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リインカネーション  作者: 岐塔
近衛騎士団編
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XXX. アルフレッド・アートライド

 

ぼくの名前は、ウィルフリート。家族はぼくのことを、ウィルって呼ぶ。

父さまと、母さまと、兄さまと、ぼく。それにディーディー。

ディーディーは、ぼくと父さまと同じいろのネコ。

けんぞく……っていうんだって。よくわかんないけど。

ぼくたちのせいかつを助けてくれるヒトたちがいっぱいいるけど、そのヒトたちはぼくのことを、ウィルフリートさまって呼ぶ。


ぼくはこのあいだ、五さいになった。

そのときひさしぶりに、兄さまに会った。

兄さまは――いちねん? にねん? まえから、このえきし、になるためにどこかにいっちゃった。

父さまと母さまは、すぐちかくにいるって言ってたけど、ちかくにいたって会えないんじゃ同じことだよね。


兄さまは、しゃべれない。

むかし――ぼくと同じとしのころにびょうきになって、そのこういしょうでこえがでなくなっちゃったんだってリーアがいってた。

こういしょう、ってなんだろう?

リーアは、ぼくのおせわをしてくれるメイド。かくれんぼしてもすぐにみつかっちゃう。


兄さまはしゃべれないけど、ぼくと兄さまだけのヒミツのサインでおはなしができる。

ほかのヒトとはまほうでおはなししてるけど、ぼくとはちがう。

しゅわ(手話)、って兄さまはいってた。

しゅわをつかえば、会えないけど、とおみのかがみ(遠見の鏡)でおはなしができる。

どんなおはなしをしてるの? って母さまにきかれるけど、ぼくと兄さまだけのヒミツだから、ナイショ。


兄さまがどんなせいかつをしてるかとか、どんなことがあったとか、きくのはたのしい。

たのしいけど、兄さまに会えないのはさびしい。

とおみのかがみのむこうの兄さまは、いつもニコニコしてて、ぼくのことがだいすきだっていってくれる。

少しずつながくなる兄さまのぎんいろのかみは、ぼくのためにのばされてるんだ。

あかんぼうのころから、ぼくは兄さまのかみがすきだったんだって。

いまでももちろんだいすき。

やわらかくて、さらさらしてて、いいにおいがする。


兄さま、つぎはいつかえってくるのかな?




----------




私の名前はエトランド。

私には、息子が二人いる。

上の息子は十四歳で、下の息子は五歳になった。

長男の名前はアルフレッドで、次男はウィルフリートだ。


アルフレッド――アルフは、幼くして声を失った。

もともと聡明な子だったが、その頃から特に、手のかからない子になったと思う。

一人書庫に篭り魔術書を読み漁り、今では専門職のものくらいしか使わなくなった魔術陣を身に付けた。

しかも、そこらの職人などよりもずっと使いこなしている。

魔術陣は主に魔具職人が使う技術で、一般的には知られていない。

しかしよほど信用のできる職人の作品でないと、私は安心して使えない。

はっきりいって、魔具には暴発が多い。

アルフによると、陣の内容が間違っているそうだ。

ここ数年新しく購入した魔具には、アルフが陣を修正したものが多い。


十三歳になってすぐ、アルフは近衛騎士団に入団するために家を出た、

まだ十三歳なのに。

子供が独り立ちする、平均的な年齢は十六歳。

アルフはまだ十三歳。

早すぎる、まだいいじゃないかと思うが、まあ、アルフの現状を思えばそれも仕方がないのかもしれない。

アルフは学院の卒業試験をパスしてしまい、図書館の本を読むためと友人に会うためだけに通っているようなものだったからだ。

でもまだ十三歳なのに。

身体だってまだ出来上がっていないのに、騎士の訓練なんて。

近衛騎士団、万が一にもアルフが身体を壊すようなことがあったら許さないからな。


……コホン。


えーと……。

ああ、そうそう。

最近、息子たちはハンドサインで話をしているようだ。

アルフは滅多に帰ってこないが、遠見の鏡はよく使ってくれる。

そのとき、ウィルは決まって皆を部屋から追い出して鏡の向こうのアルフと二人だけになるのだが、実はこっそり覗いたことがある。

大人気ないとか行儀が悪いとか言うのはなしだ。

気になったんだから仕方がない。

それで、そのハンドサインなんだが。

どうも、既存のものとは違うようだ。

今までに見たことのないサインだったので、覗いていたのがバレるのを覚悟でウィルに訊いてみたのだが、ないしょ、と言って教えてくれなかった。


だがしかし。

この私を舐めてもらっては困る。

かつて神童と呼ばれた(結構はずかしい)この私。

まだ完璧ではないが、大部分の解読は済んでいる。

まあ、これは絶対に秘密にしておかなければ、息子たちに嫌われてしまうかもしれない。

……そう考えれば、サインの解読はもうやめるべきだろうか。

…………うん、もう、いいかな。

二人の話の内容も、互いの日常のこととかだったし。



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