第2章 アンドロイドは英国の夢をみるか 四編 キングダム
第1の試験は筆記試験のようだ。
テストの内容は……どうなんだろう。
別段難しいことのない。
例えるなら高校受験の試験のような難易度だった。
具体的には、数で劣る場合の戦闘でのセオリーとか。
この場合は、数の有利をなくすため、弱い奴から集中して襲うだよな?
結局自分ではそれが正しいと思うことをただ普通に答えていくことしかできなかった。
まぁ、別に間違いを書いているわけではないし、いいだろう。
筆記試験が定刻を迎えると、退室させられる。
退室する人たちはみんな不安そうな顔をしていた。
きっと、簡単すぎて逆に不安になるみたいな……儂と同じ気持ちなんだろうな。
そして、二次試験は体術。
すなわち、徒手格闘による戦闘となるようだ。
さて、儂の相手は誰になるのか、ワクワクしながら番を待っていた。
「次、アサギとセツナ。 こい」
名を呼ばれステージに上がる。
目の前には2メートルをゆうに超え、かなり筋肉を蓄えた男が立ちふさがった。
「お前、さっき遊んでたやっだよな? チビだが、少しはやりそうじゃねえか。 遊んでやるよ」
「はぁ。 なんでまた、でかい奴が来るんだろうか」
魔法を封じた格闘戦では体格こそが物を言う。
別に、儂が格闘技の心得があるわけでもないし、まぁボコボコにされるんだろうな。
ちょっと怖くなってきた。
はじめ、の合図が聞こえる。
始まりのようだ。
上から右拳が降って来る。
バックステップで避けるとそこにはヒビが入る。
「どうした? 逃げるのか? はっは!! 無理もねぇ」
あんなもの当たったらひとたまりもねぇ。
と、どこかから聞こえる。
これ、本当にそうなのか?
正直、なんかパンチがのろくて弱そうなんだが。
横からフックの角度で拳が振るわれる。
右拳、普通利き腕であろうその腕は最大の威力を誇ると考えられる、
が、あえてそれに当たってみる。
頬は怖いので手のひらで受け止める。
手のひらに拳がついた瞬間。
ピタリ、とそれは止まった。
動かない。
痛くもない。
「その程度……のようだな」
「くそ、何をおおおおお!!!!」
男は右拳を引きながら、回し蹴りを放つ。
一般的に上腕部より脚部の筋肉の方が3倍の強さを誇ると聞いたことがある。
まぁ、拳よりも強いだろう。
それを受け止めてみても良いが、これはあまりにも。
あまりにも、隙だらけだった。
先程から、集中すれば、相手の動きがゆっくりに見えるのだ。
軸足を晒し、ゆっくりとこちらに向けて蹴りを出す。
それに対し、最小の動きで間合いを詰め、足をかけて転ばしてやる。
ステン。
地に伏して行くその姿までゆっくりと見えた。
そして足を上げ振り下ろす。
男の頭のすぐ横で爆音が聞こえる。
そこには、穴が空き一面にヒビが入っていた。
「そこまで!!」
審判が止まる。
これは、誰がどうみても儂の勝利だろう。
これなら、第2試験は通るんじゃなかろうか。
続いて、第3試験会場へと案内をされていった。
ステージで横たわる男に一瞥をくれながら。
第3試験は、魔法による的当てだった。
射撃演習場のような会場で次々と受講者がまたに魔法を放ち、それを試験官が記録する。
弱い魔法を外すものもいれば、強めの魔法をかすらせる者までいた。
誰かが魔法を直撃させるだけで、歓声があがる。
魔法のレベルは低いのか?
これなら、アサギはかなり高いレベルだったように見える。
「よう、アサギやないけ。 もう受けんか?」
「いや、まだだ。 リオンは?」
「わいは余裕やったで。 ほら、あそこ空いたから行ってき」
リオンの指をさした方向はたしかに空いていた。
ふう。 心の準備がまだだが、やってやるか。
「お願いします」
一言挨拶を述べると、軽く説明がある。
またの中心を狙って、なるべく威力の高い魔法を放てば良いらしい。
儂の中で最高の魔法を撃つ……わけにもいかないだろうな。
会場ごと壊れる。
なら、最高の魔法を最低の威力で撃ってみるか。
人差し指に魔力を集中させる。
ゆっくりとそれを的に向け、ゆっくりと狙いを定める。
中心、そこを狙うこと自体はガバメントのヘッドショットよりも簡単な仕事だった。
ドピュン。
魔法を放った。
人差し指の先になるべく小さくなるようにそれを放った。
被害は、周りには出ていないようだ。
そして、またの真ん中には穴が開いていた。
成功だ。
よし、魔法のコントロールが。 手加減がうまくできたみたいだ。
「はい、ありがとうございます。 次の方どうぞ」
意外に淡々としているな。
まぁそんなもんか。
儂は意気揚々とリオンの元へと歩いていった。
「お前やってくれるやんけ。 あんなすごい魔法……他の奴らは誰も気づいてひんみたいやが」
「ん? 急になんの話だ?」
「自分でもわかってなかったんかい。 ほら、的の奥の壁見てみ? わいの言いたいことがわかるで」
目を凝らしてよくみてみると、小さな穴が開いていた。
ただ、それのどんな意味があるんだ?
「綺麗な穴だな」
「それをやったのが自分だっちゅうことに気がつかんみたいやな」
うん?
あくまで的に当てるのが試験だろう。
穴など関係ないだろうに。
「まぁいい貫通力だと評価しておこう」
「そうかい。 おどれとやりあいたいなんて、自分が恐ろしくなってきたわ。 次が最後の試験らしいからのう。 よろしゅう頼むで」
「何を頼まれたか。 それは知らんが。 まぁよろしく頼む」
そして、儂たちは最後の試験へと向かっていった。




