頭がお花畑と言われた没落令嬢から悪役令嬢へなった貴女へ【ギガ姫様からは逃げられない】
【イケメン悪人貴族に騙される】
貴族令嬢の人生は摘みかけていました。
「君の頭がお花畑で助かったよ」
私は結婚詐欺に騙されました。
結婚詐欺師は初め……
「一緒に幸せになろう」
「事業を興すのに投資して欲しい」
「僕らの未来の為に……」
などなど甘い言葉を混じえては、私を口説いていたのに、私からと言うよりも我が家から、お金を引き出し終えると終いには……
「君の頭が、お花畑で出来てて助かったよ。簡単に騙されてくれた」
そう言ってお金を奪って去りました。私は何がおきたか理解できず。私の頭はパーンってなりました。
■■■■■■
私が結婚詐欺師に騙されたのには理由があります。 私の家も騙した相手の家も貴族でした。
貴族同士で結婚詐欺?
騙した方も名誉を失います。
だからそんな事があるなんて、思いもしませんでしたから……
(そして何より結婚詐欺貴族はイケメンでした。あんな天使の様な顔したイケメンが結婚詐欺だなんて。悪魔の諸行をするだなんて……信じられません。)
私も私の父上もスッカリ騙されました。
しかも相手の家は国の大貴族、公爵派の派閥に属した貴族でして、私達の訴えた被害を公爵派閥の力で、もみ消されてしまいました。
そういうわけで、我が家は悪人貴族の結婚詐欺師に財産を騙し取られて、没落貴族になったのさ。
「あ〜。もう死んじゃおうかなぁ。それにしても、あのイケメン。顔だけは良かったなぁ」
■■■■■■■■■
【実家を没落させた貴族令嬢】
結婚詐欺師に騙されて脳がパーンって……脳破壊された私。これが現実なのかどうか判断できなくなってます。その為に、やや現実感無くフワフワして不真面目に絶望しています。
そんな私に父上は……
「現実を受け入れろ」
優しく語りかけはします。
でもその後は現実的な話を突きつけてきました。
「娘よ。死ぬなんて言わないでおくれ。まだオマエの人生はこれからだし、打てる手もある」
「でも……父上」
財産を騙し取られて没落貴族になった父上と私は、今後の身の振り方を考えます。これまで私は何処かの貴族へ嫁入りする予定でしたが、騙されて……
「兎に角、持参金が無い。コレでは娘のまともな縁談は無理だな。金策をせねば」
前向きな父上が頭を抱えてます。
悪人貴族に騙されて当家では簡単に返せない額の借金を抱えました。
我が家が貴族とは言え、借金付きの貴族と縁談したがる奇特な貴族など、そうはありませんし……
「申し訳ありませんお父様。私に男を見る目が無いばかりに……」
私は父の顔を真っ直ぐ見る事が出来ずにうつむきました。私が騙されなければ、こんな事には……
「済んだことは良い。儂の見る目も無かった。問題はコレからどうするか? 何かプランはあるかい?」
「いいえ」
私は頭がフワフワしてて次のプランどころではありません。
「そうか。それでは、とりあえず。王宮で貴族枠侍女の募集がある。ほとぼりを冷ます意味でも、そこで働いておくれ」
父上は私と違い冷静でした。
「王宮の侍女?」
貴族令嬢が侍女?
「王族ともなれば、付き人にも信頼出来る貴族がなる事もある。今回募集してる侍女にはそれなりの家格が必要なんだよ」
「へぇ〜」
「それに今の我が家の借金状況だと、噂を聞きつけた金持ち商人が借金返済のかたにオマエを嫁に……とも言い出しかねない」
それは避けたいと父上。
私は女にとはいえ貴族の一人っ子。私が子供を産めば子供は父上の貴族位を引き継ぎます。平民から見れば私は優良物件。大商人から縁談が持ち込まれる可能性はあります。
(別にそれでも良いのかな?)
