友達になるためには魔術喧嘩から
私立光堂魔術高校、魔術を重視しているそこそこ有名な高校である。
桜舞う季節、補欠合格を経て入学した。
入学式、自己紹介やら一通りのイベントをこなした後僕にとっての最大イベントが催された。
友達作りである。
「よし、家に帰ろう」
鞄を背負って教室から退室しようとする。
「いい加減にして。宗が友達作らないとこっちが迷惑なの」
後ろから勢いよく襟を掴まれた。
「ぐえっ……。だって僕は友達に、雫ちゃんがいれば十分だもん」
「早く私を卒業してよ。幼馴染みだから付き合ってるだけなの。ほら、あそこに自己紹介の時、皆を睨んでて、今一人になってる男子がいるから、話してきなさいよ」
「危ない人チョイスやめてよ!……でも、行ってくる」
よくよく見れば髪染めて、ピアスして、服装が不良っぽいけど、話してみれば優しい人に決まってる。
たしか名前は……龍地だったよな。
「あ、あのさ、龍地君、今日一緒に帰らない?」
「死ね」
「初対面の人に対して酷くない!?」
「消えろ」
「泣きたい!」
ということで雫ちゃんの元へと戻ってきた。
「私の前からも消えてくれない?」
「これは酷い!……うぅ、もう分かった。雫ちゃんは友達パラダイスでも作ってろ!もう帰る!」
雫ちゃんを見つめながら教室を出ていくと、引き留められなかった。
全然寂しくなんかない。
あ、今日は残り一時間あるんだった。
チャイムがなったので恥ずかしいと思いつつ、雫ちゃんの前の席に座った。
「えーと、さっき自己紹介終わったようだけど、俺はしてなかったな。進藤先生だ。しっかり敬え」
先生はパイプ椅子に座りながら、出席簿になにかを書いていた。
「さっそくだが、光堂高校には友達を作ろうキャンペーンも含めて、明日から魔術の祭りを三日間する。一日目は全校生徒の血が入り乱れるデスマッチ、ようするに校舎を舞台として魔術で戦ってもらう。二日目と三日目はクラスの代表三名がトーナメントで戦うやつだ」
教室が静寂に包まれる。
「先生方は楽しけりゃあいいと、思ってる人達ばかりだからな。あ、あと安全面では完璧だからきにすんなよ。そんでこれからすんのは、代表三名を決めてもらう。が、優勝商品はそれなりのものなので、勝ちにいくため入試テストで魔術、学業においてクラス内で成績が一位の人と二位の人は決定な。雫と龍地は前に出てきて残りの一人を決めろ。俺は寝てる」
雫ちゃんが成績良かったのは知ってたけど、龍地君も成績が良かったとは驚きだ。
「えー、頼まれました雫と言います。率直に聞きますけど出たい人いますか?」
誰も手を上げようとしない。当たり前だ。同学年ならまだしも、先輩に勝てるとは思えない。
魔術は使った分だけ強くなっていく。一年でもとても差が開くものだ。
先生が寝てるのも、少し諦めが入っているからかもしれない。
「ちっ」
龍地君が舌打ちをした。
「あー、困ったなー」
雫ちゃんが僕を見ながらそう言った。
僕は子供の頃から、正義感が強いのか分からないけど困っている人は絶対見捨てられない性格なのだ。
というか絶対、雫ちゃんは僕を出そうとしている。
周りを見れば困った表情をするクラスメイトだった。
「誰か助けてくれないかなー」
棒読みの雫ちゃんのせいじゃない、僕はこのクラスメイトのために手をあげるんだ。
僕は手をあげた。
△▼△
廊下で僕は雫ちゃんと話しをしていた。
「うわああああん!絶対無理だー!」
「はいはい、よく頑張って手をあげてくれましたねー。良い子良い子」
「別に雫ちゃんのためじゃないもん!」
「はいはい。というか、真面目な話、宗は特殊魔術使えばいいでしょ。何で隠したがるの?」
「あれって、ズルしてるみたいじゃん。それに目立つから、いじめの標的になるかも!」
「大方予想通り」
突然、廊下の奥から叫び声が聞こえてきた。
「おい!俺を殺す気か!!」
「そうなってくれると嬉しいんだけどね!」
そう言って追いかけてる女子の先輩(リボンやネクタイの色で学年が分かる)が、男子の先輩に向かってほうきを降り下ろしていた。
「いつもいつも面倒って、私に仕事を請け負わせて、我慢の限界よ!!」
「俺は仕事しないって、お前だって納得しただろ!!」
「生徒会長なんだから少しは仕事してよ!!」
