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年上の彼女  作者:
1/26

1 俺は子供じゃない!

 好きな人がいた。

 相手は4月1日生まれの大学1年生。自分は4月2日生まれの高校3年生。

 たった1日違いの年上の幼なじみだった。


          ▽


 通勤・通学ラッシュの時間、成瀬弘樹(ひろき)はいつものように駅のホームで待っていた。電車ではなく、人間を。

 高校へ行く時間にはまだ早い。だけど、どうしても会いたくていつも早く来てしまう。

(ゆい)!」

 階段を下りてきた私服姿の小柄の女に呼びかける。彼女は少しはにかんだ笑みで小走りでやって来た。

「おはよー、ヒロ君。いつも早いね」

 大学生になっても特に化粧のしていない菅沼(すがぬま)唯は、弘樹から見たら他の女子よりずっとかわいかった、なんて口が裂けても言えない。そのことに気づいたのはずっと幼なじみをやっていながらも、高校生になってからだった。

「もう受験生だね・・・懐かしいなぁ・・・私も去年経験したよ」

「唯、生物得意だろ?今度一緒に勉強しよーよ」

「教えるのなんて無理だって。そういうのは先生に聞くのが1番だよ」

 さりげない弘樹のアプローチを唯は軽く受け流す。たぶん、弘樹の気持ちに気づいていながらも、知らないフリをしているのだ。理由は・・・

「でも、1年先輩として応援してるからね!」

 年上だったから。



 そもそも唯を好きだと気づいたのは、さっきも言ったように高校生になってからだ。

 それまでは幼なじみだったからと言ってまったく意識したことはなかったし、中学のときは同級生につきあっている人がいた。だから、今唯を好きなことが意外なくらいだ。

 意識し始めたきっかけはたぶんコイツ。

「おーっす、弘樹!今日もはえーな!」

 弘樹の担任であり、唯の兄貴である菅沼(すがぬま)克也(かつや)だった。



「弘樹、ちょっと待てよ!」

 背後でけらけらと笑っている克也を無視して弘樹は校舎に向かって歩いていく。

 現在26歳。一見すると、イケメンと呼ばれるほど顔立ちが整っているのだが、性格がとにかく破綻(はたん)していると思う。

「なんか不機嫌じゃね?もしかして、また唯にそれとなくアプローチしてみたけどスルーされたとか?」

「そんなんじゃねーよ!」

 まるで図星だったので、弘樹は焦って声を上げる。

「克也こそこんな所でのんびりしてていいのかよ。今日職員会議じゃないのかよ」

「やっべ!先行くわ」

 ジャージ姿の男はズボンのポケットに手を突っ込んだまま走り去っていく。

 ちょうど周囲にいた女子生徒が克也を見つけてきゃーきゃー黄色い歓声浴びながら。



 そんなやや茶髪の男を見送った後、ふと近くに停まっている車の陰に突っ立っている人影が見えた。

「はぁぁ・・・今日もかっこいいなぁ・・・・・」

 見覚えのある背格好。確か、今年の春から新しく入ってきた、弘樹のクラスの副担任の玉木有子とかいう人だ。

「玉木先生?」

 思わず口にすると、彼女は今弘樹に気づいたのか体全体をびくっとさせて驚いた。

「ななななな成瀬君!!!!?ななななんでここにぃ・・・!?」

「先生こそ何してるんですか。っていうか、かっこいいって・・・・・えっあいつが・・?」

 今さっきまでそこにいたはずの男を思い浮かべる。それは図星のようで、玉木の頬がみるみる真っ赤になっていった。

 あんな性格破綻者やめといたほうがいいよと言いそうになったが、なんとかこらえた。

「おおお願いだから・・・誰にも言わないで下さい!このことは内緒で・・・・私なんか年上だし、相手にされないことくらいわかってますから」

「っていうか、先生職員会議じゃないんですか?」

「職員会議・・・?え・・あ・・・あああぁぁぁ!!!」

 先生年上なんだ・・・弘樹が思ったことはそういうことだった。女の人は年上だということをそんなに気にするのだろうか。


          ▽


「あ」

「あっ・・・」

 同じ電車に乗っていたらしく、弘樹は唯と偶然たまたま駅のホームで会った。

「唯・・1人?」

「うん・・・まぁ」

「途中まで一緒に帰ろうぜ」

「あぁ・・ごめん。私これから寄る所があるんだ。受験生のヒロ君つきあわすわけにはいかなから1人で行くよ」

 まただ。またスルーされた。いや、これはもう拒絶されたのかもしれない。

 昔も内気な性格だったが、今よりずっと同じ立場として見てくれた。だけど、今は年上の立場でしか見てくれなくなってしまった。弘樹の気持ちに気づいて、それには答えられないと遠まわしに言っているのかもしれない。



「なぁ・・・俺のこと避けてるだろ」

 駐輪場で唯に話しかける。彼女は少し戸惑った顔をしたが、すぐにぶんぶんと首を振った。

「避けてないよ。なんでそんなふうに思うの?」

「べっつにー・・・なんとなく・・・」

 そんなふうに言うのは子供なんだろうと言いながら思った。年上というよりも自分は子供だから避けられているんじゃないだろうか。

「そのセリフ、昔も聞いたことある。かわいいなー」

 案の定。思っていたことが確信になる。

 かわいいなんて言われたいわけじゃない。1人の男として見られたいんだ。唯にだけは。

「唯!」

 人影のない駐輪場に弘樹の声が響いた。すぐ近くにいた唯が驚いて弘樹を見た。

「なに?大きな声出して」

「もう俺は子供じゃない!」

 唯の腕を掴み、自分のほうへと引き寄せる。華奢な彼女の体を強く抱きしめた。

「・・・・・!」

 だけど、唯はそんな弘樹のみぞおちに容赦なくパンチをくらわせ、弘樹がひるんだ隙に自転車で走り去ってしまった。


「ばかぁ!!」

 最後に唯が叫んだ言葉が駐輪場に響いた。

まだ盛り上がってきてませんが、これから

おもしろくなっていく予定です。


気長にお付き合いしてくださったら嬉しいです。

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