「……」
王族の侍女……
か
商人の嫁に……
身分を欲しがるお金持ちが、大金を積んで貴族の娘と結婚。と言うのも、珍しく無いどころか、ありふれてると聞きます。
お友達にも、そういう商人に嫁いだ貴族の子はいました。けれども大抵そんな結婚生活は悲惨。
生まれ育ちや年齢差に大きな違いが多いから、ミスマッチが起こりやすいのです。
稼ぐ人間ほど浮気をする。そんな法則もありますし。
そもそもお金目当ての結婚自体、上手くいくのは稀。【お金で結婚相手を買ったり選ぶと『出来の悪い子供が出来る』】
そんな戒めの言葉もありますし……
貴族の家に一人っ子の私。私の子供は自動的に貴族。それ目当てで貴族位をお金で買おうとする商人に嫁ぐ……のはヤッパリやめときます。
兎にも角にも
私は追い詰められています。
結婚。
女にとっては人生で1番輝く時間になるハズが……私は結婚詐欺で地獄に突き落とされてしまいました。
(正直ツライ。キツイ)
脳味噌がパーンとなって、代わりにカニ味噌でも頭に詰まったかのような現実感がありません。何処か他人事の様な人生さ。
(いっそ死んじゃおうか?)
とも考えましたが
(何も悪く無い私が、どうして死ななきゃならないの? 死ぬべきなのは私を騙した悪人貴族でしょ! 許せない)
と思いついたら
一気に気力が戻りました。
(男に騙されて、家を没落貴族にしてしまった。こうなったらもう、玉の輿とまでは言わないまでも、いっそ王宮で王族の侍女をする。それから王子の愛人でも何でもして、お家再興を……出来ればナントカ私を騙した悪人貴族に王家の権力で鉄槌を……こんな期待は出来ないでしょうか?……)
私の頭に詰まったカニ味噌は、そんな穴だらけの復讐を考えました。そうなるとアッサリと商人に嫁ぐ選択肢は消えさります。
フワフワした頭がスッキリしてきました。
「じゃあ侍女として王族に媚びて媚びて取り要りましょうか?」
『貧すれば変わる。変われば通じる』
そんな言葉もありますし……
そこまで考え。
脳味噌がカニ味噌没落貴族令嬢になった私は、ひとり……部屋で不気味に微笑むのさ。
その意味は
(私はまだまだ諦めないわよ。さぁ、もう一度やってやりますか!)
なのさ
私は追い込まれました。
あとから考えると、だいぶ残念な事を考えていたと思いますが、この時は前向きに行動する。それが最善だと思いました。そんな私を……
「王族に媚びる? 取り入る?」
「あ!」
父上が私の不穏な独り言を聞きつけて、ビビった視線で私を見ています。
「一体全体何を考えたのだ娘よ!」
(しまった。またしても父上を不安にさせてしまいました。王族の愛人になろうだなんて、とても父上には言えません。なんとなく思いついただけで本気でも無いしね)
■■□■■
【ギガ姫の侍女になる。】
緊張しながら侍女に応募しました。
王宮の侍女にはアッサリと採用され。
拍子抜けしましたが……
採用理由を知って驚きました。
「応募者は私1人?」
私は、てっきり何人かいる王子の侍女になるものと思って愛人計画を考えてましたが……
私が担当するのは王子では無く王女。それもあまり評判のよろしく無い王女。
我が国名物、訳有王女、
【ギガ姫様】
その訳有王女の侍女募集でしたから、今回の応募者。私しかいませんでした。
でも、だからこそ即断即決すぐ採用。
喜んで良いのでしょうか?
