001:神様との初会隅
――気が付けば光の中にいた。
いや、いや、そんなカッコいい感じじゃなく!ここはいったいどこなんだよ!?
と、一人でノリツッコミをしてみる。あえて何か言うなら、もの凄く虚しい。
俺は26歳、ニート、ネトゲ廃人!親の生命保険をネトゲにつぎ込むキングオブクズアンドクズダ!
特技はネトゲ(笑)、そんな俺は突然白い光に包まれて、気が付いたら全面真っ白な部屋にいたんダ!
はあ…。
まあ、そんな俺がなぜこんなところにいるのか…
俺はニートだがネトゲ内ではなんと1位!「エインズ」の名前を知らない奴はほぼいないような男だぞ!
くそっ… なぜこんなところに連れてこられなければならなんだ!
――白い部屋に連れてこられたこの男は、混乱から、冷静さを欠き、ブツブツと独り言を言い続けていた。
それは、自分に言い聞かせるように、まるで子供がするおまじないの様に、只々、自分の功績を言い続けるのだ。
もっとも、彼に大した功績はなかったが。
俺はこれからネトゲでギルド対ギルドのGvGの助っ人に行かなければならないのに…
もうこの部屋でいいから…、パソコンさえおいてくれればこの部屋でいいから…
ネトゲ廃人には少しのパソコン絶ちも拷問なんですよ…、定時メンテの時でさえ厳しいのに…
そんなことを考えながら、俺が床に座り込んだ時、いつの間にか少し先の所に、人影があった。
先ほどは、辺り一面、180度見渡しても人どころか、チリ一つ見えなかったというのに。
人が居たという安心と同時に、コミュ障の自分が表に出てくる。
話しかけたいが、”人と話す”のは怖い、その気持ちが溢れて上がりかけた腰をまた下ろす。
もういい、あの人が救助の人か何かであっても構わない、俺は潔くここで死ぬのだ。そんな投げやりな気持ちで。
しかし、色々考えたことで、男は逆に冷静さを取り戻していた。
ここはいったい何処なのか、今はいつなのか、この光は何なのか、なぜここに居るのか、
とりあえずわかったことと言えば、ここが、よくわからない場所だということ、そして白いということ、それくらいだった。
少なくとも俺は元からここに居たわけではないから、何らかの手段によってここに連れてこられたと考えるのが妥当だろう。
では何故?答えは出ない。
チラリと下に向けていさ視線を上に上げると、先ほどに見た人影が、こちらに近寄って来ていた。
どうしよう、こっちに来ても俺は何も話せないぞ。
そういう思いから、俺の尻は、座り込んだ姿勢のまま、ジリジリと後ろに向かっていた。
しかし、向こうの足の方が速かったようで、いつの間にか俺とその人影との間は約10mにまで迫っていた。
この距離になるとわかったが、相手はどうやら男で、それなりにガタイのいい男だということが分かった。
少なくとも身長は俺よりも高く、筋肉隆々とまではいかないが、まあそこそこ鍛えられた、例えるならアスリートとはいかないが、中高の運動部くらいの筋肉はあるだろうという、それくらいの体だ。
なぜそこまで正確にわかるかというと、その男、半裸だったからだ。
下にはなんだか年季の入った濃い色のジーパンを穿いているが、上には何も着ていない。
さらに靴も履いていない。いや、まあそれは俺も同じだが…。
じっと見つめていたのがばれていたのか、寄ってきた男は俺から2mほどの地点で立ち止まり、俺と目が合ったのを確認するかのように口を開いた。
「やっほ」
寄ってきたその男はまるで友人にでも話しかけるかのように、気安い様子で話しかけてきた。
こいつはコミュ力の高い人間だ…、俺は即座に理解した、そして同時に少し警戒した。
俺はあまり、いや全くと言っていいほど人と交流していない。親が死んでからはもう現実では人と目を合わせたこともないかもしれない。
それに、コミュ力の高い人間といい思い出はない。まあ深くは語らないが、まあ、察してくれ。
じっと睨みつける俺をいなすかのように、男は自己紹介を始めた。
「私は神です」
はい???????????why???????????what??????????
