64.転生生活、二年目の始まり
年が明け一月になった。新しい一年の始まりだ。
大型魔獣と魔人との戦いの後は大きな事件もなく冬を越すことができた。
あの後、モニカ、ピラク、リエスは無事に帰路についた。モニカやピラクはまたね、くらいの挨拶であっさりしたものだったが、リエスがなかなかキョウヤから離れなかったのには驚いた。モニカなどは俺には会おうと思えば会えるという心理が働いているのだろうが、キョウヤはある意味根無し草だ。次、いつ会えるかもどこで会えるかも分からない。離れたくない気持ちも分かる。
「あの……タロウ様……あまりキョウヤ様を……独占しないでくださいね……」
リエスは帰り際にこんなことを言っていた。ゆるふわ森ガールだったのにストーカー少女になってしまいそうで恐ろしい。
「新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
ノエルから年明けの挨拶をされた。こういうのはこの世界も共通のようだ。
「新年明けましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします」
という挨拶をしたものの、俺とノエルは新年早々に少しの間離れことになっている。
「ちゃんと帰ってきてくださいね」
戦地にでも送り出すような感じになっているがそうではない。
「大丈夫ですよ。女王様の指令で南西で芸術文化を学んでくるだけですから。キッタカールでも音楽とか楽しめるようにします」
これは表向きの理由だった。もちろん吸収できること学んで帰ってくるつもりではいる。
キョウヤの話を聞いて王女達やキョウヤを送り出した後にメルチェに報告した。
「それならタロウも南西に向かってくれ。冬の移動は大変だと思うので今は準備を整えておくように。私の方でも年が明けたら視察ということでタロウをガルメロに怪しまれずに入れるように手配しておく」
とメルチェに言われた。その時に南西の街の名前も知った。
俺の転生生活の二年目は転生したキッタカールではなく新天地のガルメロで始まることになる。
行きはハーピーに王都を経由しながらガルメロへ送ってもらう。帰りはどうするかは決めていない。
王都ではメルチェに挨拶をしつつ書状を受け取る手筈になっている。
「明けましておめでとうございます、女王様」
「今年もよろしく頼むぞ」
俺の挨拶にメルチェはそう言った。今年は平穏に過ごしたいが早速新しい土地に回されるわけで、平穏とは遠そうな幕開けになりそうだった。
「ガルメロへは問題なく入れるようにしておいた。王女であるミネスにもよろしくな。それとシノブもガルメロにいるようだから上手く連携を取ってくれ。タロウのことも伝えてある」
シノブもガルメロにいるのようだ。益々、何か起こりそうな予感しかない。
「そういえば王都からは騎士団と共に向かうんだったな。南西隊の隊長が来ているから彼が同行してくれる。ガルメロのことも道中聞くといいだろう」
「承知しました。ありがとうございます」
「気を付けていくのだぞ。何も起きないことを祈っているぞ」
メルチェはそう言って俺を送り出してくれた。でも、その言葉はフラグだよな、と思ってしまう。
城の外へ出ると南西の隊長ナズマが待っていた。
「タロウさん、お待ちしてました」
南西の騎士団隊長はとても中性的な男だった。整った顔に綺麗な髪、身長もそんなに高くない。女性って言われたらボーイッシュな人だな、そんな風に思ってしまいそうだった。
「お待たせしてすみません。女王様から話は聞いてます。これから短い間ですがお世話になります」
「タロウさんも僕のこと女性みたいって思いましたか?」
「あっ、いえ、すみません。あまりにも綺麗で見惚れてしました」
ナズマに心が読まれているみたいだ。
「ありがとうございます。よく言われるのですが、意識してやっているので認められたみたいで、むしろ嬉しいです。こんなところで立ち話も何ですから早速馬車で移動しましょう」
俺はナズマに案内されて馬車に乗った。ここから までは馬車で四日くらいかかるらしい。
「狩人さんみたいに移動できたり、ハーピーや鳥人のように空中で移動できたりすればいいのですが、すみません」
「いや、大丈夫ですよ。こちらこそわざわざ隊長に送っていただき申し訳ないです」
「そんなかしこまらないでくださいよ。これから一緒にガルメロで起きている問題を解決していくんですから。仲良くしましょう」
ナズマはそう言った。
転生者がいるということは何かしらトラブルが起きているのだろう。正直、そこに転生してきた人間で解決して欲しいところだが、自分もメルチェに何かあるかもしれないと報告したからには巻き込まれるのも仕方ない。
俺はナズマにガルメロについて現状についての説明を頼んだ。




