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84.パンけーき

 その後、ソーニャの店の本日売る予定だった商品はモニカが全部買取ると言い出した。


「モニカに全部買わせるなんて不本意だ。ボクも出すさ。何ならボクが全部買ってもいい」

 フランはそんなことを言っていたが、結局王女四人で払うことになった。


「こんなに大量の飴、どうするんですか?」

 ソーニャがモニカに聞いた。


「ソーニャの今日の売上げを奪う形になるのでその補填なのじゃ」


「それはありがとうございます。でも、そんなにたくさんあっても食べ切れないのではないですか?」


「さすがにこれだけの量は食べられないのじゃ。だから、これは街を騒がせてしまったお詫びに子供たちにタダで配るのじゃ」

 モニカの案に他の三人は賛成していた。

 この国の王族が民から慕われているのはこういう所が理由なのだろう。


「子どもたち、集まるのじゃ」

 モニカはそう言って子供を集めるが、集めているモニカも子供にしか見えなかった。


 ソーニャの店の品を配り終えた俺達はソーニャも連れて王宮に戻った。

 俺は話したいことがあるとメルチェに伝えてもらって謁見の間で二人にしてもらった。


「女王様、これ、なんですか?」

 俺はソーニャから借りたレシピ本をメルチェに見せた。


「アレックスの能力の本だな」

 メルチェの返事はあっさりとしたものだった。


「能力の本って……」

 俺は少し呆れた感じで返事をした。


「まぁ、そう呆れるな。アレックス本人の話だが、最低限の戦闘能力しかないが他のことには長けている。この本もその他の能力の一つでな、自身の知識を簡単な書にして渡すことができるのだ。それで各地を回っている時にそれを活用できそうな人に渡しているのだよ」


「そんなことしたら彼が転生者ということがバレてしまいませんか? それにこちらの世界に無い技術が広まったら均衡が崩れてしまうのではないですか?」


「そこは心配していない。アレックスも人を選んでいるはずだ。それに何か外部からの刺激があった方がこの国の発展も一気に進むと考えている」


 メルチェの言うことも分かるがその考えは少し危うい気もした。

 それとアレックスの本を作る能力。これは簡単に言っているが凄いことだ。キッタカールでは学校で教えたくても紙も貴重なので四苦八苦しているのに、本を作れるなんて羨ましい。


 ただ、アレックスの能力や活動はメルチェの把握している範囲なら問題ないだろうと思い話はこれだけになった。


 夕飯の時間になった。

 メルチェと残った五人の王女達以外は俺とタモツ、プロシパだけ呼ばれた。

 隊長達はこういう場には同席しないようだ。城のすぐ近くに騎士団本部の隊舎があり、そこに滞在していると聞いた。


 夕飯は豪華で美味しかったのだが、肉料理中心のガッツリしたものとかではなく食べやすく健康重視だった。

 やはり女性、というか王女達の健康に配慮しているからなのだろう。確かに俺には少し物足りなく感じるがこれくらいが身体にはいいのかもしれない。しかし、味は本当に良くこの世界に来てから一番美味しいものを食べた。それは隣にいるタモツも同じようだ。


「では、いよいよ最後にモニカが連れてきた料理人の料理だな」

 メルチェがそう言うとソーニャが現れた。王女だけではなく女王もいるのだ、緊張しているのが見てわかる。


「はい、料理というよりは食後の"でざーと"という甘味になります。私ひとりでは分からない部分はそちらにいるタモツ様に手伝っていただきました」

 ソーニャが調理する間、俺はメルチェのところに行っていたので代わりにタモツが手伝ってくれていたのだ。


「こちらが"パンけーき"になります」

 タモツが教えてくれたのだが、この世界にもパンはある。でもケーキが無い。ケーキを作るにはスポンジから用意しないといけなかったが、それはできなかったのでパンケーキにした。本当は小麦粉よりも薄力粉を使いたかったが、それも無かったのでそれっぽくホットケーキにした。生クリームは砂糖と牛乳が有ったのでミキサーは無くてもタモツの魔法で強化した身体でミキサーの代わりになり作ったと聞いた。他の細かいはところはどうやったのか分からないが、料理が苦手な俺だとそこまでカバーできなかったのでタモツがいてくれて助かった。


「美味しいのじゃ」

 モニカが声を上げた。タモツが言うようにあるものを組み合わせただけでも美味しく仕上がっている。

 元の世界でもそんなにケーキ、ましてやパンケーキを食べる機会など少なかったが、これはそれっぽくできているのではないだろうか。


「これは確かに美味しいな。食後に食べることで満足度を上げるというのも分かる。だが、まだ改良していく余地はありそうだな。ソーニャとやら、どうだ、王宮料理人になってその腕を磨いてみるのは?」


「本当はプロントに来て欲しいのじゃが、今は復興中であまりいい環境を用意してあげられないからの。ソーニャが良ければここで腕を磨いて、またうちが来た時に食べさせてくれたら嬉しいのじゃ」


「はい、そのお話、ありがたく受けさせていただきます」

 ソーニャは泣きながら喜んでいた。


 エミルの奪還の時も思ったように王家の一言で一気に出世できるのはこの世界の醍醐味である。

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