勇者じゃない、忍者だパート6『狂戦士』
リクエストが有ったので『狂戦士』について考えたら出来ました。
災厄を招いた国、そう後の世に語られるザイサートと言う国の一室で一人の少女が召喚される。
「ほうほう、これはかわいらしいお嬢さんが現れた物じゃ、儂は宮廷魔術師のジャックバルトと言う、お嬢さんの名前を教えてくれるかの?」
「京華、川村京華です」(気持ちワリいなカマトトしてんじゃねーよ)(うっさい)
「キョウカが名前かの?召喚された者は『ステータス』と唱えると自分の能力が分かるのじゃがやってみてはくれんか?」
(こっそり『偽装』)(セコイ)
「はい、『ステータス』」
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名前:キョウカ カワムラ
年齢:16(75)
クラス:戦士:3 (凶戦士:10 )
STR:275(825)(2750)
VIT:213(639)(2130)
AGI:230(690)(2300)
DEX:258(1032)(129)
MIN:40 (400)(4000)
MGI:29 (120)(4)
スキル 剣術:2(10) 斧術:3(10) 盾術:3 (偽装:8 演技:7 鈍器術:10)
ギフト (凶化 スイッチ 不老) 超回復 限界突破
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※ステータスは偽装値(素の数値)(凶化時の数値)括弧内は相手に見えなくしてあります。
「MINとMGI以外は素晴らしいステータスじゃの」
「ありがとうございます」
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国王との謁見を終えて宛がわれた部屋で休むことを許された京華はベッドにもぐりこむ。
「つかれたぁ・・・精神的に」
(嘘つけ、ブリっこして爺ども騙してたくせによ)
(酷いなぁあなただって暴れたくてうずうずしてたでしょ?抑えるの大変だったんだから)
(75にもなってだから~じゃねーよ気持ち悪い)
(体は一緒なんだからあなたも75よ)
(早く訓練始まらないかなぁ)
(訓練では出さないよ、壊滅させちゃうでしょ)
(壊滅、皆殺し、いいじゃねーか、やろうぜ、な?)
(我慢できなくなったらやっちゃうけどこの前みたいに可哀想な所もあるんだからもう少し調べてからね)
(へーへーわかったちょっと間は出てこねぇよ)
(忘れてた、『偽装解除』
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10日後、特注の鎧と剣与えられた京華はご機嫌で訓練に励んでいた。
(あ~めんどくせぇ、ぜんぶぬっこぬこにしちまえばいいじゃないか)
(情報が集まらないのよねぇ、意図的に隠されてるかも・・・)
(あやしいだろう?やっちまおうぜ)
(何回それで失敗したと思ってるの?)
(あ~それはそうなんだが)
(騙されて前線連れていかれたら両方サクッと殺っちゃえばいいでしょう?)
(それもそうか、くあ~早く暴れてぇ)
(野蛮だなぁ、まぁ魔族だろうが人間だろうが徹底的にやっちゃう私達と居られるのは全部防いじゃう『無敵の盾』全部躱しちゃう『忍者』それからあなたが唯一言う事を聞く佐賀根ちゃんくらい?)
