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それぞれの決着とその後

「だめ、昌子お姉さん。そんなことしたら、どうなるか分からないよ」

「やってみなきゃわからないでしょ!」

「分かった。昌子お姉さんに、任せるよ」

「ありがと。……雫が妹で良かったよ。さて!このタコを見事焼きダコにしたけど、食べれるでしょうか!タコの味はするのか!?」


二人は見事タコを倒して、ドアの所へ向かおうとしたが、壊して行ったのが悪いのか、ドアが消えていたのだ。


そのため、待機をすることにした。


「ゲロマズウウウウウウウゥゥゥウウ!!」

「やっぱり」

「焦げた炭に砂鉄まぶしたような、味がする」

「食べたときあるの?」

「無い!」

「やっぱり」



○●○



「そろそろ終わりだな。もう回復する魔力は、残っていない」


進藤に首を掴まれ、俺はダランと脱力していた。


「まだだっ……!水神との契約『セイレーン』!」

「それは、もう見た」


進藤に利き手の、右腕を斬られた。


「あああああああぁぁぁぁああぁ!!!!」


ぽとりと右腕が落ち、血だまりが作られる。


「終わり」


進藤が手を離し、俺はその場に崩れ落ちた。


俺は特殊魔術を使うとき、暗闇の中の前方に七つの扉が現れ、俺は闇の中心にいる。いつもそこにいくと、背中に寒気が走った。悪魔、神との対話は怖いものだ。


それぞれの扉に属性があり一つ一つ神話がある。その神話によって俺は姿や武器が変えている。


「…………まだ……だ……!」


体に余った力、末端にある残りカスも全て集めて立ち上がる。


「お前に俺は倒せない。お前の特殊魔術は、七つの属性、全て知っている。何が得意なのか、何が弱点なのかもわかる。最初から、お前は詰んでいるんだ」


確かに、闇にある七つの扉、七つの属性の契約による特徴。分かることは全て教えてきた。


しかし、俺は進藤に特殊魔術で、教えてないことがある。


いや、俺も知らないことだ。知りたくないんだ。


でもここで、負けたらなんの意味もない!


俺は勝つために、自分に勝つ!!


目を閉じると、暗闇の中に七つの扉が現れる。


背中に寒気が走った。


俺が後ろを振り向くと、そこに真っ白の純白の扉があった。


これは俺が両親を殺した時に、使った扉だ。


俺はその扉を押し開く。



○●○



黒々とした槍をしゃがんで避けると、後ろに跳んで距離をとった。


『逃げてばっかじゃ、アタシを倒せないよ!!』

「倒すんじゃない!!助けるんだ!」

『何が助けるだよ!アタシはアタシなんだから、なんにも変わんねぇよ!』

「それじゃあ、君は誰?」

『……は?…………アタシはアタシだよ!』


やっぱり、この子も自分が、なんなのか分からないんだ。


「ミチも、最初は自分がなんなのか、分からなかったんだ」

『なんの話してんだ!』

「ミチのことであり、君の話だよ。きっと君は、ミチの負の、感情そのものなんだよ。戦ってると流れてくるのが、悲哀、恐怖、憤怒、全部悲しくなってくる」

『うるせぇっ!!!』


僕は手にしていた『シャドー』を投げ捨て、ミチに抱きついた。


「ずっと、君はミチの負の感情を全て背負って、一人で寂しかったんでしょ。誰かと遊びたくて、つまらなくて、僕が来たとき笑顔になった」

『うるせぇうるせぇ!!!』


ミチは手にしていた槍で、背中から僕の脇腹を刺した。


「大丈夫。僕が君も助けてあげる」

『うるせぇ……よ。お前に何がわかんだよ……。くそっ……あーあ、あんな奴に会う前に、お前に会いたかった。ありがと』

「今からでも、大丈夫だよ」

『それは、できねぇんだ。……アタシの中の、ミチも望んでることだ』

「……なに言ってるの……?」

『アタシを殺さないと世界が崩壊する』

「……どういうこと?」

『この塔は時間になると打ち上がり、宇宙に行くと自動的に私の死と引き換えに魔力を放出し、地球から全ての魔力を打ち消す。塔が発射したら、もう止めることはできない。この世の全ての魔力を打ち消すほどの魔力を持った塔は、壊すことは無理だ。だから、さっさとアタシ達を殺せ』


地球は、魔力無しでは機能しない。魔力が無くなった途端、温度は絶対温度へと変わり、一日で死の星に変わるだろう。


「君はいいのか?」

『あぁ、いいぜ。最後に腹わって話せたしな。もう十分だ。早く殺さねぇと、アタシはプログラミングされた人格に変わる。感情は一切無い、命令に忠実で邪魔物は排除するやつだ。アタシと、中のミチを掛け合わせた魔力量だ。お前なんかじゃ勝てねぇよ』


ここでミチを殺せば、世界は救われる。


こんなんでいいのか?


