番外編 明日を夢見て
今回はダイタの話の番外編です。
「あの、ファミリアさん」
長い道沿いを歩き続けてようやく、そろそろ街並みが見えてきたという頃、僕の隣にいたマジョンがファミリアさんに呼びかけた。
「どうして、ファミリアさんはダイタさんのことを運命の人だと思ったんですか?」
「あっ、そういえば・・・・・」
僕はハッとして、ファミリアさんを見つめた。
そのことは僕も前から気になっていたことだった。
ファミリアさんは何故か最初から−−そう初めて出会った時から、僕のことを『運命の人』だって言っている。でも、それが何故なのかは、僕は全く分からずにいた。
ファミリアさんとはフレストの街で出会ったのだが、特別、運命の出会いといえるような場面も何かしらの出来事もなかったのだ。
何しろいきなり、ファミリアさんの方から僕に向かって『運命の人ですわ』と言ってきたのだから−−。
「そんなの決まっていますわ!」
ごく当然のことのように、ファミリアさんは満面の笑みを浮かべて答えた。
「もちろん、ダイタ様だったからですわ」
と、とても嬉しそうにファミリアさんは言った。
その答えを聞いて、僕とマジョンはガクッと肩を落とす。
・・・・・っていうか、それってはっきり言って、答えになっていないような気がするんだけどな。
「・・・・・それだけ?」
「はい!」
僕が唖然とした表情のままそう聞き返すと、ファミリアさんはまたにっこりと笑った。
それから少し照れくさそうに顔をうつむかせると、ファミリアさんは僕にだけ聞こえるような声でそっと耳打ちをした。
「ダイタ様は私にとって、太陽のように思えたからのですの」
僕が驚いてファミリアさんを見つめ返した時には、ファミリアさんはもうその場から移動していた。
「でも、何だかそう言うのってファミリアさんらしいですね」
呆然とする僕の隣で、マジョンはくすっと笑みを浮かべていた。
(この人と一緒なら、きっと私は輝けると思ったのですの。だって、太陽があるから月が輝くのですもの。)
それは光だった。
−−夜の森をさまよい続ける彼女を照らす、光。