どんな姫様だろうとビクビクしながら王宮へと向かい、初めて出会ったギガ姫様は圧巻でした。
『フシュ〜〜〜』
ギガ姫様の息
息だけでドラゴンの様な威圧感。
(あわわ
コレはやばい所へ来てしまった。)
【ギガ姫様】は……
女だてらに身体能力が巨人並みで2メートル近い巨体。 筋骨隆々。フリルとリボンを多用した服を着ていました。見た目は歴戦の勇姿を思わせる王者の風格。
「あ、あの……」
私が恐る恐るギガ姫様に声をかけると
「新しい侍女。話は聞いているのじゃ。よろしくなのじゃ」
ギガ姫様は話してみると、中身は普通の思春期女子でした……話を聞いてみますとギガ姫様は、その圧倒的威圧的外見から誤解されまくって人前にあまり出なくなった姫様。
そんな第一印象でした。
外見が特徴的過ぎて悪い噂を流されたまま、誤解も解かずにいただけの様です。
たぶん……
朝のトレーニングに鉄の剣をへし折って御満悦のギガ姫様。
(悪い噂は誤解じゃないかも)
【メガ姫モテなくて悩んでる。 体力がありすぎて性欲を持て余してる】
『妾は人よりも体力があるのじゃ』
「でしょうねぇ」
『そのせいか人よりも性欲が強いのじゃ』
「ん? んん? この姫様は何を言ってるの? 何を言ってるの?」
私は何か聞き間違えましたか?
何か、かなりおかしな言葉を聞いた気がしました。幻聴かと思いましたがギガ姫様は続けて……
『性欲は人並み外れて強いのに、なのに妾。この外見で人よりもモテない。だから性欲を持て余して持て余して、今にもイロイロ破裂してしまいそうなのじゃ!』
「姫様。聞いていて私の頭が恥ずかしくて、破裂しそうになる言葉を口走らないで下さい」
え〜と
コレなんでしょう?
ギガ姫様の言葉には、結婚詐欺師に破壊された私の脳が、もういちどパーンと弾ける破壊力があります。
と言うかギガ姫様、素直。と言うか正直すぎます。ほぼ初対面の私に、なんて事を言うのでしょう。
『すまぬ。しかしながら、このままでは我慢出来ずにイケメンをキャッチアンドハグしてしまいそうなのじゃ』
「あ……」
(キャッチアンドハグってなんだろ?)
でももしも、この姫様が男なら、私の愛人計画は簡単に成功してましたね。姫様が女で良かったのか? 悪かったのか?
しかし姫様は生物学的に雌です。
しかも見た目世紀末覇王感満載の巨体。
2メートル近い身長なのに筋骨隆々だから、見た目の威圧感的には3メートルを超える巨人感のあるギガ姫様。
男性にはまずモテないでしょう。
こんな姫様が今にもはちきれ暴走しそうな性欲抱えてるなんて?
(この姫を使って復讐できないかしら?)
私は悪い事を思いつきました。
■■■■■■
ギガ姫様の広い部屋。
明るい部屋なのに、私の心は真っ暗で、私の頭は真っ黒い事を思いつきました。
私の破壊された頭が頭の悪い復讐計画を考えはじめます。私は結婚詐欺師に騙されて脳が破壊されてから、脳味噌が蟹味噌に入れ替わってしまった自覚があります。
今の私は、かつての騙されやすい没落貴族令嬢ではありません。悪い女になってしまいました。
私を騙した悪人貴族は性格最悪でしたが顔はイケメン。つまり……メガ姫様の需要と悪人貴族の供給は一致してます。私は悪い事を考えました。
自然と口から
「ギガ姫様。そういう事ならイケメンの悪人貴族をつかまえて、無理矢理にでも姫の愛人にしてはどうでしょう?」
(アァ、言ってしまった。なんて私は酷い事を考えるのだろう? コレじゃまるで悪役)
『どう言う事じゃ?』
私の罪悪感を他所に、ギガ姫様は私の言葉に食いつきました。心無しか目が輝いています。
「強い姫様が、悪い貴族を退治と言うか無理矢理愛人にする分には、王様も貴族も民衆も文句を言うどころか、喜ぶのでは無いでしょうか?」
『…………』
「当座の男遊びに、悪いイケメン貴族を退治して、姫様の愛人に加えて飽きたら捨てる……とかどうでしょう?」
『……』
ギガ姫様は無言。
しかしその目はどんどん輝きを増していきます。
(怒ってるのかな?)
