conjunto
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名詞:集合
僕、吉野瀬浩太は自己推薦で大学入学が決まった。これで残り数か月の高校生活は気楽に過ごせる。
正直、どこの大学でも良かった僕にとってはかなりラッキーだった。
「こんにちは、華ちゃん」
「先輩、今日も来たんですね。三年生って受験勉強の時期じゃないんですか?勉強道具を持ってきているようには見えませんが」
「僕、大学推薦で決まったんだ」
ある日出逢った木村華は僕の初恋の人であり、一目惚れ相手だった。
特段可愛い訳ではなかったけど、彼女には僕を引き寄せる何かがあった。
今日も初めて出逢った図書館に彼女に会いに来た。
「合格おめでとうございます」
「ありがとう。これで華ちゃんとここで過ごせる時間が確保できるよ」
勉強に追われる必要がない僕は、塾に行く心配も放課後に勉強をする必要もない。
受験モードにシフトチェンジした友達から遊びに誘われることも減った今、僕は一人で自由に過ごす時間が増えた。
その時間の全てを彼女と過ごす時間に充てられることは、今の僕にとって最高の幸せだった。
「私は、先輩と一緒に過ごしているとは感じていませんが。あくまでも、自分の時間を過ごしているだけです」
「じゃあ誘ったら僕と時間を過ごしてくれるかな?」
この年まで恋愛とは無縁だった僕だけど、案外グイグイいくタイプだったみたいだ。
もっとも彼女は一定の距離感を保っているので、二人の距離はなかなか縮まることがないけど。
彼女に会うために図書館に通うようになってから、かれこれ二か月ほど経っているのだが未だに彼女からの呼び方は『先輩』のまま。
名前とまでは言わないけど、せめて苗字で呼んでくれてもいいんじゃないかと思う。
「華ちゃん、いつも本読んでるよね」
「…図書館ですからね、普通のことだと思いますよ。それより先輩少し声落としてください」
「ごめんなさい」
人の少ない放課後の図書館。
その窓際の席が僕らの集合場所。