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78.通信石を重ねる

「うちの通信石と魔力の交換をするのじゃ」

 モニカならそう言うとは思ったが、ちゃんと俺が持っていることを聞いていて魔力をお互いの石に入れることで話せるようになる仕組みを理解してるのは偉いと思った。

 俺が新しい技術を説明された時にこんな風に一度と説明で理解できるか自信はない。


「モニカ様。女王様の説明の通りこれは便利な道具です。でも、それは厄災に対応するために王女様達に渡されているものです。遊びじゃないのですよ」

 俺は威厳を持って伝えたつもりだった。


「うちもタロウと情報交換するのじゃ」


「それならモニカ様と情報交換すれば事足りますよ!」

 他の王女たちもいる手前、今回はここで譲ったらいけない気がする。


「モニカ、それにタロウ。ちと、こちらに来るのだ」

 俺たちはメルチェに呼ばれた。


「ほら、怒られますよ。モニカ様と俺の通信石は没収になりますよ」


「うぅ、それは嫌なのじゃ」


「ほら、二人の通信石を渡すのだ」

 メルチェは本当に俺達の通信石を取り上げるつもりなのか。冗談だったのに。俺はともかくモニカは困らないか?


「ほら、残ってるフランとピラク、ミネスにノエルもこちらを見なさい」

 メルチェは俺とモニカの通信石を重ねた。

 先ほどの魔力を込める行為で忘れていたが、それぞれの魔力が籠った通信石を重なることでお互いで通信できるようになるのだった。


「こうやって魔力の籠った通信石を重ねることで通信できるようにもなる。覚えておくように」


「没収じゃないのじゃ?」

 モニカが疑問に思ってメルチェに聞いた。


「そんなことするものか。使い方の説明にちょうどいいと思って使わせてもらったのだ」

 メルチェは笑いながら俺に通信石を返してきた。これはやられたな。


「ねぇ、それならシノブも私と通信石重ねようよ」

 ミネスの提案にシノブは意外な顔をしていた。


「あなた、女王様からの指令でまた国内を飛び回るのでしょ? それだとなかなか話せないでしょ。あなたはジーアールのメンバーだしいつでもガルメロに帰ってきてもいいのよ。というか、たまには顔出しに来なさいよ。それに全部落ち着いたら"あいどるらいぶ"するんでしょ?!」


 ミネスとシノブは通信石を重ねた。

 シノブは少し照れているのか嬉しそうにして、頭を下げ次の任務に向かった。


「いいでござるな。拙者もタロウ殿と話したいでござるよ」


「そうね、あなたたちは元の世界で友達だったんだものね。タロウ、私とも通信石を重ねておいてよ。タモツが話したい時はこれを貸すから」

 意外な形でミネスとも連絡先を交換した。


「ねぇ、タロウ。私とも交換しなさいよ」

 こうなるとピラクも通信石を重ねたくなるようだ。


「あんた、その顔、何で私と通信しないといけない? とか思っているでしょ。落ち着いたらアキアンに招待してあげるから交換しておきなさいよ。この国一番の観光地よ。楽しみにしてなさい」

 よく分からないまま俺の通信石はミネスに取り上げられた。


「ボクも重ねてやろう。光栄に思え」

 フランもついでに重ねていた。フランこそ理由がよく分からない。


「フランは理由が分からないからダメなのじゃ!」

 モニカが俺の心を代弁してくれた。俺はさすがに王女にそのツッコミはできない。


「もう遅い」

 フランは素早く重ねてモニカにそう返した。


 この流れだとノエルも言ってきそうなものだが、俺はキッタカールの住人なわけでわざわざ通信石で連絡を取る必要がないと思っているのかもしれない。やはりノエルはしっかりしている。


 そんなやり取りをしていると俺の腹の虫が鳴った。

 昼前からこの部屋での話が始まったから昼食を食べていなかったのだ。


「そういえば昼食を取っていなかったな。王宮の料理人に頼めば何か作ってもらえると思うが」

 メルチェは俺に提案してくれた。


「お心遣いありがとうございます。ただ、昼は王都の屋台を見て勉強させていただきたく外周まで行こうと思っていました。王宮の料理は夜もいただけると伺っておりましたので、昼はキッタカールでも取り入れらるものを探せたらと思ってました」


「それなら王都の中なら安全だろうし、しっかり学ぶといい。ただし、食べ過ぎないように。夕飯が食べられなくならないように」


「承知しました。では、行って参ります」


「王都の案内が必要じゃな。うちが案内してやろう。ラフィッカ、馬車を用意するのじゃ」


「モニカ、悪いわよ。キッタカールのことだから私が案内するわ。モニカは王女宮で休んでていいわよ。クリス、馬車をお願いするわ」

 モニカが乗り出して来たところにノエルが制する。

 王女宮は確か王女達が王都で過ごすための家があるってガルメロからの馬車の中でミネスが教えてくれていた。


「そう言われると仕方ないのじゃ。うちもそれに付いていくのじゃ。ミネスとピラクはどうするのじゃ?」

 モニカは他の王女を誘った。一人抜けてるけど。


「なぁんで、ボクの名前が無いんだ! ボクも行くぞ」

 フランも付いてくるそうだ。


「私はごめん。ナズマとタモツと第二層と第三層でガルメロに役に立ちそうなものを探す予定なんだ。観劇までする時間は無いけど、楽器や画材を見たりする時間が欲しいなって思ってて」

 ミネスはガルメロのことを考えて三人で行動するようだ。確かに行きの場所でもそんな話をしていた。こちらの芸術な道具を俺は知らないので、ミネス達の行動も楽しそうでそちらも気になってしまう。


「私たちはどうするのよ?」


「王女宮にいても退屈だしついて行こうかな。タロウよ、屋台のことならこの中なら私やプロシパが詳しいわよ。アキアンは観光地で海の近くは屋台がたくさんあるからね」

 海の家や祭りに出ている出店みたいなものがきっと盛んなのだろう。想像するだけで楽しそうだ。


「大所帯で行くのは構わないが、あまり王都の民に迷惑をかけるでないぞ。特にフランとモニカ。それと夕食の集まりまでには必ず戻るように。分かったな、フラン、モニカ」

 メルチェから見てもフランとモニカが問題児なのだろう。


「モニカ、言われてるから気を付けるんだよ」


「フラン、女王様に言われたことをしっかり守るんじゃぞ」


 フランとモニカはそれぞれ相手が一番の問題児と思っているようだ。

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