(あ?てめぇなに佐賀根様に気安くちゃん付けしてんだコラ)
(ハイハイ、ゴメンゴメン元の生活にも戻れないし異世界回るのも楽しいしねぇ)
(いっぱい暴れられるしな)
(うんうん)
傍から見れば一生懸命稽古に励んでいるように見える彼女がこんな会話をしていると誰も知らない。
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「それで騎士団長、例の娘はどうなっている?」
「仕上がりはなかなかのものです、私位しか相手にならず四苦八苦しておりますよ」
「陛下、何度も申し上げますが異世界よりの召喚は国難の時に使うよう神より与えられた術です、防衛のためと言われ召喚術を使用しましたが、他国を攻めるために使うのは反対いたします、それに年端も行かぬ子を戦場に立たせると言うのですか」
「くどいぞジャックバルト、力は使ってこそだ、召喚の費用は安くはないが兵士の犠牲も減れば元は取れるではないか、もういい下がれ」
城の執務室から出るとジャックバルトは渋い顔をしながら京華の元へ向かった。
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「と、言うわけなんじゃ嬢ちゃんを召喚した儂が言うのもなんじゃがこの国から逃げんか?今の内なら何とかしてやれると思うんじゃが」
内心狂喜乱舞しているもう一人は放っておいて京華は静かに断った。
「私の事はいいんです、ジャックバルトさん一つだけ約束してください、絶対に私と同じ戦場には来ないでくださいね、絶対ですよ」
「儂は・・・わしわぁ・・・うむ、嬢ちゃんの言う通り儂は今日から病に臥せるとしよう、助けられん儂を許して欲しい・・・」
老人が出ていった後、ベッドの上で喜んで居る京華の顔を見た者は居ないであろう・・・
・・・・・・・・・
さらに数日が過ぎいよいよ戦場に向かう日が来た、当然京華には何も知らされず、馬車に乗せられていく、京華の表情は硬いが緊張しているわけではない、喜びを噛み殺している表情なのは誰も気づけなかった。
戦場に着くと一泊し、翌朝京華は一番前に出され将軍が声高らかに宣言する。
「よし、勇者殿を先頭に出しリディル奴らに目に物を見せてやれ!」
「突撃!」
京華は甲冑を身に付けながら騎馬兵の先頭を走る、フルフェイスの兜をしているため表情は見えない・・・
両軍がぶつかり、戦端が開かれる。その中で京華はこう呟く・・・
それじゃ・・・好 き に 殺 っ て い い よ 『凶 華』
その瞬間、両軍の兵が宙を舞う、正確には兵であった物・・・だ。
一振りで数十人の兵が飛び少女の武器も砕け散る、兵や馬を振り回し、手当たり次第に吹き飛ばす、異変を感じた両軍が軍を投入するが殺戮の嵐は止まらず矢や魔法を撃ち込もうが嵐が止まる様子もなく撤退を開始したザイサート軍に嵐は着いて行き軍が四散するまで止まらなかった・・・
その様子を見たリディル軍は追撃しようとするがこれが更なる殺戮をもたらした。
日が暮れるころ戦場に残っているのは凶華のみであった、散々切られ、殴られ、矢や魔法を受けた鎧は見るも無残な鉄塊と化していた、拉げた兜を脱いですっきりとした顔の京華は両軍の物資で残っていた水で身を清め始めるその肌は傷一つなく衣類を探し服を着て残っている食料を調理し始める。
「やっぱ運動するとおなかすくよね~」(ね~?)
残っているテントで休んでいるとジャックバルトがやってきた。
「よかった、軍が壊滅したと聞いて様子を見に来たんじゃがよかった、本当に良かった・・・」
「うんうん、怪我一つしてないよ~」(ケッカマトトが)
「これから・・・どうするんじゃ?」
「それならいい考えがあるの、戦争しそうな国とか知ってるでしょ?そこへ行きましょう」(ナイスアイデア!)
「何故そんなところへ?」
「一つは戦争を止めるため、そして戦争のたびにものすごい被害をだせば戦争しなくなるでしょ?」(・・・)
「しかしそんな危険なことは・・・」
「いいから案内しろジジイ」ガン!「いまの私じゃないからね」
「アッ、ハイ」
その後、各地の戦場で壊滅の報告が増え、神が戦争を諫めていると神殿から各国へ停戦の使者が出るようになった。
そのおかげで大陸から戦争は無くなり、不機嫌な顔をする京華をジャックバルトが抑える日が続いたが、ある日突然京華は消えてしまった。
「本当に神様が平和のために使わしてくれたのかもしれんなぁ・・・」
元宮廷魔術師の独り言が、平和を愛し戦争を止めた聖女として美化され、都合の悪い部分を切り取り脚色された『聖女キョウカ』として吟遊詩人に歌われ、書籍化され、劇となり一大ブームを巻き起こし、キョウカ教ができるまでとなった。
「ここまでなるとは思わなかった・・・」今度の元宮廷魔術師の独り言は誰にも届くことはなかった・・・
次に呼ばれた一夜にして消えたと言う国での一コマ
「おい小娘、お前は今日から陛下の為に働くこととなる、光栄に思うがいい」
「凶華・・・殺っちゃう?・・・殺っていいよね?」
「 」