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とある将棋部員男子大学生の日常  作者: 飛車角ノ介
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野望

「負けました」

先輩が頭を下げた。さっきの龍切りからの寄せが上手く行って勝った。感想戦を終え、チョコレートをつまむ。俺の名前は行方一歩(なめかたかずほ)。今年、X大学の工学部に入学して、高校からの趣味である将棋部に入った一年生だ。棋力はどのくらいかは分からない。行きつけの道場では二段だっけ?まぁ、そんな段位なんてどうでも良い。言ってしまえば強ければいい。将棋は勝負世界なのだから。そんなこと思いながらチョコレートを食べ終えた。しっかし、入部して一月経つが、部員の面々が全然変わらない。もしかしてこれだけの人数しかいないのか? ざっと見たところ10人前後、団体戦は14人まで登録可能なのだがギリギリの人数だろう。いや、違う。俺が言いたいのは人数の話ではない。この将棋部、なんと女子部員が0人なのだ。よくオタサーの姫と言われるように一人だけ女子部員がいるサークルはよく目にするが、0人の、しかも部活は将棋部(うち)だけだろう。

「先輩、将棋部(うち)に女子部員っていないんですか?」

とさっきまで対局していた先輩に質問をぶつけた。この先輩、柴田先輩は俺の一個上の二年生。眼鏡の掛けひょろりとしていて色白だ。大学から将棋を始めたということであまり強くは無いが、筋が良く、受けが強い。俺が入学して最初に対局したのが先輩で俺が二歩をして負けた。

「いないんじゃない?僕がまだ二年生だから知らないだけかもしれないけど。」

いや、違う。ここに女子部員はいない。確信に近いものが俺の中にはあった。将棋部なんかに女子が入るわけ無い。こんなオタクっぽい男子しか在籍してないし、なんかこうウェーイ系でもないし、そもそも将棋というゲームが難しすぎる。そしてなにより将棋という競技柄、勝負事というのも原因の一つだろう。これは俺の偏見だが、将棋は小学生の時くらいに父親なり祖父なり教わるものだと俺は思っている。そういう子が将棋にはまって中学、高校、大学の将棋部に入部するのが、もはや定跡になっていると言っても過言ではない。自ら進んで将棋を指そうなどとはならない。誰か教える人が必要なのだ。もし、女子部員が入って来たなら、俺はその「教える人」になって、将棋を優しく教えて、仲良くなって、ゆくゆくは・・・・・・ と考えたりもする。いや、大学に入学してからこのことしか考えていない。言っても俺は華の大学生、彼女が欲しい年頃だ。しかし、ブサメンで運動神経ゼロで低身長な俺には無理な話だが、一つだけ誇れるものがある。それが将棋だ。大会に出場したことは無いが、この将棋部内では一年ながら先輩相手に勝率6~7割あるのは俺だけだろう。一年部員は俺を含めて3人いるがその中で俺が一番強い。と思っている。そして、この将棋を何かに生かすことは出来ないかと考えた時、これを利用して彼女を作ることは出来ないか、そう思ったのだ。しかし現実は厳しい、例えば女子と仲良くなって

「将棋してみない?」

などと誘うのを想像したら恐ろしい。苦笑しながら

「え、遠慮しとくね」

とか言われるのが目に見えているからだ。だから、せめて将棋しようと思っている女子になら通用するのではないかと考えた結果が、女子部員に教えるいうことになった。俺はまだ一年生だが将棋を教えることは誰にも負けないと思っている。そう彼女を作るために誰にも負けてはいけない。そして今に至るが、女子部員が0人だと、それ以前の問題だ。

「どうすれば、女子部員入ってくれるんでしょうね?」

俺はまた柴田先輩に質問をぶつけた。

「入学式の時に勧誘とか、新歓とかかな」

ありきたりの返答でがっかりした。そんなものでは女子部員は入ってこない。絶対に。そんな他の部活サークルがしているようなことをしていてはダメだ。将棋で喩えるなら、そう奇襲戦法、そんな誰にも思いつかないようなことをしなければ女子部員は入らない。しかし、どんなことをやればいいのだろうか?

公開対局?多面指し? ダメだ。これでは普通の将棋じゃないか。どうすれば・・・・・・ そうやって考え込んでいるうちに次の対戦カードが決まった。今はまだ分からない。でも絶対に将棋部に女子部員を入れてやる。そう意気込んで対局に臨んだ。

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