コイツ俺を舐めているのか?
さらに睨み続ける俺に、男は困ったように言った。
「信じてもらわなくても構わない事には構わないけど…」
ふう、と、ため息をついて男は喋る。
「エインズ、ネトゲ、一位」
え?
は?
「ニート、26歳、両親共に鬼籍」
「ちょっとまて」
なぜ知っている
「最近2週間は風呂に入っておらず、二か月服は洗っていない、え、うそだろ」
なぜそこまで知っている。コイツはいったい何者だ
あと自分で言って引くんじゃない。心外だ。
「お前…」
「言っただろう、私は神だと」
半裸の男は胸を張り、言った。
「じゃあ、ここは…」
「ここは君の住む場所じゃない場所、って、そんなふうに言われても困るだろうから、少し説明するね。」
俺は正直半信半疑だったが、それでも、この状況の説明は聞きたかった。たとえ嘘であっても、だ。
「ここは、通常神の暮らす世界だ。ついでに言えばその末端、世界の端だ。」
それはなんとなく理解できたし、信ぴょう性もあった。
この部屋(?)は全面、白いが、角というものが見当たらない。
丸い部屋と形容しても偽りはないだろう。
「君は理解が早いようで助かるよ。
今は、君が自分の部屋にいた時より、1日ほど経過したくらいかな
まあもっとも、神の世界に時間の概念はないし、時間そのものもないに等しいから、経過してないといっても過言ではないよ」
む、逆浦島太郎ということか。
「ご明察、いや、まさにその通りだよ。
そしてこの光はエーテル、まあ少し違うんだけど君にはそこまで関係してこないと思うから、大丈夫。
これは天界を構成する元素で、光よりも水に近い。エーテルの小さな粒で構成された物質だ。」
ところで君はボクの思考を読んでいますね?
「ばれていたか。」
ここで俺は、ようやくこの男、いや、神が神である事を信じた。
「ありがとう、説明を続けるが、角がないのもそのためだ。
エーテルは地上でいう物理学の世界なんかとは無縁でね、勝手に形を変えたりする。
それに真っ白だから、部屋に角は見えない。
君にとっては無理やりかもしれないが、天界ではこれが常識なんだ。すまない、理解してくれとは言わないから、頭の隅にとどめておいてくれ。」
ううん、わかりたくもないがまあそういうことで。
「はは、そして最後に君がなぜここに居るのかの話をしよう。
単刀直入に言う。君を大好きなネトゲの世界に連れて行ってあげよう。」
え
「君にとっても魅力的な提案だと思うよ。うん。
僕にとっては面白いし。」
意味が分からない。嬉しいけど、意味が分からない。
そもそもコイツへのメリットがわからない。
「だから面白いって言ったじゃないか。いったよね。
天界人は、ほぼ、いやすべからく聖人だ。
聖人は欲を持たないし持ってはいけない。まあそうだよね。
で、当然人間でいう三大欲求も持ち合わせていないわけだ。」
ああ、それは理解できる。なんとなく。
「うん、それで、天界人にも一応仕事はあるんだけど、まあ暇でさ。
天界人は寿命も長いし、ずーっとやることないと暇で死にそう。まあ、神は寿命以外で死なないけど。」
なるほど、そういうわけか。
「俺はお前の暇つぶしをする。
お前はネトゲに連れて行ってくれる。そういうことだな?」
「ああ、そういうことだ。
もちろん、キミはエインズとしてな。」
そうすれば俺に断る理由はない。
「わかった。俺をあの世界に連れて行ってくれ。」
俺の言葉と同時に、俺の体は光に包まれた。
「good luck. 幸運を祈るよ。」
神は誰もいなくなった空間に、ポツリとその一言を吐いた。
ちなみにこの男(主人公)、ネトゲやりすぎて旬な話とか、2chネタとか
アニメの話とか分からない人です。
常識もわからない人です。