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62.バーベキュー

 その夜はキッタカールでは初になるような祝勝会が開かれた。さながらお祭りのようだった。


 大量の魔獣の肉が手に入り村人全員に振る舞うことになり準備に大忙しいになった。

 俺はドワーフ達に鉄鉱石を平たく伸ばしてもらい大きな鉄板を作ってもらうようにお願いした。オーク達にはその鉄板を支える土台作りをお願いした。その他の手の空いてるものには鉄板の下で燃やせるような金屑や枯葉を集めてもらう。

 今までは少しずつしか焼けなかった肉をバーベキューの要領で一気に焼くという魂胆だ。


「ほう、この巨大な鉄板で肉を焼くつもりなんやな。バーベキューみたいで楽しみや。ほな、肉を捌く人手も足りんやろうし手伝ってくるわ」

 キョウヤは転生者だけあって俺がやりたいことが伝わったみたいだ。


 ドワーフ達は酒もできるだけ提供してくれるということだ。あとはお茶とかあればいいのだが、そういうものは残念ながらない。水だけだ。お茶の育成、リリとかに相談すれば今後はできるのかもしれない。子供たちにはミルクを提供してあげることになった。

 バウワーにミルクの話をしに行った時に聞いたのだが、バウワーは大型魔獣の戦闘の最中、魔法を使って動物達が騒ぐのを抑えていてくれたとのことだった。

 だが、こんな騒動に巻き込まれて怖くなかったか、と聞いたから離れた場所でこういう目に遭うくらいならこうしてみんなで戦える方が安心だと言っていた。

 それぞれができることをやっていたから、今回の脅威を退けることができたのだと思う。バウワーの言う通り、これからもみんなで村を守りたい。


 そして、俺はバーベキュー以外にもキャンプファイヤーの準備をした。冬になってきたので外で騒ぐには寒さをどうしても感じる。灯りも兼ねてできるだけ多くの火を起こすことにした。これもみんなの協力がないとできない。


 今回は村の入口付近に会場を設置することになった。脅威は去ったとはいえ、外への警戒は怠ることはできない。そんな警備をしてくれているブライやゴブリン達にも食事を振る舞うためだった。

 リエスが村の木製の門に魔法を掛けてくれた。気持ち程度と本人は言っていたが心強い。


 夜になり祝勝会が始まった。

 ノエルが村のみんなの頑張りを褒め称えると、拍手や歓声が上がった。

 ノエルの言う通りだ。先ほどのバウワーの話だけでなく、鉱山で働いている人間が鉱石を提供してくれているからモニカの魔法の威力を強めることができたのだ。全員が自分自身にできることをやった結果なのだ。全員、喜びを分かち合いたい。


「タロウ様、ありがとうございました」

 ノエルが挨拶の後、俺のところに来てくれた。


「いや、今回もノエル様が挨拶でおっしゃっていた通り全員の頑張りのおかげですよ」

 バウワーの話も伝えておいた。みんなの頑張りなのだ。ノエルも喜んでいた。


「それで、あの一つお願いがございまして」

 ノエルが少し言いにくそうにする。嫌な予感もする。


「あの、モニカだけでなく私も様付けを無しで呼んでもらえませんか?」

 ノエルもあの時の呼び方を気にしてたのか。ただ、モニカのように直接命を救ったとかではないので、俺はノエルにここまで気に入られていることがあまりよく理解できていなかったりする。


「あれはこう間違えてというか、戦闘中だったので必死だったので……」

 俺は言い訳するしかなかった。


「じゃあ、あの時のことは戦闘中だったからなのですね? それなら先ほどのモニカの命令は聞いたらダメですよ」

 ノエルはそう言った。ノエルはこの村の王女だ。村の他の者にも声を掛けたいので次のところへ行くと言い離れて行った。


 祝勝会の様子を見回すとみんな楽しそうにしていた。酒を飲める者は飲んでドワーフ達は満足そうにしている。

 モニカとピラクは村の子供たちに声を掛けられていた。二人とも上手く接しているようだ。この国の王女の教育は民に寄り添う方針なのかもしれない。ノエルと湖に行った時のことを思い出した。

 キョウヤはやはり色んな人に声を掛けられていた。三大転生者の有名人だ。武勇伝を聞きたい人も多いのだろう。俺はあまり興味はないのだが、リエスはキョウヤに興味を持ったのか好意を持ったのか、特に話をするわけでもないのにずっと後ろにくっついている。リエスが女王になったらキョウヤが国王になりそうだ。メルチェも狩人くらいの年齢ならって初めて会った時に話してたし、ちょうどいいのかもしれない。


「あの子、ずっとキョウヤにくっついているわよ。大丈夫なのかしら」


「ピラクも行ってくるといいのじゃ」


「なんでよ。キョウヤはちょっと目つきが怖くて苦手なのよ」

 子供達から解放されたピラクとモニカが寄ってきた。今回、二人がいてくれて本当に助かった。


「二人の連携技のおかげです。ありがとうございました」


「まぁ、私が何もないところにあれだけの水を発生させられたからなのよね」


「もう高飛車なピラクはどうでもいいのじゃ。そんな固い言い方じゃなくて普通に話をするのじゃ」


「何よ、高飛車って。だいたいモニカの雷の威力が足りないのよ」

 こんな風に言い合ってるのは仲がいい証拠なんだけど、俺を巻き込まないで欲しい。遠くからでもクリスの目が何となく怖いのが分かるから。


「ちょっとぉ、王女ばかり構わず私も構いなさいよ。何もできなくていじけちゃうわよ」

 この酔っ払いは誰だ、と思ったらエミルだった。

 王女達はまだ飲酒できない年齢なので当然酒は飲んでない。やっぱりしっかりしている。

 逆にエミルは俺と同じくらいの年齢なので飲酒可能だ。酒を飲むことに問題はない。ただ、こんな酔って絡むようになるとは思ってなかった。

 いや、この人、悪酔いんじゃないのか? 誘拐された時、借用書がどうこう言っていたけど確か酒場で書かされてって聞いていたし、この状態をつけ込まれたとしか思えないのだけど。そうだとしたら自業自得だし、王族としてどうなのだろう。


「エミル様、失礼します」


「エミル様、失礼するのじゃ」

 ピラクとモニカは逃げていった。あなた達の叔母に当たる人だと思うので何とかして欲しかった。


 祝勝会は夜通し行われるわけではなく、キリがいいところで明日のこともあるので終わりになった。ここら辺も文化の違いを感じる。

 俺は終わるまでエミルに絡まれていた。明日になったらでいいから王族でもちゃんとジョルジュに怒られて欲しい。

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