をはじめとするガラス品は床へと落とされ、割れていく。


「儂は……儂、は人……じゃないんだ。 それは知っている。 作られた精神……なら、作った人がいるってことか?」


 だんだんと呼吸を正しながら、肩から手を外す。

 アドミがパンパンっと手を叩くと、メイド服姿の姉妹達が現れ部屋を掃除していった。


「そうだよ。 でも、そう邪険に思う必要はないさ。 だって、どんなものであれ、それに意思があれば人と変わらないんだから」


「……お前がいうと皮肉だな。 お前の身体も、人とは呼び難いだろうに」


 アドミの体は、先の戦闘で一度崩壊した。 だが、すぐに再構築され、今も無傷で動いている。


「んー? これ、便利でしょ。 肉体を持たない精神に、身体を与えるなら、これ以上のものはないよ」


「お前は、そんな化け物みたいな身体で納得できるんだな」


「化け物なのは変えられないけど。 怪我しないし、何にでも手が届く。 最高だよ。 この化け物の体は」


 アドミが笑顔を見せながらそういう。


「そうか。 だが儂は、ごめんだね。 化け物は、化け物だ。 やっぱり、儂は人間なんかじゃなかった」


 アドミが、ビンタをする。

 それは、ウルフがこれまで受けた攻撃の中で1番威力のないものだった。


「何をするんだよっ!!」


 ウルフが仰け反った身体を戻し、アドミに怒鳴る。

 そのまま言葉を続けようとしたが、その言葉はそれ以上続かなかった。


「化け物の身体で……納得できるやつなんて、いるわけないじゃないか」


 アドミは涙を流していた。

 血液すら通ってないその身体で涙が出る。

 そのこと以上に、人の感情というものが、ウルフにひしひしと伝わってきた。

 アドミは言葉を続ける。


「だけど……いや、だからこそ。 化け物であることに、価値を見出さなきゃダメなんじゃないか。 人と違うことに誇れることを見つけなきゃダメなんだ。 僕は、結局、化け物になっても、共を救えなかったけど、君は、その身体でやりたいことをやるんだろ!!」


 アドミの涙は止まらない。

 ウルフは、反省をした。

 深く、より深く。

 自身の間違いを恥じた。


「そう……だな。 儂が悪かった。 許してくれ」


「うん。 いいよ。 僕とセックスしてくれたらね」


 アドミの涙はもう止まっており、あどけない表情でそう言い返したきた。


「は? いや、え? お前泣いてたんじゃ……」


「僕、アドミ……500歳。 血も涙もない体になりましたが、この通り感情は残ってます」


 敬礼を見せつけながら、アドミは答えた。


「……涙は嘘でも、心は嘘じゃないってことか?」


「うーん。 まぁ化け物扱いは慣れてるけどね。 ちょっとは来るものがあるかなー。 あ、ウルフ、ちなみにね」


「ん? ちなみに……なんだよ?」


「女の涙に騙されちゃダメだよ?」


「うるせえ。 死ね」


「やーだぷー。 もう1人も、ウルフを大事にしてあげてね。 君が何者か知らないけど」


 ーーーーサテ、何ノ事ヤラ。


 2人が騒がしくしていると、やがてイレブンが目を覚ます。

 イレブンが、マスクをとり、口から呼吸器を取り出す。

 そして、こう言った。


「おはようございます。 うまく言ったんですかね?」


「「あぁ。 完璧だった。 おはようさん」」


 イレブンの治療が完了した。




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