第2章 アンドロイドは英国の夢をみるか 二編 ウェルカム
ガチャンと、甲高い音が鳴る。
地下牢の鉄格子、その錠前を外して、中へと侵入する。
「さて、どうしたいか言ってみるといい」
イレブンは大きな瞳を潤しながらこちらをにらんだ。
怯えている……というよりも悲しんでいる?
「マスターからの伝言です。 私の身体は好きにしていいそうです。 あと、子ができたらマスターの元に連れていくようにと」
うーん。
どこから突っ込むか。
「マスターとはなんだ?」
「私たちの創造主、アドミニストレーターのことです。 これ以上は話せません」
アドミニストレーター?
管理者か。
「好きにしていいとは?」
「ご想像の通りです」
「お前の身体で性癖を満たしてもいいということか?」
「……はい」
「そうか、ならこちょこちょしてもいいか?」
「はい……は? どういう意味でしょうか」
「いや、文字通りくすぐってもいいかということだが」
「そういうのに……興奮するのですか?」
「勿論だ。 血流が良くなって赤らむ顔。 強制的に見せる笑顔。 苦しさから出る喘ぎ声。 そして、涙ぐむ目。 興奮す……あ、痛い」
後ろから突如としてアイアンクローが飛んでくる。
痛い痛い。
誰だよ。
儂は振り返ると、そこには怖い顔をしたサテンがいた。
「何を言っているのかな? ねぇ?」
「ごめんなさい」
「もう。 謝らなくてもいいよ」
「え? 良いんですか?」
「あやまってもゆるさないからね」
「oh、」
再びアイアンクローを喰らう。
血が出た。
すぐ治るけど。
「えっと、何をしに来たんですか?」
そりゃ目の前でこんなことされればそうなるだろうな。
「ん、これをやる」
鍵の束を投げる。
イレブンはそれを受け取りながらも疑惑の目でこちらをみる。
「どういうことですか?」
「釈放だ。 晴れて自由の身だな。 よかったな」
「ウルフ、本当にいいの?」
サテンが聞いてくる。
「この子の身柄は儂に託された。 つまり、こうしてもいいだろう?」
「恩義には感じませんよ?」
「いらん。 だが、監視下にはおくがな」
しばらく、イレブンについては行動を共にさせてもらう。
情報はいただけるだけいただこう。
そして、敵でないのならちょうど部下が欲しかったところだしな。
「そこでニートするか、儂についてくるかは自分で決めろ」
しばらくイレブンは考えるようにした。
そして、口を開く。
「どのみち帰る場所はありません。 よろしくお願いします」
鍵を外し、頭を下げる。
これなら、とりあえずは泳がしておくか。
イレブンの裏にいる者は敵か、味方か、見極めていこうか。




