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65.芸術の都 ガルメロ

 馬車の中は俺とナズマは二人だけだ。


「ガルメロのことはどれくらい知ってますか?」


「芸術が盛んだ、って話しか知りません」

 ナズマの問いに俺はこう答える。


「その通りです。ゴルド王国内で一番の芸術の都です。その面では王都よりも栄えていると思います」

 ナズマは自身満々に答えたように見えたが、本音は違うようだ。


「一次産業が盛んなけでもなく活気はあるのですが、逆に言うとそれしかないんですよね。実は騎士団も戦闘要員というよりも騎士団の中でも祭典などに出演する楽隊などを育成する面が強いのです。平和なのですが、どこかフワフワした街なのでキッタカールやプロントみたいに大型魔獣が出たら対処できないかもしれません。もっと危機感を持って欲しいと常々思ってます」

 ナズマの話は意外な話だった。確かに今まで平和だからといって今後はどうなるか分からない。実際にキッタカールもプロントも少し噛み合いが悪かったら危なかった。


「でも騎士団もいることだし、そんなに悲観的にならなくてもいいのではないですか?」


「それもそうかもしれませんね。ただ、ミネス様は王女の中では一番直接戦闘に向いてないので心配なのです。騎士団も最低限の訓練は行なっているので戦闘は可能ですが、楽隊なので他の隊よりは戦力とどうしても劣ってしまいます」


「ナズマさんは隊長ですし、何か魔法があるのでは?」


「僕の魔法もあまり直接戦闘向きではなくて、相手がいるといいのですが……モニカ様のような方がいると本領を発揮できるような魔法でして。馬車の中だと難しいのでまた後ほどお見せしますね」

 ミネスとナズマの魔法はどんなものなのだろうか。補助魔法のような形なのだろうが、気になる。


「それと魔獣も気になりますが、実はもう一つガルメロには不安要素がありまして……タロウさんにはそちらも注意していただきたいのです」


「不安要素?」


「ガルメロは芸術の都とはいえ、その繁栄は王国の力だけで成し得たものではありません。貴族のヨーンいう男が莫大な私財を投入して、音楽や絵画、演劇と発展させてきました。有名になったものだけではなく、無名でも才能ある若者にも投資をしていて今や民の人気はミネス様以上とも言われています」


「それはミネス様には耳が痛い話ですね」


「ミネス様はあまり気にしていなくて、むしろヨーンの提案を聞いてもっとガルメロが栄えることを望んでいると思います。私が懸念しているのはヨーンがミネスを操りガルメロを全て掌握することです」


「分かりました。気にしておくようにします」

 俺はそこまで心配しなくてもいいような気もしたがナズマは本気で心配しているようなので話を合わせる。


「それと今、ミネス様とヨーンが進めてる"あいどるぷろでゅーす"というのも気がかりでして。ガルメロにはタモツという転生者がいるのですが、その者もそれに関わっていて、何か良からぬことをしてなければいいのですが」


 ナズマの話を聞く限りガルメロは色々な要素が複雑に絡んでいそうだ。

 もし裏で政治的な駆け引きが行われていて街が不安定な時に大型魔獣に襲われたら対応できないかもしれない。

 それとタモツという転生者も気になる。

 あとは顔を知らないシノブというメルチェお抱えの転生者にも接触しないといけない。

 ガルメロには到着したらやることが多そうだ。

 こちらの世界で約一年過ごしていたから多少は知識が増え勝手も分かるようになったが、これが転生してすぐの出来事だと対応できていたか分からない。


 その後、他愛のない話をしてその夜の泊まる村へ到着した。


「昼間、馬車でお話した僕の魔法を見せますので、ちょっと広いところへ行きましょう」

 ナズマが誘ってきた。

 村の外の広い場所へ行くことになった。


 夜に宿泊地で魔法を見せてもらうのは転生したその日の夜のノエルとの出会いを思い出す。


「タロウさん、何か魔法を唱えてもらえますか?」


「何でもいいんですか?」


「はい、周りに迷惑にならないくらいの威力でお願いしますね」

 ナズマが悪戯っぽく笑う。こういう表情は女性的で一瞬惹かれてしまいそうになる。


「ウォーター」

 キッタカールの時のピラクの水鉄砲を真似して水の魔法を放つ。火の魔法だと草木に火が移って火事になっても面倒なので、水の魔法を放つことにした。


「ウォーター」

 ナズマが俺の声真似をして同じ魔法を同じ威力で放った。


「それは?」

 ナズマは俺の魔法を真似たようだった。


「はい、僕の魔法です。ある程度の威力の魔法までは真似して使うことができます。自身の力量を超える魔法はできません。あとは、例えばノエル様の魔法の手のように僕自身が認識できない魔法や、ピラク様の船の召喚のような特殊な魔法もできません。でも、詠唱で発動するモニカ様の落雷撃は真似できます。ピラク様も船の召喚は無理でも水流斬は真似できると思います」


 確かにこれは馬車でナズマが話した通り一人では戦闘に向いていないかもしれない。それでも、ある程度まで真似して魔法が使えるのは凄いことだ。出来ることの範囲が広いのは魅力的だ。


 そういえば今ナズマが話の中で言ったピラクの水流斬、俺もピラクの使うのを目の前に見たし水の適性もありそうなので真似したら使えるかもしれない。

 ここだと的になるものが周囲にないので試しに軽く地面に向けて放ってみる。


「水流斬」

 ピラクの使った魔法をイメージして俺は手を振ってみた。ピラクほどの精度は出ないが、それっぽい感じにはなったのではないだろうか。


「水流斬」

 ナズマも真似していた。


「タロウさんも真似して魔法が使えるのですか?」


「いや、そういうわけじゃなくてナズマさんの話を聞いて、この前のキッタカールの戦いのことを思い出してピラク様の真似してみました。流石にピラク様のような切れ味の鋭いものはできませんでしたが」


「それでも見ただけで使えるのは凄いと思います。ガルメロでもよろしくお願いしますね」

 ナズマは何か起こるだろうと予測しているようだった。


 夜、一人になってからステータスを確認してみると水流斬がスキルに追加されていた。

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