第2章 アンドロイドは英国の夢をみるか 四編 キングダム
そして今、私はスラムに隣接する王国に来ている。
なぜ、体を欠損し生命の危機にあるイレブンを放っておいて観光に来ているのか。 気になるところだろう。
説明させていただきましょう。
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あの後、エドの部屋に行き直談判をしたんだが。
「エド、イレブンのことなんだが」
「あぁ、わかっている。 修復の目処はついている。 ただ、時間が問題じゃのう」
「儂も探そう。 全勢力をかければあるいは」
「いや、貴様にはやってもらうことがある」
「なんだ? それは」
ーー王国に行って、あの力……それの使い方を見つけてこい。
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だ、そうだ。
もちろん、そんなことしている場合か。
と、反論したのだが。
あれが使えなきゃ話にもならん。
と言われてしまった。
イレブンを治す方法。
大方予想はつく。 治すことができる人は限られるからだ。
マスター アドミニストレータか。
どこに潜伏しているか知らんが。
捨てた子の治療などするものだろうか。
そこで、力による脅し……か。
あの力がないとダメ。 よほどの強者なのだろう。
あぁ、怖いなぁ。
と、呟いてみるが答えは帰ってこない。
突如、BANGと、背中が叩かれる。
当然、痛みに顔をしかめながら振り返る。
「痛いなぁ。 この服どうしてくれるんだ? あぁー肩も外れてる。 慰謝料払えんのか?」
「はっはっは。 わいは騙されへんぞ。 お前がそんな虚弱なわけないやろ。 それより、王国騎士団の応募見てきた田舎もんやろ? わいもや。 あっちやで」
「別にそういうわけじゃ……て、おい!!」
腕を引っ張られ、引きずられながら男は歩いて行く。
しかもその腕、先ほど肩が外れたと言った方なんだが。
マジだったらどうするつもりだったんだろうか。
PITARIと足が止まる。
もちろん男の。
「どうした?」
「あれ、見てみぃ」
指差す方向を見ると、和風着物を着こなした黒髪に赤を混ぜた女がいかにもと言った男2人に絡まれている。
女は嫌がっているが、男が無理やり絡んで言っているようだ。
「あれを見て何も思わひんか? わいは、あぁいう連中にイライラしてたまらんわ」
「そうか。 だが、あれはあいつらの問題だろう。 先を急ごう」
「けったいなやっちゃなぁ。 まぁええで。 わい1人でやったる」
拳をコキ、コキ、と鳴らしながら男は歩いて行く。
ちょっと待ってくれ。
騒ぎはごめんだ。
儂は、王国へと入国する際、方法として周りを囲む壁、スラムの生物を拒む分厚い壁を破壊する形をとった。
つまり、不法入国だ。
できる限り騒ぎは起こしたくない。
「しょうがねぇやつ。 しょうがねぇんだもんなぁ」
儂は小走りで男に近づきかるくこづく。
男はニヤリとして止まった。
「やっぱりそういう奴やろ。 わいは分かったったで」
いーや、何もわかってない。
目でそう訴えた後、絡む男2人に近寄って行く。
そして2人にぶつかる。
その瞬間、あるものに手を伸ばして。
「悪いなぁ……ってレイじゃん。 まーた口説いてるのかよ。 この前のスンちゃんはどうしたんだ?」
絡む男の天パの方に儂はそういうと、天パはひどく動揺しながら答えた。
「だ、誰だよお前。 なんの話だよ」
それに対しとなりの金髪ノースリーブが怒鳴る。
「おい、お前私のスンに手を出したのか? また? 今回ばかりは許さんぞ」
「いや、アズナ。 し、しらねぇよ。 こんな奴もそんなことも」
「とぼけやがって。 殴ってやる。 全力で。 おい!! 待てっ!!」
なんて、2人で絡み合いながら走り抜けていった。
「なんや。 知り合いやったんか?」
後ろから男が話しかけてくる。
先ほどの大男だ。
「いや、全然知らないが」
「へ? いや、なんか親しそうに名前呼んでたやん。 ちゃうんけ?」
「これだよ。 ほら」
そう言って、隠し持っていた奴らの財布を投げ捨てる。
単純な、なんの工夫もなく掏り取った。
前世で最初の方に覚えた技だ。
「スリを行なったわけやな。 せやけど、なんで名前とかわかったんや?」
「これ、プリクラに名前書いてあるし、もっと知りたきゃライセンスに事細かに書いてあるぞ」
「はぁー神業やな。 嬢ちゃんよかったな」
ここで男が女の子に向かって振る。
突然のことで反応できないだろ。
まったく、震えてるじゃないか。
「行こう。 時間も押してるんじゃないか?」
「いや……まだ余裕はあるで? ほなら飯いこ。 めーし!!」
振り返り、飲食店を探す。
探そうとする。
が、突如として背中に衝撃が襲う。
この感覚、抱きつかれた。
あの女に。
「はしたないのはわかってます。 でも、あなたに惚れました」
初めてのパターンに動揺をして狼狽えてしまうのであった。




