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82.串焼き

 海鮮串の次は海鮮以外の串焼きの屋台に来た。

 鳥、豚、牛が食べられるようだ。


 ゴルド王国はランダの西の領から王都を経由してリエスの南東の領まで穀倉地帯になっていて、さらには畜産も盛んで王国の職を支えているそうだ。

 キッタカールのように自分たちだけで食べる分だけ育てているところもあるが、王都のような大都市が自給自足するのは難しい。そのためランダやリエスのような土や植物に干渉できる魔法は重宝され食を支える役割を担うのだ。


 先ほどの海鮮串の店主から海鮮ではないオススメの串を教えてもらったのだが人気店のようで客が並んでいた。


「やっぱり人気店はこちらの世界でも並ぶのですね」

 俺は月並みな感想しか言えなかった。


「ボクが言えば食べられるだろけど、それはタロウの本意ではないのだろう」


「えらいわね、フラン。ちゃんとそういうのも分かるようになったのね」


「ボクも成長するのさ」

 フランが意外にしっかりしたことを言ったところをノエルが褒めていたが、フランはそこでドヤっているがそこはまだまだ子供っぽい。


 だが、そんな話をしていると店も並んでいる客も王女達に気付いてしまう。


「あれって?!」


「王女様たちが第四層に来てるって言ってた人がいたけど本当に来ていたんだ」


 並んでいる人達がそんな風に騒ぎ出す。


「騒がしてしまってすまない。横入りするつもりとかはないから気にしないでくれたまえ」

 フランはそう言って店の前を通り過ぎようとした。


「ちょっとお待ちください」

 店主が通り過ぎようとする俺達をを呼び止めた。


「王女様方、うちの店のものを食べてくれようと来てくれたんです。せっかくなら食べていってもらえませんか?」


「だが、これだけ先に待っている人達がいるんだ。ボク達が王女だからといって横から入るのは筋違いだ」

 フランが店主の言葉にそう対応した。


「なぁ、みんな! 今日は割引にする。だから、王女様方に先に食べていただいても構わないか?!」


「おぉ、いいぞ! こんな機会ないだろうからな!」

 店主の呼び掛けにそんな声があちこちから上がった。


「それなら、その好意に甘えさせてもらうとする。店主よ、すまないがボク達王女四人分だけでなく、もう一本そこにいる冴えない男の分も融通してくれないか?」

 フランが俺を指差して言った。確かに俺の視察が目的だから、そう言ってくれるのは助かる。フランも一応目的は覚えてくれていたのだ。


「へぇ、それは構いませんが……」


「あの男は誰?」


「騎士団隊長じゃないよな?」


「王女様にあんな風に言われるなんて何者なの?」


「まさか次の国王候補?」


「あんなおっさんがか?」


 フランの言葉に周りの人が騒つく。俺もその気持ちは分からなくもない。

 モニカが余計なことを言わないか心配したが、何も言わなかった。こういう時は空気が読めるのだろうか。


「はい、お待たせしました。五人分です」

 店主はそう言って牛肉串を五本渡してくれた。

 フランが一本を俺に渡してくれて、それを食べる。


 美味しい。肉は屋台に出るものなのでそこまで上質なものではないと思われるが、それでも固すぎず食べやすかった。それと何よりタレが美味しかった。外で食べているから美味しさを増して感じているのかもしれないが、これは人気が出るのが分かる。


「さすがだ。美味しい。だが、タレだけではないな。火炎石を上手く使って肉に火が通る工夫をしているだろう?」


「フラン様のおっしゃる通りです。ここら辺に出回る肉を美味しくするには何か工夫をしないといけないのですが、うちは火炎石で火力を調整してます。魔道具は高くて買えないので安い火炎石を使い回してますが」

 店主はそう言って水に浸してある火炎石を見せてくれた。火力を調整するために火炎石で熱を吸わせて熱くなり過ぎたら水で冷やして何個かを使い回しているとのことだった。


「今使っていない火炎石をボクに貸したまえ! うわっ、やっぱり水はちょっと苦手だなぁ……」

 フランはそう言って水に手を入れる。火の魔法使いだからか水が苦手なのだろうか。フランは自分で石を出そうとして水に手を入れながら意外な一面を見せていた。


「ちょっとみんな離れてくれたまえ」

 フランはそう言って人を遠ざけた。

 フランは人が離れたことを確認して火炎石に魔力を込めて、そのまま割った。


「あぁ……」

 それを見た店主の嘆きが聞こえた。

 水石よりも高価な火炎石を割られてしまったのだ。相手が王女なだけに文句も言えない。俺はこの後の展開が分かるが店主は分からないだけに今は少し気の毒だ。


「案ずるな。見ておれ」

 フランは割れた火炎石に魔力を込める。みるみるうちに石は再生し綺麗な赤い玉になった。


「ほらっ、ボクの魔力を込めた火炎石だ。どれだけ火を吸っても割れることはないぞ。使うがいい」

 フランはそう言って店主に魔力の籠った火炎石を渡す。


「えっ……いや、あの……こんな高価なもの受け取れません」


「気にするでない。店主がボク達に食べさせてくれたお礼だ。これからもこの火炎石を使って国を盛り上げてくれたまえ」


「ありがとうございます! これは大切に使わせていただきます」

 店主はそう言って深々と頭を下げた。


「ピラクよ、ボクだって魔法石の修復くらいできるんだから」


「分かってるわよ。あんた、まさかこれをするために火炎石を壊したの?」


「ち、違うよ。別に魔法石の修復を見せつけたいためにやったわけじゃなくて……ほら、ちゃんと感謝の意を示すためにやったんだ!」


「ふーん、それならいいけどね」

 俺はピラクのフランへの指摘が案外的を得ているように思った。

 第一王女は力はあるのだろうが上手く人にアピールできないことをフラン自身もどかしく思っているのかもしれない。

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