表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/49

番外編 正邪の話 いじめ だめぜったい

 この話をするのに、一つ、ルールがある。

 簡単なことだ。

 これを聞いたから、出てしまった。

 そんな不利益の責任を、俺に押し付けないでほしい。


 それが約束できる者だけ、聞いてくれ。


 これは、まだ、俺が9割殺しなどと呼ばれてなかった。

 まだ平和な日本のちっぽけな町の話。


 街じゃねえぞ? 市町村の、町だ。

 ちっぽけな田舎さ。


 おっと、名乗ってなかったな。

 この話を聞きたくないやつはもう消えたらしいから……自己紹介といこうか。


 正邪。


 善悪……正邪だ。


 え? あぁ。 これは、さがなって読むんだ。


 ちなみにあだ名は半魚人。


 って、誰がさかなやねん。


 まぁいい。

 そこにはまだ学校で物があって、人が集まり教育をしていたんだ。


 なぁ、お前……学校といえばどういうとこだ?


 勉強と友達……ねぇ。

 普通すぎて面白くない。

 死ね。


 まぁ、いじめと自殺の聖地だわな。

 そこに、女の子がいたんだ。

 可愛い子でさ、ちょっと暗い感じの子。


 なんかその子、いじめられててさ。

 コンドームとか、机の上に置かれたり……なんだろ。

 なんだっけ? あぁ、服のボタンを外されたり……なんか陰湿なことが多かったな。


 当然、俺の性格からして見ておかないわけだろ?

 止めに入ったら庇ったりするわけよ。

 そしたら、いじめの対象リストに入るじゃん。


 いじめられるのなんて16年、じきに17年生きて初の経験なわけで、新鮮でさ。

 はじめはやり返すわけよ。

 でも、数の暴力って流石だわ。


 しかも、こっちが手を出すと、全部俺のせいにされて、損するわけよ。


「お前ら……こんなことして楽しいか?」


「楽しいわけないじゃん。 だから死ねよ。 こんなことしなくていいようにさ。 あのごぼう女と一緒に心中しろ」


 なぁ? 面白い会話だろ?


 その時点で内申点なんてあってないようなもんだし、進学も就職もする気なかったからな。


 そういや、俺にも最初、味方がいたんだよ。

 中学の時カツアゲが流行ってさ。

 みんなで、手に入れた金額自慢するわけよ。


 その中でも、腕力や強いやつ……金倉って言うんだけど、そいつが高校生のヤンキーに手を出して、返り討ちにあってさ。


 みんなで復習に行こうって話になるんだが、みんなびびっちまって、仕方ないから俺が行くしかないわけじゃん。


 でも、負けるんだろうなって思うだろ?

 その高校生を後ろからレンガで叩きつけて1発KOよ。


 はははっ。 その時の俺、強かったな。


 でも、その時求めていたことは手に入らなかった。

 金もなんかいらなくて、みんなに譲ってさ。

 そのときは楽しかったな。


 なんの話だっけ?

 そうそう、いじめだよ。

 いじめの怖いところはさ。

 あれ、ローテーションするんだ。


 いじめの対象を。

 同じ人ばかりいじめても、マンネリ化して、つまんないんだろうな。

 いじめの対象に、いじめさせる。

 そうすることで、ある程度のローテーションが生まれる。


 まれに、いじめ側に回る出世。

 いじめ側をいじめて出世する、下克上。

 毎日、あるいは毎時間いじめの対象が変わるバブル。


 そして、いじめの対象が頑なに変わらない……氷河期。


 二回あった氷河期は両方とも……俺よ。


 第一回いじ職氷河期は、俺がインフルで休んだことにより終わった。

 休み明け、学校に行ったら、いじめっ子が嬉しそうに。


「大丈夫か? ほら、お前もあいつに卵投げようぜ?」


 って言うんだ。

 インフルの時嬉しくてさ。

 しばらく学校行かなくていいのが。


 でも、辛い思いを断ち切って学校に行ったらこれよ。

 拍子抜けだね。

 いじめの対象が、いじめっ子側の人間だったから、第一回は、下克上により幕を下ろしたんだ。


 そいつの苗字、小田でさ。

 本能寺の変って、裏では俺は読んでたよ。

 そのときは、なんか、いじめっ子の仲間になった気分で嬉しかった。

 だから、いじめは無くならないんだろうな。

 今にしてそう思う。


 2回目の氷河期が、さっき話してた、暗い女の子を庇った時から始まって、一つ、嫌なことがあったんだよ。


 一緒に高校生を倒した仲間たち。

 あいつらもいじめに加担していた。

 そして、極め付けが、その女の子まで敵になったんだ。


 その結果、何をしたと思う?

 ヒントは、俺の最終学歴……中卒。


 いじめっ子たちに復讐して、中退?


 いやいや、そんなことできるやつがいじめられるわけないだろ?


 答えは、何もしなかった。

 いや、これは強がりだな。

 なにも、できなかった。


 だから、今お前に銃を向けている俺は、別の出来事で変わったんだよ。

 それを聞きたい?

 でも残念。


 お前も死ぬから。


 結論はね。

 人は変われるんだ。

 だから、生きてるだけで勝ち組。

 いじめられても、いじめてても。


 生きてるやつが偉いんだから。


 だから、ころす側に回れ。


 法律だって、人を殺すためにできてるだろ?


 そう言うことさ。


 さて、俺の話を聞いてくれる人も、あとお前だけだな。


 逃げたやつは、あとで追いかけるとして、さよならの時間だ。


 え? ひどいだって。


 どう言う意味だ? 話を聞いてボケっとしてるから殺されるだぞ?


 ほら、言ったじゃんか。


 話を聞くことでどんな不利益が出ても俺の責任にするなよって。


 わかったね?


 じゃあ。


 さよなら、トモダチ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