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カラフルパレット  作者: 一重 奏
第一章「はじめての色」
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第十二話「土(にんぎょう)」

「ねぇユウ!ユウってば!あの可愛いの何!?ぎゅーって、ぎゅーって!抱きしめたいっ!!」

「えーっと…今のがドワーフだよ。彼らは基本的に憶病だし、滅多に外に出る事はないんだけれど…タイミングが悪かったみたいだね。恐らくドラドリアの門兵じゃないかな。」


ユウたちを見た瞬間逃げていたが門兵としてそれでいいのだろうか。


「よっしそれじゃ今行こうすぐ行こう!もうドワーフちゃんがあんなに可愛いなら早く言ってくれればよかったのに!」


虹色がユウの手を引いて岩の中へ入ろうとする。何やら満面の笑顔でドワーフに会うのが待ちきれないといった感じだ。

当初のこっそり作戦が盛大に破綻していることなど気にしていない様子で、どんどん進んでいく。


穴へ潜ると、中は地下へ続く小幅な階段となっていた。見える範囲ではドワーフがいる気配は無く、二人はどんどん下へ降りていく。

不思議と地下へ続く階段は明るく、ドワーフの体長に合わせているためか、段差は非常に低い。

降りていくにつれて階段の幅がどんどん広くなっていく。


さっきのドワーフはこの階段を上ってきたのだろうか。先が見えず、上るのは相当な労力を要しそうだ。

どこまでも続くように思えた階段だが、数十メートルほど降りると学校の教室ほどの広さの踊り場に着いた。


─瞬間


「きゃっ!何!?」


ザザザッ!


周りの空気が揺れる気配と床を擦る音。

気が付いた頃には10人ほどの人型の兵士に囲まれていた。


「え!?ヒューマン!?」

「落ち着いて虹色、よく見てみるとヒューマンじゃないよ。恐らく土で作った人形だね」

「人形?…でも、さっき動いていたような…」


言い終わるが早いか、兵士達がザッ!と一歩近づいてきた。


「いやいや!!動いてる動いてるよ!人形じゃないよ動いてるって!!」


二人を囲む兵士は微動だにしない。片手には槍を持ち、明らかな敵意を感じる。

しかしふと、その一体の足元から声が響く


「あの…私たちの国に…その…ヒューマンが…な…なんの…よう、ですか…?」


声の出所に目をやると、兵士の影に隠れたドワーフが一体。

どうも入口で会ったドワーフのようだ。


「あ!あなたはさっきのドワーフちゃん!」


「ひんっ!近づか…ないでっ!」


ドワーフが小さな手をさっと振ると、囲む兵士達が一斉に二人へ向けて槍を構える。


「私たちの国から…でていってください!。ここは…ヒューマンたちが…来るところでは、ないですっ!」


兵士達は槍を構えたまま動かない。

どうやら明らかに歓迎…どころか敵対心を持たれていることが分かる。

虹色はそんなドワーフの様子に肩を震わせ顔を落とした。


そう、こんなにかわいいドワーフちゃんと仲が悪いとは何事か!…と。


「あ、あの!話を聞いてください!私たちはその、争いにきたわけじゃなくて、その…」


次の言葉を探していると、ユウが一歩前にでる。


「突然の来訪、驚かせてしまったね。…まずは自己紹介をさせてもらえるかな。僕はユウ・ロード。こちらは彩飾虹色さん。」

「えっ!?ロードって…もしかして…!」

「今日は…カプリス女王と"交渉"を行いたいのだけれど、お目通りさせてもらえないかな」

「そんな…いきなり来て、も…。それにっ…あなたがヒューマンの、お、王だなんて…信じ…られないです!」


ドワーフは驚きと警戒、そして若干の畏怖を持った声で答える。


「名前を…騙るのは誰でも、できますっ!何が…目的ですかっ!」


へぇ…名だけで王って分かるってことは、他種族にとっても有名な名前のかな。何となくこの世界ではヒューマンなんて、あまり他種族に興味を持たれていないように思っていたけれど…。

しかしそれにしても


私は王です。

遠くからきました。

だからあなたの王と会わせてください。


うーん…確かに無理そう。どうするつもりだろう。


だが、ユウは答えを予め用意していたかのように


─これをみて欲しい


一本の筆を取り出す。虹色持つものと同じ…ロードだった。

先日ユウが見せてくれた、お守りのようなものと呼んだ模造品とは違う。恐らく…いや確実に本物だと、そう思わせる何かを虹色は感じた。

本物は王宮に保管している、と言っていた。ということはつまり…


「あ、あのユウ。間違ってたらごめんね?それってもしかして…」

「これ?虹色が持つのと同じロードだね。昨晩のうちに宝物庫からこっそり持ってきたんだよ」


えーっと…

聞かなかったことにした。


ドワーフのほうを見ると、小さな目を目いっぱいに見開いてユウが持つロードを見ていた。


「それは…まさか…本物、ですか…?」


ユウが手に持つロードは、虹色にはただのありふれた筆にしか見えない。

しかしドワーフの反応を見るに、この世界では相当に貴重なものであるようだ。


…それをこうやって持ってくるのはいかがなものか。しかもポケットから取り出していたような。


「でも…そんなもの、を出して…何が目的、ですか…?」

「"交渉"次第では、これをドワーフに渡そうと思う」

「!!!」


明らかな動揺。しかし、それは虹色も同様だった。


…渡す?え、いいの?いやだって、国宝でしょ…いいの!?

でもこのロードをドワーフが持った所で何の意味があるんだろうか。そもそもカラーがないと…。いや、ドワーフは"茶色"を支配しているんだった。

カラーの行使にはロードが必要、だからドワーフもロードを求めている…?


そこまで思い立って、ふと二人を変わらず囲んでいた兵士達を見る。


あ!そうだ、もしかしてこの兵士達は…"茶色"のカラーで作ったのかな?

ユウが人形て言っていたし。…確かによくみると全身が茶色だ。土を操って作ったのかな。

あれ、それだとドワーフはロードを持っているのかな?ならなんでユウが持つロードにここまで驚いているのだろう…。


「…わかりました。ただし…ご案内できるのは…側近の方達まで、です。あの、女王に…その…いきなりは…会わせるわけには、……いきません」

「うん、よろしくね。ありがとう」


ふっと、私達を囲んでいた人形たちが崩れた。

その場には、土の塊が10個残った。

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