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87.サブカル

 タモツと落ち合うとせっかくなので王都の第二層の街へ繰り出した。


 俺がせっかくなら王都の夜の街の様子を知りたいから飲みに行こうと思うと伝えるとタモツも付いてくることになった。


 居酒屋は何軒もあったが、どの店がいいとかは分からなかったので手頃な大衆が使うような店を選んだ。

 初めは元の世界の話をしていたが、段々とこちらの世界での話になってきた。


「ビールの味はそんなに変わらないでござるな」


「俺はあまり飲まないから元の世界でもビールの味の違いなんて分からないよ」


「メーカーによってもちょっとずつ違うし、クラフトビールでも差が出るでござるよ。こちらの世界にはメーカーとかは無さそうでござるので、すべてクラフトビールだと思えばよさそうでござる。そう考えると他の店と味を比べてみたくなるでござるな」

 タモツはそう言いながらグイグイとビールを飲み干していく。

 タモツは酒に強かったし、万が一酔い潰れても宿もそんなに遠くないから大丈夫だろう。そんな風に考えながら酒があまり強くない自分は少しずつ飲んでいた。

 酒よりもつまみに興味があり、枝豆、串焼き、玉子焼きを注文した。串焼きは昼間に屋台で食べた方が美味しく感じた。


「それにしてもタモツはこっちでアイドルプロデュースまでしてて凄いな」


「与えられた役割がそうだっただけでござるよ。どうせならガルメロを拠点にオタクカルチャーを発信していきたいでござる。こちらは漫画やアニメの一次創作がないから二次創作の同人誌は作れないから、漫画やアニメの文化を普及させたいでござるな。それか王女様達の同人誌でも……」


「あまり過激なのを描いたら不敬罪で捕まるぞ」


「そうでござるな」

 そんな軽口を叩きながら二人で笑った。

 こんな風に笑うのはこちらに来て初めてだったので酒の力もありつつ楽しい時間が進む。


「漫画やアニメもあると楽しいけど、ゲームも欲しいなぁ。テレビゲームは無理でもボードゲームやカードゲームなら何とかなりそうだけど。キッタカールは田舎でそんな文化はなかったけど、ガルメロはどうだった?」


「異世界転生だと定番なチェスとかありそうでござるがガルメロも無かったでござるよ。ただ、ルールは分からないでござるが、対戦型のボードゲームはあったでござる。アイドルの準備でルールを覚えるどころでは無かったでござるが」


「やっぱりあるんだなぁ。ゲームは好きだからどんなものか気になる。そういう文化もキッタカールにも来て欲しいよ」

 俺もタモツもオタクなので、サブカルに相当する文化が広がって欲しい気持ちは一緒だった。


 そんな話で盛り上がり酒や食事も堪能したので一軒目を後にした。


「二軒目どうするでござるか?」


「コンカフェとかあるといいけど、無いよな。それなら風俗とか……」


「タロウ殿はエッチでござるな」


「風俗は王女達に何か言われそうだし、そもそもあるか分からないからキャバクラみたいなのがあればそれでもいいんだけど」


 俺は言い訳とも何とも分からないようなことを言って歓楽街がありそうな方向に進む。タモツも付いてくる。


 歓楽街らしきところに着くと雰囲気が少し変わった感じがした。王都の第二層だからそんなに危険は無いと思うが、夜の街にある独特な空気がある。


「ちょっと空気が変わったでござるな」

 タモツもそう感じていたようだ。


 そんなことを感じていると二人の男が一人の少年を路地裏に連れて行くのが見えた。関わるのはトラブルになりそうだしやめたいのだがタモツは助けに行くと言う。


「争いになってもこちらの世界ならタロウ殿も拙者も強いでござるから大丈夫でござるよ」


 そう言って怪しい人物を追いかけていく。


「しっかり払ってもらっておうか!!!」


「一杯飲んだだけでこの金額はおかしいでしょ」


「大人の世界は厳しいんだよ。親に頼んででも金持ってこい」


「僕、十分に大人なんだけど」


「十五かそこらの餓鬼が何言ってるんだ?!」


 二人組の男と奥にいる少年が揉めていた。


「何してるでござるか」

 タモツが声を掛ける。


「何だ、てめぇは? こいつが餓鬼のくせにうちの店で飲んでさらに金を払えないって言ってるから教育してんだよ! 関係ないおっさんはひっこんでな。それともこいつの代わりに払ってくれるのか?」

 男が伝票を俺達に見せてくる。

 金額は先ほどの店で俺とタモツが払った金額の十倍以上。明らかにぼったくりだ。騎士団はこういう店までは注意しきれていないのだろうか。

 ただ、この金額でもブラメロでの報酬があるので俺とタモツは今なら払えてしまうが、それは筋違いだろう。

 大事にはしたくないがやはり力で解決するしかないのか。


「いや、この金額は法外でござるな。払う筋合いはないでござるよ、少年」


「ごちゃごちゃうるせぇよ。この金額がうちの店の料金なんだ。お前からぶっ飛ばすぞ!」

 男が凄むと隣にいたもう一人の男が何かに気付いたようで耳打ちをする。少し聞こえてきた内容だと昼間に俺とタモツを目撃していたようだ。


「いやぁ、お兄さんたち、それは意地が悪いってもんですよ。王女様達や騎士団隊長方々と知り合いならそう言ってくださいよ。今日のところは無料ってことで。くれぐれも何も無かったことにしてください」

 男達はそう言ってそそくさと逃げていった。小物臭が半端ないが、明日にでもノエル達にはこのことは伝えよう。


「大丈夫でござるか?」

 タモツが少年に声をかけていた。


「うん、ありがとう。お兄さんたち、王女様や騎士団隊長と知り合いなんて凄いんだね」


「いや、それはたまたまで……」

 俺が言いかけると少年が被せ気味に話を続けた。


「でも、僕もフランやサクラと知り合いだから名前を出せば良かったかな? あー、名前出したくらいじゃ信じてもらえないか。やっぱりお兄さん達が来てくれて助かったよ。騒ぎにしなくて済んだしさ」


 少年はどうやらフランやサクラと面識があるようだ。

 見かけによらず凄いのかもしれない。

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