ミチは救われるのか?


約束は守れたことになるのか?


そんなこと絶対あり得ない。


ここまで来たのは、世界を守るなんて大層な目的じゃない。


ミチを助けるために、来たんだ!


「二人とも助けるよ」


その瞬間、ミチが黒い光を纏った。


少し距離を取ると『シャドー』で刀を作った。



○●○



「なんだ、その姿は……」


進藤が俺の姿を見て驚いていた。


『全てを司る神との契約『ゼウス』』


金眼、真っ白の髪となり、首もとに白くて透明な宝石が埋め込まれていた。


右手を想像すると、創造して出来ていた


「バカな、ありえない!唯一絶対神のゼウスは、召喚すらできないと言われているのに。お前はゼウスの力を得たと言うのか」

『時間がない。すぐに終わらせる』

「しかし、契約してもお前は、おま」


進藤の体内から、冷たくない氷の結晶が現れ、体を貫通した。


その結晶は枝分かれをして、進藤にの体内を縦横無尽に突き刺していった。


「あがっ……!」


そう言葉を残して、神童はグタリと倒れた。


俺も眼を閉じて、契約を解除する。


一歩足を踏み出す。


早く、宗を連れて寮に帰ろう。


あの暖かい、所に。


しかし、俺は倒れていた。足に力が入らない。


血の池に俺は寝ていた。全部俺の血かよ。


くそっ……。



○●○



『排除シマス』


両手に黒い槍を出現させたミチは、すぐに襲いかかってきた。


『シャドー』の刀で対応しても、槍に触れただけで壊れた。


このミチと戦うためには、あの『色』しか勝ち目はない。しかし、今の状態で使うのは、あまりにも危険すぎる。


でもやるしかない。


ミチの槍を紙一重で避けながら、僕は透明なクレヨンを取りだした。


ミチの動きは単調で、槍を作って振ることしかしてこない。さっきのミチのように魔力を放出するのは、魔力量を減らすから、しないようにプログラミングされているんだろう。


僕は透明なクレヨンを持ち、首の頸動脈に突き刺した。


「赤色『ブラッド』」


この色は、致死量の血液である三分の一を吸わせて、発動する色だ


決めるのは一瞬。


赤く染まり上がり、クレヨンを抜くと、今までの、形が曖昧な刀ではなく、柄、鍔、刀身、鞘が実態として出てきた。基本を赤にして、所々に白色が入れられ、刀身には血液が巡る。


これを壊されたとき、僕は血液を失う。


今の状態だったら、衝撃で一気に意識が飛んでしまうかもしれない。


「行くよ。時間がないんだ。一撃で終わらせる」


ミチも僕の『ブラッド』に警戒して、魔力をより一層槍に込めて、一本にした。


ものすごい魔力量だ。僕のなんかより遥かに大きい。


でも、僕はこの特徴魔術を信じてきた。絶対やってくれる。


正直な話、死にたくない。


もう少し、親孝行とかやりたい。


友達と話してたい。


でも、好きな人を守るために死ぬなんて、男として最高に格好良い。


僕は地面を蹴った。


『ブラッド』を鞘から抜き、両手で持ち、振り上げ


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉおぉぉおおぉ!!!!!!!!!!」


ミチに向かって降り下ろした。


ミチは一本の槍を、両手の間隔を広くして持って、棒のところで防いでいた。


高密度の魔力同士が擦り合わさり、高い音が鳴り響く。


「うらああああぁぁぁぁああああああぁぁああああああああああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁあっっっっ!!!!!!!」