しかし私の口は止まりません。
「ちょうど私を結婚詐欺で騙した悪いイケメン貴族がいますから、姫様が私の仇を打ってくれたら嬉しいです」
私が囁くと姫様は……
『それはどのくらい悪い貴族なのじゃ?』
「私の家が騙され借金を背負わされて破滅させられる程、悪い貴族です」
『その貴族は……一体全体どのくらいイケメンなのじゃ?』
「悪い貴族と評判なのに、女を常にとっかえひっかえ出来るくらいイケメンなのです」
『そうか! そんなにイケメンなのか? じゃ無かった。そんなに悪い貴族なのか? それは……許せんなぁ。フンガー』
ギガ姫様の瞳が怪しく光ります。
どうやら興味を持ってくれた様です。
(でも……私を騙したから許せんじゃ無くて、イケメンだから許せんって……
いや、深く考えない様にしましょう。
姫様の中で整合性がとれればそれで良いの。私はけしかけるだけだから。
と言うか私のほうが姫様よりも最悪な事をしてます。善良な姫様を、そそのかしてしまいました)
でも仕方ない。
【ヤバイ悪人には、もっとヤバイのをぶつけるのだ】と言う言葉もありますしね。
私は笑顔でギガ姫様に……
「それはもう許せませんよね。ギガ姫様の侍女である私を騙したイケメン貴族なんて、お優しいギガ姫様は許せませんよねぇ」
『!!!』
時系列的に私が騙されたのは、ギガ姫様の侍女になる前だけども、気にしない。
ギガ姫様も気にしないでしょう。
悪人貴族を退治する為の対外的な、ただの口実になれば良いのです……
「実際に私はイケメン貴族に騙されてますし。きっと世間はギガ姫様がイケメン貴族へどんな事をしても……王家のギガ姫様の侍女に悪さをした女の敵、悪人結婚詐欺貴族への天罰、良い気味だと思う事でしょう」
私はトドメとばかりにギガ姫様を煽りました。そしてほくそ笑みます。
姫様はスッカリその気になっていますから。
もう私。
気分は何処にだしても恥ずかしくない
立派な悪役令嬢です。
そんな私にそそのかされたギガ姫様は
『確かに…………許せん貴族じゃ』
フシュ〜〜
と息を吹き出すギガ姫様のヤル気。
ギガ姫様は外見に似合わず、決して馬鹿では無い様です。私の言葉で今回のターゲットには何をシテも良い。何をしても言い訳や世間体は立つと理解しました……
その気になっています。
なので私はトドメとばかりに……
「きっと、あの私の元婚約者の悪人貴族は……姫様にもてあそばれる。じゃ無かった。お仕置きされる為に生まれてきたのかもしれません」
と言ってしまいました。
後にして思うと、私が決定的に没落貴族令嬢から悪役令嬢になった瞬間でした。
【ギガ姫様の世直し】
ギガ姫様は強い。
身長2メートル近い巨体に良く発達した筋肉。人間離れした反射神経。
なりより王家の家柄。
この国では唯一無比と言われる程の権力と暴力を持っています。
しかし全然女らしく無い。モテない。それを気にしていましたが……
私がそそのかしたせいでギガ姫様は覚醒しました。
例えるなら、いままでのギガ姫様は男性貴族や王族に言い寄られるのを待っていた巨大な草食恐竜。誰にも言い寄られない可愛そうな巨大草食恐竜。
それが私のせいで肉食恐竜になりました。悪い事をしてる貴族は沢山います。その中でもイケメン悪人貴族だけを狙って捕まえて捕食する肉食恐竜。
そんな存在に化けたギガ姫様。
