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61.狩人

 遠目だが魔人の禍々しさは伝わってくる。


 前線にはクリス達が残っている。しかし、先の戦闘でどれだけ力を消耗しているのかここからでは分からない。

 そもそも、魔人の強さとはどんなものなのだろうか。


「あれが魔人……なんて禍々しいの? クリス、逃げて!」

 ノエルが上から叫ぶが聞こえているのか。


 クリスはポワンとプワンを下がらせる指示を出したようだ。

 残ったのはクリス、ジョルジュ、ローシャの騎士団の三人とズザ。この四人なら倒せそうな気がする。

 四人が武器を構えて戦う意思を示した。

 魔人も当然、戦うつもりで構えた。


 魔人も構えた。のだが、次の瞬間、魔人の首が飛んで身体も消滅した。


 何が起きたか分からない。

 魔人は撃退されたのか。


 すると後ろから一人の男が現れた。

 この男が背後から魔人を倒したようだ。

 それにしても魔人を一撃に倒すなんて何者なのか。


「狩人?!」

 ピラクが声を上げる。

 あれが狩人と呼ばれる三大転生者なのか。以前から聞く話からはあまり遭遇したくなったが、今回は助けられた。感謝しよう。


 クリス達が狩人を連れて村の入口まで戻ってきた。


「私はこの村の領主、第八王女のノエルです。狩人様、この度は助けていただき誠にありがとうございます」

 ノエルが狩人を出迎えて頭を下げてお礼を言った。


「まぁ、今回は間に合って良かったわ。あんまり堅苦しいのは無しで。あと、狩人様ってのもこそばゆいからキョウヤって呼んでくれ」

 狩人の名前はキョウヤというようだ。ツンツン頭に鋭い目つき、それに鼻のところに横一文字の傷がある。戦闘で負った傷だろうか。


「何でプロントには来てくれなかったのじゃ!」

 モニカがキョウヤに突っかかる。


「なんや、このちんちくりんは?」

 キョウヤは関西弁だ。元の世界ではそっちの出身だったのだろうか。


「うちはプロントの第八王女、モニカじゃ。プロントも大型は撃退できたから良かったものの、もし魔人が来たらダメだったかもしれなかったのじゃ」


「あんた、プロントの王女なのか。それはすまなかったの。駆けつけた時にはもう戦闘が終わっとったんや。それは今回も同じなんやけど、なんやゴルドで大型が出現するとワイが行くのを邪魔するようにワイの前にも強敵が現れるんや。だから、堪忍や」

 キョウヤは事情を説明して謝った。話に聞いていた戦闘狂とは少し違うように感じる。

 それとその話はキョウヤの行動を邪魔する何かがあるってことのように聞こえた。


「それにしても王女が二人もいるところに大型や魔人が出るなんて恐ろしい話やで」

 キョウヤがそう言うと偶然では無かったのか、何か理由があったのか考えてしまう。しかも、実際は二人ではなく四人いたのだから。


「二人じゃないわよ。私は第三王女ピラクよ」


「リエスは第四王女……木の魔法使い……」

 ピラクとリエスも名乗りを挙げた。


「それならあんたがあのでっかい木槌を作ったんか! あれが炸裂してたところは見とったで! 凄いやないか」

 キョウヤはそう言ってリエスの頭を撫でた。王女相手にこれは大丈夫なのだろうか。


「あ……はい……ありがとうございます……嬉しいです……」

 リエスは照れているのか顔が赤い。色白だから余計に赤面しているのが目立つ。


「私の水の魔法は見てないわけ?」


「リエスばかり褒められるのズルいのじゃ。うちの雷は見てないのか?」

 ピラクとモニカがキョウヤに迫る。自分達も褒められないと気が済まないらしい。


「遅れて来たからな。木槌しか見とらんのや。すまんのぉ」

 王女相手でもこの態度で接することができるのは羨ましい。


「もうキョウヤはいいのじゃ。うちはタロウが呼び捨てで呼んでくれたからの。一歩前進なのじゃ」


「モニカ様、あれは戦闘中の咄嗟の呼び掛けで、申し訳ありませんでした」

 やっぱり覚えてたか。


「あー、また様を付けてるのじゃ。これからは王女として様を付けて呼ぶのを禁ずる」

 無茶苦茶だ。それは無理でしょ。


「あんたが転生者のタロウか。今日はあんたの家に泊めてくれや。話したいこともあるからのぉ」

 モニカの話を聞いてキョウヤからそう言われた。どんな話になるのか怖いんですけど。


「それはそうと戦闘も終わったしお風呂に入るのじゃ。タロウはうちのこと呼び捨てにしたし、今日こそ混浴じゃの」


「ダメでしょ。モニカ。まだ今からみんなで魔獣を回収して祝勝会の準備をするのよ。キョウヤ様もいらしてくれたのだし、盛大にやりましょう」


「分かったのじゃ。王女も関係なく手伝うのじゃ。ピラクとリエスもやるのじゃぞ」


「分かったわよ」

 リエスは素直に返事をした。この子はツンツンしてるように見えて案外何でも積極的に手伝ってくれるので、やはり根は良い子なのだろう。というより、今まで会った王女は半分だが四人とも良い子だ。物語の王族にありがちな傲慢さを感じない。


 キョウヤも一宿一飯のお礼だ、とか言いながら手伝ってくれることになった。


「リエス……キョウヤ様なら……一緒に……お風呂、大丈夫……」

 みんなが騒ぎながら村の外へ回収に向かう時にリエスが一人で後方で呟いてたのを俺は聞こえてしまったが、聞かなかったことにする。

 王女達、みんな惚れっぽ過ぎて、もう少し大きくなって悪い男に騙されないか心配になる。

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