夕空
「きれい…。」
遠藤 まあさは、そう呟いた。
何がきれいなのかというと、窓ガラス越しに見える夕日。
水色の空に、真っ赤な夕日が沈んでいく。
「あっ、行かなくちゃ!!」
今日は、大切な日だった。
私の大好きな人と放課後お話する予定だったのに、うっかり夕日に見とれてしまった。
…ガラガラ
「ごめんね、遅れちゃって…。」
『大丈夫だよ。まあさ、急いで来たでしょ?』
「えっ、どうして分かったの?」
『だって、顔が赤いもん。』
走ってきたのバレてたなんて…。
うぅ…恥ずかしいよぉ。
「…。」
『気にしなくて、大丈夫だよ。これ、あげる。』
さっきから話している人は、私の幼なじみでもあり、恋人である橘 星夜。
「あっ、ありがとう。これ、私の好きなイチゴオレじゃん。」
『うん。ここ来る前に、学食で買ってきた。』
「ありがとう。」
私は、星夜のこういうさり気ない優しさが好き。
『あっ、そういえばさっき何してたの?』
「うん。ここに来る前に、夕日が見えてたの。見てたら、遅れちゃった…。」
『そっか。よし、今から2人で見に行こうよ。』
「うん、分かった。」
そして、2人で私がさっき見た夕日の場所に行った。
「あっ、ここだよ。すごくきれいだったよ。」
『すっごく、きれい…。』
星夜は、夕日を見て感動してるみたい。
私は、星夜の横顔を見て格好良いな…と思っていた。
『ん?俺の顔、何かついてる?』
見てるのがバレちゃった。
「ううん、何もついてないよ。ただ、星夜に見とれてただけ…。」
いつもなら言えないセリフを、言ってしまった。
どうしてだろう…?なんて考えていたら、フワッとフローラルな香りがした。
気が付くと、私は星夜に抱きしめられていたのだった。
「…えっ、星夜…!?」
『ごめん…。まあさ、可愛すぎだよ。』
そう言って、もっと私を抱きしめた。
「ううん、大丈夫だよ。だけど、ここ学校だから…。」
『あっ、そうだったな…。ごめん。』
星夜は、私を離すとこう言った。
『俺、まあさの気持ち聞けて嬉しかった。』
「星夜…。いつも、ちゃんと言えていなかったけど…大好きだよ。」
『うん。俺も、まあさが大好き。』
2人で顔を見合わせて、笑い合った。
夕日のお陰で私は、気持ちを伝えられた。
“ありがとう”と心の中で夕日に呟いた。