悪人貴族にとってはティラノサウルスよりも恐怖でしょうね。
悪貴族達の中でもイケメン貴族を次々と成敗。テゴメにして無理やり愛人に加えるギガ姫。
その光景を例えるなら
悪人貴族ピンチピンチ
逃げようとジャンプジャンプ
メガ姫様に捕まってパンパンパン
です。
悪人貴族達は皆がギガ姫様に捕まると口を揃えて……
「やめてくれ。助けてくれ。もう悪い事はしないから。」
何処かで講習でも受けたのでしょうか? と思う程に初めはテンプレで、こう命乞いします。
なので私も悪人貴族へテンプレ回答
「初めから悪い事などしなければ、ギガ姫様に捕まる必要も無かったのです。」
私は冷たく言い放ちます。
「何でもするから許してくれ」
「知らなかったのですか? 悪人のイケメンを捕まえるギガ姫様からは逃げられない事を……」
大魔王に挑む勇者に逃げる事は許されないのさ! みたいなノリで私も悪人達に告げるのさ。
ギガ姫様が急遽用意した牢屋に放り込まれた悪人貴族達。
もはや自分が助からないと悟ると、悪人貴族達は狂った様に口汚くののしり……
「ギガ姫みたいな怪物が、この国の王女にいるせいで、我等が他国から、どれだけ馬鹿にされた事か!」
『ほう』
罵詈雑言を堂々と受けるギガ姫様。
「オマエみたいなのは生まれた直後に自決してくれれば良かったのに」
無茶を言う悪人貴族。
それにギガ姫様は全く怯むことがありません 産まれ付き怪物扱いを受けてきたギガ姫様。本人いわく「悪口には、もう慣れた」そうです。
それどころかギガ姫様は
『ソナタはなかなか良い声で妾を煽る。良い鳴き声のイケメンじゃ。妾のペットに加わると良い。コレから毎日その良い声で泣き叫び、妾を楽しませるのじゃぞ』
「え! えぇ〜」
(姫様は強いです)
悪人貴族達はギガ姫様の並外れた体力、戦闘力、精神力に度肝を抜かれ。オモシロイ様に次々と捕獲されていきます。
私は正直に言うと、悪人貴族が悪い事をして捕まり、哀願する姿を見る。それが楽しくなってます。
私を騙した元婚約者がギガ姫様に弄ばれて叫んでる現場を見た時は『コレは高度なNTRなのかな?』と、再び脳が破壊されかけたのですけれども……
でも私の脳味噌は、すでに元婚約者の手で蟹味噌にされてたから平気。と言うか元婚約者のせいで脳破壊された私の脳が……
元婚約者の悲鳴を愉快愉快と判断するのは皮肉な事さ。
私にあんな事をしなければ、私を追い込んで私の脳を破壊しなければ、彼もギガ姫様から酷い目にもあわず。私に助けてもらえたのかも知れないのに……
因果応報です。
■■□□■■□□
【私を騙した悪い貴族から「頼む逃してくれと」命乞いされる】
簡易牢屋。
ギガ姫様が用意した獲物の隔離施設。
普段はギガ姫様の専用訓練場。
人間を超えた様なギガ姫様のトレーニングについていける人がいなくなって、この広い施設はギガ姫様の秘密の基地になってたらしいです。
それが今ではギガ姫様の秘密の花園になりつつあります。秘密裏に集められた花達は、イケメン悪党ほぼ貴族ばかりの美しき毒の花束達。
捕まえたイケメン悪人貴族に食事をはこぶのは私の仕事です。
何というか、非合法な事をしてる権力者悪人貴族達を、王族の格上権力者ギガ姫様が非合法に捕獲してるだけなので、正直我々も多少は後ろ暗いです。
良い事をしてるのか?
悪い事をしてるのか?
