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000:ネトゲ廃人

 ――ネトゲの世界に入りたいと思ったこと、ありますか?



 肌にジワリとまとわりつくような湿気とパソコン画面の光のみが輝く室内。

狭く、衣服や書籍にいつの物か分からない紙屑までが散乱した室内、非常に臭ったが、どうにも主は気にしていない様だった。

自らの油で汚く黒光りする薄い頭髪は、彼の不潔さを物語っていた。

彼の着ているTシャツなど襟元がもう元の色をとどめないほどに黒かった。


カチ…カチカチカチカチ。

カタカタカタパチンカタカタ…タン。


 キーボードをはじく音とともにパソコンから青年の必殺技のを叫ぶ声と斬撃の音、そしてボスと思われる少女の叫び声。

それが終わったころに勝利を告げるファンファーレとともに、少女の捨て台詞。


 そう、彼が熱心に励んでいたものはネットゲーム、なかでもMMORPGと呼ばれるものだ。

死んだ親の生命保険までつぎ込み、彼が必死に育てたキャラクターはMMO内不動の一位を誇っている。

二位以下のキャラクターとはレベルも桁が違う。

今までに出ている課金ガチャのアイテム、限定ボスのドロップアイテム、限定ステージ、限定アバター、限定クエスト、それに当然通常の物も

通常マップなどマップの隅から隅までドットを余すところなくしかも億の単位で踏んでいるだろう。


―エインズさん、ありがとうございましたー!


 先ほど彼が臨時に入っていたギルドの女ボスのコメントを皮切りに凄まじい勢いで流れ出すチャットログ

ちなみにエインズとは、彼のキャラクターの事だ。

彼のキャラクターはソロプレイヤーなのだが、一位ともなれば、そのおこぼれに与りたい者や、パーティーを組みたい者、それから親衛隊なんてのも出来る。

当然、アンチ・エインズなんて名前を掲げてやってくる者もまれにあるが、親衛隊やらに囲まれ、すごすごと帰って行く。


 期間限定ガチャのカラーの超レアな透き通るような金色のヘアカラーに、これもまたガチャ限定の超レアな碧い瞳カラー、

顔型はイケメンメンアニメキャラを足してすべていいとこどりをしたような王子さまのごとし形、当然超レアで、さらに微調整が加わっている。

彼の周りには、キラキラとした、現在入手困難で現在所有者5名にも満たないといわれるアバターエフェクトが舞っている。


―エインズ様!ついにカンストですね!


不意にそんなコメントが目に留まった。


「そうだったっけ」


と、ぼそりと独り言を漏らしながら経験値バーを確認する。


〈Mainjob:最上魔導聖騎士 Lv:997/999[次のLvマデ残り――]〉


 カンストはまだまだ先だった。

男はからかわれた気がしたようで、奥歯をギリギリと鳴らしていた。

そして、あることに気づく


「んだよ、バグもかよ」


 早口でぼそぼそと愚痴をこぼす。本人では大声のつもりだ。

そして苛々しながらF5キーを連打する。長年、連打しつづけてきたF5キーは脂で滑りを帯びていた。

それにすべり、キーボードを大きく叩いてしまった。

画面には黒と青の背景が点滅している。


「ヤバい」


 この男はゲームは好きだが、パソコンにはあまり詳しくなかった。どうにかして直さなければいけない。

急いで電源キーを押した。しかし反応はない。

焦った男は何度も押したり、長押ししたりを繰り返す。


 そうしている間に薄らと、ゲームのタイトル画面が映っていた。

ゲームのタイトル画面、薄らとしたゲームロゴがゆっくりフェードインするありがちな物だ。

男がいつも通りの光景にホッとしたのも束の間




次の瞬間

――男の視界にはあり得ないほどの”白”が広がっていた。




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