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名詞:瞬間、瞬時








僕の初恋は、人より遅いのかもしれない。


現在高校3年の僕、吉野瀬浩太(きちのせこうた)は彼女いない歴=年齢の世間的には非リア充と呼ばれる人種だ。

別に、男子校に通っていて出会いがないわけ訳でもないし人見知りという訳でもない。むしろ、どちらかといえば友達は多い方だと思う。


ただ、好きと言うのがどういうことなのか僕にはいまいち分からなかった。



「吉野瀬、これ先生のとこまで届けてくれない?今日日直だし、どうせ行くでしょ?」

「ったく、吉田は人遣い荒いっての。まぁ、ついでに届けとくよ」



放課後、クラスメイトの吉田に古典のノートの提出を頼まれた僕は担任のいる国語準備室に向かった。

準備室は図書室の横に併設されてて、地味に遠いのがみんなの足が遠のいてる理由だと僕は思う。

階段を上る時、姉ちゃんの持ってる漫画なら女の子とぶつかるなんて展開があるんだろうななんて考えていた。

もちろん、現実にはそんなことが起きるはずもなく誰も通らない階段を上りきった。



「…先生いないし」



せっかくついた準備室だったが、あいにく先生は不在で鍵が閉まっていた。

古典のノートと日誌を提出しないことには帰れないのに、なんとも運が悪い。

仕方ないから隣の図書室で先生が来るのを待つことにした。

普段来ない、というよりも入学して初めて来るかもしれない図書室は誰も居なく静かだった。

窓際の席は気持ち良さそうな日の光が差していて、僕のことを座れと誘惑しているかのようだった。



「おやすみなさい」



誰に言う訳でもなくそう呟いた僕は、夢の世界へ……



「ここで眠るんですか?私の特等席だったんですけど」



頭の上から聞こえた声に、夢の世界の入り口から引き戻された。

目の前にいたのは今どき珍しい黒髪おさげの女の子だった。

特段可愛いという訳ではないが、その子から目が離せなかった。



「そこ、日当たり良くて気持ち良いんですよね。隣もなかなか良い席なので、お隣いいですか?」

「え、あ、どうぞ」

「あ、私にお構いなくどうぞお昼寝してください。なんなら、斉藤先生が来たら起こしましょうか?」

「え、なんで俺が先生待ってるって…」



彼女が指差した先には吉田から預かったノートの山と日誌。

あぁ、彼女はこれを見て俺が先生を待ってることを見抜いたのか。

そんなことより、



「君、名前は?学年は…、青のネクタイってことは一年生だよね」

木村華(きむらはな)、です。先輩は3年生の…」

「吉野瀬浩太。時に木村さん、聞いて欲しいことがあるんだけど。僕、どうやら君に一目惚れしたみたいです」



自分の口からこんな言葉が出て来るなんて想像もしてなかった。

今まで恋なんてしたことのない僕が、初めて会った女の子相手に一目惚れなんて言い出すとは。



「…一目惚れ云々は知りませんが、気に入っていただけたならまたここに遊びに来てください。私は毎日いますから」



恋は理解しようとしてするようなものじゃなかった。

恋には縁遠かった僕は、彼女を一目見た瞬間にあっさりと恋に落ちた。








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