パリン。


割れる音がした。


破片が飛び散る。


膨大な量の赤い、血液が飛び散る。


僕の『ブラッド』が負けた。


手から『ブラッド』が血液となり、流れ落ちる。


終わるのか。


倒せないのか。


約束は守れないのか。


手から流れ落ちる血液のように、僕の願いは掴めずに何処かへ落ちていくのか。


「ぞんなごど……ざぜない…………!」


足を一歩踏み出し、深く沈み込んで、ショルダーバックから透明なクレヨンを無造作に何本も取り出す。


「黒色『シャドー』」


手から何本もの刀が飛び出し、手が穴だらけになる。


それでも構わず、ミチに向かって刀を下から、太ももの付け根から肩を切った。


『ブラッド』が壊れたときの血液が、ミチの視界を遮ってくれたようだ。


辺りが一つの小さな部屋になっていた。


「…………ミチ、僕、頑張ったよね」


掠れた声しか出なかった。


ミチの近くで倒れ込んだ。


「……ありがと、宗」


そう言ってミチは、血を吐いた。


「……ごめんね、痛いでしょ」

「……大丈夫。この傷のおかげで、私は宗と……話せてる」


ミチの眼に光が無くなり始めた。


「……宗の顔が……見えなくなってきた」

「……僕も、視界が霞んでる。…………ここから寮にもどったら……また色んな物食べて…………皆と遊んで………………たくさん色んなことしよう……」

「…………うん、楽しみに待ってる」


霞んだ視界で見れたのは、ミチの綺麗な笑顔だった。


僕とミチは、ゆっくり、目を閉じた。


その時、地面が揺れた。


「……どうして…………。塔が……発射した」

「……なん…………だって……?」


塔が発射された。


止めないと。僕が止めないと。


動けよ、動けよ、体。身体中の力を集めろ、どんな小さなモノでもいいから!!


ミチは僕の頬に触れた。


「少しだけ、だけど。……私をおいて……ここから…………逃げて」


ミチが僕に力を注いでいた。


理屈はどうだっていい!


立ち上がれ!


僕がやらなきゃ、誰がやるんだ!!


手を使って上半身を起き上がらせて、フラフラの下半身に鞭打って、力をいれて、立ち上がった。


「絶対助けるよ、ミチ」


僕は近くにあった壁を『シャドー』で壊し、外に出て、塔の外壁を掴んだ。


ものすごい風圧で飛ばされそうになりながらも、周りを見てみると、雲が沢山ありなにも見えなかったが、今いるところが塔の上部なのは分かった。


魔力をできるだけ温存するために、生身の体で塔を登る。


体が凍てつくように冷たい。


僕の目的は、この塔を壊すこと。


頂上から巨大な魔術を加えて、下まで一気に破壊すれば作戦は遂行されないはずだ。



△▼△



頂上についた。


最後にしよう。


ありったけの魔力をこのクレヨンに込めろ。


皆から貰った思いを込めろ。


これで僕は死んでも良い、だけど皆を笑顔にする、この世界は守って見せる!!


沢山の色が重なり、ミチから貰った魔力を込めると、ぐちゃぐちゃした汚い色になった。


「これが、僕らしい色みたい」


クレヨンをきつく握りしめる。
















――――終焉の色『ジ・エンド』
















△▼△○●○



あの塔の事故の影響で、一部の国の魔力が失われ、世界全体に自然災害が増えたが、三日後にはすっかり元通りになっていた。


俺は生徒会長の椅子に座りながら、天井を見ていた。


「なぁ、昌子。一ヶ月前の、あの塔って本物だったのかな」


きょとんとした表情で俺を見てきた昌子は、クスクスと笑った。


「本当のだよ。色々と深く爪痕をつけていったしね」

「そうだよな。なぁ、今日見舞いに行くか?」

「いいかも、行こう」



○●○



私は一人夕暮れの空を眺めていた。


夜が来る寂しさに反して、夕暮れの色は暖かい。


「雫、いい加減に帰れ」

「別に良いじゃない。黄昏てるの」


私にもし力があったら、どんな未来になっていたのだろうと、いつも考えてしまう。


「龍地、今日見舞いに行こう」

「分かった」



△▼△○●○



「おお、お前達も見舞いにきたのか!」


病室の前で、ドンピシャで俺と昌子は、龍地と雫に会った。


「こんなこともあるんだなー」


俺はそんなことを言いつつ病室の扉を開けた。


いつもいるミチは、寝ていた。窓から射す夕暮れの光を受け、一枚の絵のようだった。


そんな綺麗なものの隣にあるのは、包帯が全身に巻かれ、無数の管を繋がれ、延命治療を受ける、植物状態の宗の姿だった。

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