正直わかりません。
私達に後ろ盾はいない。しいて言うなら王族のギガ姫様本人が後ろ盾。
ギガ姫様に捕まった悪人貴族達の中には、悪さのし過ぎで一族内で邪魔者扱いされている者も多く。今の所は、ギガ姫様の秘密活動は何とか大事にはなっていません。
王族のギガ姫様を敵にまわしてまで、素行の悪い一族を助ける貴族は、今の所まだいないという事です。
しかし公的にも私的にも王族的にもグレーゾーンな悪党退治。既にイロイロ噂には、なっています。
有名悪名様々。
その内、本格的に邪魔が入るのは時間の問題ですが、それでも活動の真実を知る人間は、少ない方が良いのデス。
だから雑事は私にまわってきます。でも……この雑事を私は喜んでやる。楽しい。
(私を騙した悪人貴族の同類達が苦しむ姿を間近で観察出来るのは……正直楽しかったです)
ある日
私を騙した貴族に食事を運ぶと……
「頼む。元婚約者のよしみで、私だけでも内緒で逃してくれないのだろうか? もう耐えられぬ。家に帰りたい」
「土に帰りなさい。……私が貴男を逃がしてあげる? 貴男に騙された私が、なぜ? でもそうね。私から奪った物を返してくれたら逃してあげても良いですヨ。」
私は少し考えてダメで元々の提案をしてみました。 私は、この元婚約者の結婚詐欺師に貸しがありましたから……
取られたものを取り返したい。と、思ってしまいました。
「本当か? それくらいで良いなら」
私を騙した貴族はアッサリ私の提案に乗ります。
「え? それくらい?」
「あぁ。君から奪った、あのくらいの額なら、すぐにでも用意出来る。僕は他にも手広くやってるから」
(手広く? 何を? 悪事を? 私にとっては人生が狂うお金でも、この人にとっては端金だったの? ……悔しい。 でも……)
私の提案をアッサリと受け入れる悪人貴族。私は感情を抑えて淡々と 借金返済及び利子詫び料の証文を作り署名をさせました。
私が詐欺師に騙された没落貴族令嬢の時ならいざ知らず。今の私は手負いの悪役です。
私を騙し深く傷つけたこの男……
どうしてくれよう?
■■■■■■
私を騙した貴族に書かせた各種証文を悪人貴族の身内の所へ持って行き、事情を話して奪われた物を取り返す交渉をしました。
悪人貴族の関係者はアッサリと私の取られたものを返す事に同意しました。彼らはギガ姫様を恐れてる様です。その侍女である私の事も。
ちょっと拍子抜けしましたが……私は取られた物を取り返してから……
次の行動に移るのは……
それら全てが済んでから。
私は……取られた物がアッサリと戻って来て嬉しいやら戸惑うやら。
父上と目を白黒していました。
でもイロイロ戻ってきても、私は以前の私には戻れませんでした。
私は既に結婚詐欺に騙された没落貴族令嬢ではありません。今の私はギガ姫様のお付の悪役令嬢です。貴男が私をそうしたのですから……
「さて……どうしてくれましょうか?」
呟いてニヤリと嗤うのでした。
私を騙した悪人貴族との約束を、私が守らなきゃいけない義理などありませんし……
イロイロ戻って来た事は嬉しい。でも、それ以上に、これから起こる事が嬉しくて……嬉しくて
主導権は私にあります。
私を騙した男を、ある程度どうしようとも私の自由。ギガ姫様の虎の威をかる狐。それが今の私。
結婚詐欺に騙された被害者よりは狐のほうが余程良いです。
さて……どうしてくれましょうか?
■■■■■■
【ギガ姫様の悩み。少し飽きてきたし、物足りない。トキメキが無い。私はそそのかす】
ギガ姫様は最近少し憂鬱気味。
「妾は最近少し物足りないのじゃ」
「物足りない? と言いますと?」
「うん。実は妾は愛されたい。愛されてる実感が欲しいのじゃ」
ギガ姫様なかなか無茶を言いました。
(捕獲して無理矢理捕まえた悪人イケメン貴族に愛されたい? そんな無茶な)
そんな事を考え初めたならば、ギガ姫様がその内、悪人イケメン達に、うまく騙される未来しか見えない。
かつての私の様に……
今の私がギガ姫様をコントロールしている様に……悪人貴族達は容易くギガ姫様を騙すことだろう。
