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83.甘味

「フランもピラクもずるいのじゃ。うちも魔法石でかっこいいところを見せたいのじゃ」

 次の店に移動しながらモニカは文句を言っていた。


「別に魔法石の修復なんて石と魔力が合っていたらあんたにもできるわよ。落雷石はまだ研究が足りないし量も少ないんだから仕方ないじゃない」


「そうなのじゃが……なんか悔しいのじゃ」

 ピラクの慰めもモニカにはあまり効果は無さそうだった。


「モニカ様の雷の魔法は俺のいた世界だと凄い力があって様々な場面で使われていましたよ。研究が進めば落雷石もそうなるのではないでしょうか?」


「タロウはやっぱりうちのことよく分かってくれているのじゃ」

 俺の助け舟にモニカが喜んで腕に絡みついてきた。


「モニカ様が男の人にくっついてる」


「あれが国王候補?」


 すれ違う人達がそんな声を出す。


「こら! モニカ! ダメでしょ!」

 ノエルがモニカを引き離す。正直、この往来で王女に絡まれると困ってしまう。


 今、俺達は最後に甘味を探している。

 いわゆる食後のデザートというやつなのだが、メルチェに食べさせ過ぎと怒られないか心配になる。

 俺は平気だが、麺に串二本、甘い物まで食べさせて王女達が夕飯を残さないか気になってしまった。


 なかなか惹かれる店が無くてこのまま食べずに王宮へ帰ることも考えていた時にモニカが一件の店に目を付けた。


「ここは美味しそうなのじゃ」

 モニカが示したのは果物を飴で固めたものを売っている屋台だった。リンゴ飴みたいな感じだ。


「えっ? 王女様?」

 店主がまた驚いている。


「そうじゃ、第七王女のモニカじゃ。そなたの店のものを売って欲しいのじゃ」


「いえいえ、ここに売っている果物は王宮に納めるような上質なものではありません」


「別にいいのじゃ。今、ここで売っているものをたべたいのじゃ。毒が入っているわけではなかろう?」


「もちろん毒など入っておりません」


「ならば十人前、売って欲しいのじゃ」


「かしこまりました」

 店主はモニカとのやり取りの後、商品を渡してくれた。

 色んな種類があったが、俺は真っ先に浮かんだリンゴ飴のようなものを選んだ。


 これも美味しかった。麺と同じようにこの一年甘味もほとんど食べることができなかったので、糖分が一気に補給された感じがする。


「美味しいのじゃ!」


「ありがとうございます。でも、王宮に納められる果物に比べたら味は落ちると思いますが」


「王宮の果物は確かに美味しいけど、こんな風に飴で固めてあるわけじゃないからね」

 ピラクも満足しているようだ。


「それにうち達はみんなそれぞれに地にいるからのぉ。そんなに美味しい果物は食べられないのじゃ」


「も、申し訳ございません」


「責めるつもりで言ったわけじゃ。気にしないで欲しいのじゃ」

 モニカと店主のやり取りの通り、キッタカールも果物は採れてもそんな上質なものでは無い。だからこそ上質なものは国として貴重なのだろうが。


「それにしてもそなたの飴を固める技術は凄いのじゃ。何か特殊な技術を持っているのじゃ?」

 モニカが褒めている。


「いえ、そういうわけではなくて。私も王都出身ではないのですが、最近王都へ参りました。故郷を出る時に私が王都で甘味の屋台を出したいという話をしていると旅の方が『参考にするといい』と一冊の本をくださりました。それは"でざーとれしぴ本"というのですが見たこともないような甘味が書いてある料理書でそれを参考にしています。ただ、他のものを作るには食材が高価でなかなか作れないのですが、いつか作ってみたいですねぇ」

 店主は夢見る少女の表情だった。だが、俺はそれ以上に気になることがあった。


「そのレシピ本、見せてもらえますか?」


「いいですよ。こちらです」

 店主は空いている時間に読めるように持ってきていた。

 内容は元の世界にあるデザートを作るためのレシピ集だった。著者はアレックスとなっている。彼はこんなものも作って広めるのだ。目的は何なのだろう。


「タロウ様、どうかされました?」

 本を持ったまま固まっていた俺にノエルが心配そうに声をかけてきた。


「すみません、この本は転生者が書いたものみたいで……悪いものではないので、ここに書いてあるものが再現できればとても美味しいものが食べられると思います。でも、何のためにこんな本があるのかと考えてしまっていました」


「そんなことは女王様に聞けばいいのじゃ。それよりもこの本に書いてあることを再現できれば美味しいものが食べられるのじゃな。そなた、名前はなんじゃ?」

 モニカが言う通りこれを見せたらメルチェは説明してくれるかもしれない。


「ソーニャと申します」


「ソーニャ。この本のもの、食材があれば作れるのか?」


「はい……いや、いえ……ちょっと分からないこともあるので完璧にできる自信はありませんが……」


「うむ、分かったのじゃ。そなたはこの本を持ってうちらと王宮へ来てこの本にあるものを作るのじゃ。分からないことは、このタロウが手助けしてくれる」

 モニカの無茶振りが始まった。

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