大変そうだねー、と他人行儀で雫ちゃんに話しかけたら、迫ってきた生徒会の人達に向かって蹴られた。
「……え。雫ちゃん、なにして「そこの君!助けてくれ!!」
ちょうど良く人がいたから、という理由で生徒会長が僕の後ろに隠れた。
「誰よ、邪魔する気?あんたから始末するわよ」
目がマジだった。
「えーっとー」
「突っ込んで抱き止めるんだ!!」
後ろの生徒会長から背中を押され、生徒会の女性に抱きついてしまった。
「き、気持ち良いです!間違いました!すみません!!」
後ろで大爆笑してる生徒会長を、いつか一発殴ろうと心に決めた。
「どーもすみません、ぷっ、昌子お姉さん」
雫ちゃんが笑いを堪えながら、衝撃発言をした。
「あんたが雫の言ってた、見てると面白い子ね。あ!来栖を見失った!ごめん、また今度ね」
台風のように一波乱起こして、何事もなかったように消えていった。
△▼△
帰り際、友達と仲良く話してる雫ちゃんを見て、一人で帰ることにした。
外に出てみると天気が、僕と同じでご機嫌が悪いようで、どしゃ降りだった。
傘は持ってきてないし、走って帰るしかないかな。
そう思って走り出した瞬間、つまづいて転んだ。
「なんかもう嫌だ」
「あー、汚い。折り畳み傘渡そうとしたら、転ぶからこっちまで水飛んできた」
「雫ちゃん!来てくれると信じてたよ!お母さんみたいな安心感がある!」
「本当に、子守りが大変」
雫ちゃんから傘を受け取り、僕だけが気分上々で一緒に帰ろうとしたら、先生が雫ちゃんを放送で呼び出した。
「え、行っちゃうの?」
「当たり前でしょ、子犬の方がまだ可愛い。早く帰って着替えなさい」
そう言い残して行ってしまった。
ここの高校は高台にあり、周りは木々がある。つまり山の頂上に学校を作ったのだ。
寮に向かう途中の道路に、景色を一望できる一本道がある。そこを通るといつもドキドキして、その広い世界を見渡すと、僕の知らないことがあり、世界は希望に満ち溢れていると思えるからだ。
しかし、今は雨が降っていて視界が悪いから見えないかも。
肩を落としながら、その一本道に入ると、一人の背丈が中学生の女の子が、傘をささずに空を見ていた。
泣いていた。雨の他に少女は目から涙が溢れていた。
冷たい、重い、涙が頬を伝う。
少女は僕の方を見て、近づいてきた。
「どうして……泣いてるの……?」
僕の口から出た言葉ではなかった。少女からだ。
僕の目に涙が溢れていた。
他の人が困っていると、辛い思いに同情して心がキュッと締め付けられる時がある。
「分からない、でも何故か、君が泣いているのを見ると、とても辛くなる」
「ごめんね……泣かないで」
「君のせいなんかじゃない」
僕は一旦涙をこらえて、少女と話すことにした。
「こんなところで何してたの?」
「分からない」
「えーと、親は一緒?」
「親はいない」
なにを聞いても辛い返事をしなくてはいけないかもしれない。
「少し雨宿りのために、僕の寮まで来る?」
「ううん。……迷惑」
「迷惑じゃないよ。僕がしたいだけ」
僕は少女の手を引いた。
「僕が君を笑顔にしてあげる!」
それと同時に少女は僕の手を握り返してくれた。
見なくても大丈夫な先生の魔術教室!
つうわけで進藤先生だ。者共敬え。
魔術は言葉に出すことによって発動するのは、大前提な。
んで、出すためには言葉の組み合わせが重要になってくる。
例えを出した方が早いな。
下位魔術。
水玉
大体どんなのが出てくるかは予想できるだろ。
まずは属性から始める。
火、水、雷、土、風、闇、光。
の七つから属性を指定する。
その次に何を作りたいか、どんなことをしたいかを続ける。
それで完成ってわけだ。
属性の次に『極』を入れると、その魔術が一気に強くなるぞ。
上位魔術
水極玉
みたいな感じだ。
次は召喚する魔術だ。
属性+種族+名前
火悪魔イフリート
で召喚できるが、術者が弱いと応答してくれないらしいぞ。
種族の強さは
武器<人間<動物<自然<神<悪魔
の順番だ。
悪魔は魔術に順応しやすくて、神以上の力を発揮できるんだ。
特殊魔術についてだ。
簡単に言えば、漢字一つに呼応する能力だ。
例えば
鉄
だったら無限に鉄を使ったものを、作れまくるとか。
これで終わり!