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第2章 アンドロイドは英国の夢を見るか 7編 スコルピオ

 あたりを囲んでいた奴らはいつのまにかいなくなっていたため、アジトを聞くことは叶わなかった。

 ただ、それについてはすでに、ジョーがあたりをつけていた。


「奴らのアジトは街でも有名なんだ。 ここから北西の方向に進んでいくとあるよ」


 とのことだった。


「とりあえず背中にのれ。 とばすぞ」


 周囲を黒球に包み空気抵抗を無にする事でマッハを超える速度に到達する。

 反動もないため周囲に影響を及ぼすことはない。

 イプシロンからヒントを得た移動方法だった。


 ただし、魔力をかなり持っていかれるが。


「わぁすごいすごい。 サラマンダーより……」


「……ずっと早い。 か?」


 2人は目的の地へ進み出した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  〜〜ーーーーーー少年移動中ーーーーーーー〜〜

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そこに、少女は軟禁されていた。

 衣類が乱されている気配はない。

 体に何かされたってことはなさそうだ。


「げへへ、嬢ちゃん起きたのかい?」


 そこには卑しくも肥えた豚が立っていた。

 例えるならフィクションに出てくるオークだろう。

 悲しいかな、わたしにはその豚が同じ人間だとは思えなかった。


 ーーだって私、超面食いだもん。


「ここはどこ? さっさと返してくれないかしら」


 できる限り声を低くして、威嚇するようにオークに訴える。


「高飛車だなぁ。 そういう女の方が楽しみがいあるんだよなぁ。 まぁ順番は順番だ。 すぐに回ってくるからよ」


 オークが恍惚な表情を浮かべながら顎をグイッと振る。

 それにつられて周囲を伺うと、そこには色々な女の人が高まっていた。

 獣人から貴族まで多種多様な人たちだ。


「ふふん。 今に見てなさい。 私のヒーローがすぐに救いに来てくれるんだから」


 ーーカツン。 カツン。

 革靴の響く音が聞こえる。

 その間隔の空いたリズムは主のコンパスの長さに相応していた。


「そんなことあり得ねえだろ。 まぁそれなら面白いけどよ」


 その主は鋭い目線を加えながらこちらを覗いてくる。


「来るよ。 だって、彼は善の呪縛から逃げられないもん。 あの人は一生私の元にいてくれるんだ」


 メルヘンチックな妄言を垂れると、しばしの沈黙が流れた。

 男は少し考えるように頭をかくと口を開く。


「……誰が、来るんだ? アルファか……イプシロンか?」


「ふふん。 聞いて驚きなさい。 アサギよ!!」


 再びの沈黙だった。


「誰だ?」


 男がオークに問う。


「アサギ……というのは、本日の騎士試験に参加していたもので……捕まったのち、イプシロンを倒したものです。 今、ドロウ様が打ち取りにいっているのですが」


「ですが……なんだ?」


「……」


 沈黙の回答ののち、男がオークに向けてナイフを突き刺す。


「さっさと答えろよ。 それとも……は、いやだろ?」


 頭部から血を流しながらオークが答えた。


「す、すみません。 実は、ドロウ様からの定時の連絡が時刻を過ぎてるにもかかわらず来ていなくて」


「なに? どういうことだ。 ありえない。 ドロウが負けるのなら、ここの誰が勝てるんダァ!? えぇ!?」


「はいっ!! 恐れながら、あるじである、サソリ様以外いらっしゃりません」


 サソリと呼ばれたその男は高笑いを始める。


「おい、歯を食いしばれ!!」


「はいっ!!」


 オークに向けてビンタを繰り出し、バチンと甲高い音が響く。


「ありがとうございます!!」


 オークが大きな声でそれに答えた。


「さて、移動するぞ。 パール。 車出せ!!」


「え? 移動ですか?」


 オークがうろたえて答える。


「ぁたりまえだろ。 こんなアジト、町中誰でも知ってる。 ドロウがやられたなら、逃げなきゃならねえ。 ドロウがピンチなら、助けに行かなけりゃならねぇ……だろ?」


「はいっ!! おら、小娘ども。 付いて来やがれ」


 檻が解放されて、チャンスと見る。

 その瞬間に脱出を図る。


「だめだめ。 にっがさないし。 逃げられない……ぜ」


 サソリ、に捕らえられてしまった。


「ふんっだ。 アサギが絶対に助けに来てくれるもん」


「さぁてな。 ここまで何キロあると思ってる? そいつが人である以上絶対追いつけないぜ」


 女性たちは連れられ、大きな車に乗せられる。

 大砲が乗った装甲のついた車。

 それは、浮遊を始め、動き出す。


 ーー絶対に、助けに来てくれるもん。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なぁ、こっちの方向であってるのか?」


 数十キロ進んだが、それらしき建物は見つからなかった。


「うん。 そのはず……それに、姉ちゃんがこっちから呼んでいるかがするんだ」


「なんだそれ、オカルトだな」


 空を飛び続けながら言葉を続けた。


「でも、本当にそんな感じがするんだよ」


「あぁ、信じるさ。 お前がいうのなら、そうなんだろう」


 2人は歩みを止めず、進み続ける。

 ヒュー、といった音が唐突に聞こえてくる。

 前方に大きなブロック体が見えてくる。


 それは、ものすごい速度で通り過ぎていった。

 その窓に、ある人を載せていることが確認される。

 すぐさまUターンをかけた。


「いまの、アサギだ。 本当に助けに来てくれたんだ」


 シンプウが呟くと、


「バカな、こんなところまで、生身でこれるわけがねぇ」


 パールがそう返した。

 だが、シンプウには確信があった。

 その叫び声はそれを確定させるかのように聞こえてくる。


「待てよっ!! ガラクタぁ!!」


 ウルフは、できる限りを尽くす。

 最高の速度で、それに追いつこうと進んでいった。

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