ギガ姫様を昔の私みたいにしちゃいけない。ギガ姫様の無茶な要望を止めなきゃ。
でも……そんな事を説明してもギガ姫様は止まりません。たぶん仕方無い事です。騙される前の私が止まらなかった様に……
ギガ姫様に私は私の為にも、何か手を打たなければ……
ので……丁度いい駒がいた。
「ギガ姫様は愛されるよりも愛したい人なのでは無いでしょうか?」
『どう言う事じゃ?』
「単純に刺激が足りなくなってるのでは無いでしょうか? 私に少し考えがあります。お任せくださいね」
私はギガ姫様の相談を少しだけズラす。
『???』
ギガ姫様は首をかしげていました。
私は体力を持て余すギガ姫様を見て少し悪い事を思いついてしまった。
■■■■■■■■■
私は私を騙した元婚約者の悪人貴族を約束通り逃がす事にしました。
取られたものは取り返しましたし……
あとは……
「じゃあ逃しますね」
元婚約者が囚われていた扉の鍵を開け
「もうギガ姫様に見つからない様に注意するのですヨ。悪事をしてはいけませんヨ」
「あ、あぁ。わかった。ありがとう」
捕まってた牢屋の様な場所から出ると、悪人でも、お礼を言う生き物らしく、とても感謝されました。
私はそんな逃げていく元婚約者の背中に……
「絶対に、絶対に、もう一度捕まってはいけませんヨ」
逃げる悪人元婚約者貴族。
それを見送る私。
それからお茶して少し時間がたったあとで、私はギガ姫の元へと、そして……
「ギガ姫様、愛人壱号が脱走しました」
「なぜ! 一体どうやって?」
私の報告を受けたギガ姫様は取り乱しました。
「鍵をどうやってか開けた様です。私のミスで鍵を締め忘れたのかも知れません」
「……」
「どうしますか? 姫様が今から追いかければ、捕まえる事が出来ると思いますが?」
「モチロン。行く。フシュ〜」
力強い息と力強く頷くギガ姫様の発達した筋肉がピクピク動きます。
「デスよね〜。姫様は最近普通のイケメンプレイに飽きてましたもんね」
「どういう事じゃ???」
「逃げるイケメンを追いかけるのは、きっと刺激的で楽しいデスよ。ギガ姫様は愛されるよりも愛したい人です。逃げるイケメンを追いかけ捕まえて愛するのはキット格別ですよ!」
「それも……そうじゃな。ジュるり!」
ツバを飲み込むギガ姫様。
ヤル気に満ちています。
悪役令嬢になった私。
私は悪魔の様にギガ姫様をけしかけます
私が私を騙した男を許すはずが無い。
騙されて脳味噌が蟹味噌になった没落令嬢はもういませんから。
希望を与えて、それを奪います。
だって今の私は悪役令嬢ですから。
私がされた事をやり返すだけです。
私を愛したフリをして、私を騙して全てを奪った悪い男は、ギガ姫様に追いかけられて恐怖に震えるが良いのデスよ。また捕まって全てを失うと良いのです。
因果応報デス。
どんなにあがいてもギガ姫からは逃げられない。そんな簡単な事、私はすでに知っています。
逃げた元婚約者は、どうしてそんな事すらわからずに逃げる選択をするのだろう?
きっと……
頭がお花畑で出来ているのでしょうね。
□□□□□□
【恐るべき未来】
あと十年もすれば、この国には世界最強の女王が誕生するかも知れません。
その女王が誕生する頃には、この国中の悪い貴族達は狩り尽くされていることでしょうか?
女王はその事にきっと悲しみます。無限の体力を持て余した女王はきっと広い世界へ目を向ける事になるでしょう。
私はそうなる前にギガ姫様の元を離れようと思います。世界へ羽ばたくギガ姫様の共犯者にされるのはゴメンナサイです。
が……
いつの間にか没落貴族令嬢から悪役令嬢へとジョブチェンジしていた私は、ギガ姫様の中でも侍女から友人へとクラスチェンジしていたらしく……逃してくれません。
『ソナタに出会って人生が変わった。ソナタは妾と何時も一緒なのじゃ。天国へ行くにも地獄へ行くにも一緒なのじゃ』
(ギガ姫様! 何ですと?
バ、バカな。どうしてこうなった?
コレじゃあ逃げられない
逃げても追いかけられて捕まります)
いつの間にかギガ姫様を攻略してた私。
ん〜。攻略対象間違えたかなぁ?
私は確かにギガ姫様の背中を押しました。私はトンデモ無い怪物を産み出したのかもしれません。
冷や汗と共に、頭に浮かぶ言葉。
【ギガ姫様からは逃げられない】
そんな当たり前の事を、私は知っていたはずなのに、私わかっていませんでしたね。
悪人貴族から痛い目にあった人達はギガ姫様だけで無く、私にも喝采をくれるけど
私は口の悪い世間からは、ギガ姫様の手下令嬢だの黒幕令嬢だの悪役令嬢だのと陰口を叩かれるけども、違うから……
私は無実。
なのに父上ですら……
「レズはいかんぞ非生産的だから、ちゃんと子供を産める男とつきあいなさい」
とトンチンカンで、的はずれな事を言い出す始末。別に私と姫様はソウイウ関係ではありません。
「私の父上もギガ姫様の非常識に触れて脳が蟹味噌に代わってたのだなぁ」と血のつながりを感じずにはいられませんでした。
でも父上、違うから……
私はギガ姫様を操ってる訳でもなく、ギガ姫様と同性愛をしてるわけでも無く
ただ単純に
【 ギガ姫様からは逃げられない 】
だけだから……
女の人生は捕まえた男で大きく変わると言いますが、私を捕まえたのは男じゃ無かっただけです。
私もいつの間にかギガ姫様に捕まって
私は……ただ……
ギガ姫様の友達になっただけなのさ
仲良くなった。
ただそれだけさ
ギガ姫様が男なら、
あるいは、私が男なら良かったのに。
もしそうなら友情は愛情へと昇華されたかもしれません。私達の関係は、もっと簡単だったかもしれませんねぇ〜
一瞬そんな事を思いましたが、ギガ姫様が悪人貴族達を押し倒してる姿を見て
「やっぱそれは無いなぁ」
と考え直しました。
私は恋人には誠実さが必要だと思いますから。やっぱり私は悪人貴族では無く、悪役令嬢で良かったと思います。
一度不誠実な男に騙されているのです。
裏切り者。浮気する男とかも、もうこりごりです。
ですが……不思議とギガ姫様の破天荒でモラルに欠けた行動を見ていると、そんな事は些細な事に思えてくるのです。
人間はどんな苦難に直面して挫折したとしても、それよりも破天荒で大きな苦難を見たりすると、案外初めの苦難など何とでもなると思いますから不思議なものです。
結婚詐欺師に騙されて死んじゃおうかな? とか考えていた私は今は遠く。
ギガ姫様にいたっては、男にモテなくてどうしよう? とか悩んでいたのが嘘の様です。
【災い転じて福となす】
【貧すれば曲す。曲すれば通ず】
とは良く言ったものです。
致命傷にならない人間の悩みなど、生きた人間の何処までも変化を続ける、しぶとさに比べれば、ただの成長の糧にしか過ぎないのかも知れませんね。
さて……目下の私の悩み。
ギガ姫様から離れたくなった時、私はこの悩みを、どう解決すれば良いのでしょうか?
【ギガ姫様からは逃げられない】
それでもきっと、この悩み事にも解決方法はある事でしょう……たぶん。きっと。
「助けてくれ〜」
私を騙した結婚詐欺師の悲鳴が聞こえます。とりあえず彼がギガ姫様の窮地から、どう切り抜けるのか? 参考にさせてもらおうと思いました。
イロイロあって……
私は婚約者に騙されましたが。
私に友達ができました。
友達は世界に通用する才能を持っていて、その才能を覚醒させた私に、とても感謝してくれていて私を離してくれません。
このまま友達に付き合っていると、友達と共に私の悪役令嬢としての悪名は世界に轟くかもしれません。
う〜ん。因果応報。
私は……
何処で何を間違ったのでしょうか?
やはり私の頭はお花なのかもしれません
ギガ姫様からは逃げられない事など、私は良く知っていたはずなのにね……
頭がお花畑と言われた没落令嬢から悪役令嬢へなった貴女へ
【ギガ姫様からは逃げられない】
おしまい




