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60.弱点付与

 もし今回の大型魔獣には雷が効かないなら効くようにしてしまえばいいのではないだろうか?


「ピラク様、あの大型魔獣に大量の水をかけることはできますか?」

 水の魔法で戦っていたピラクは手を止めて俺を見た。


「できるけど、かけるだけでいいわけ?」

 何でそんなことするのか、と不思議がっている。


「今の時点で効果があるか分かりません。でも、今はこれしか思い浮かびません。モニカ様、もう一度、鉱石に魔法を込めておいてください」


「わかったのじゃ。この前もタロウの言った通りにして解決したからピラクも信じるのじゃ」


「ふん、わかったわよ。あれに水をかければいいわけね?」


「できるだけ多くお願いします。魔法の発動はモニカ様が準備できてからで」


「早くしなさいよね」


「わかってるのじゃ。そう急かしたら上手くいかないのじゃ」

 ピラクはそう言うが、モニカも頑張って準備している。ノエルは相変わらず巨大な手を召喚して戦ってくれている。

 リエスはいつの間にか土塁の下は降りて、リリとティキットと相談しながら何かを作り始めていた。


「タロウ、準備ができたのじゃ」

 モニカが声をかけて来た。先ほどと同じようにハーピーに飛んでもらう。

 魔獣に取り付けている間に俺はモニカとピラクに作戦を説明をする。


「雷があまり効かないなら効くようにすればいいと考えました。ピラク様が水は雷に弱いと昨日話していたので、それならあの魔獣を水浸しにしたら少しは効果があるのかと思って」


「そんな安易なことで大丈夫なの?」


「タロウはやはり天才じゃ」

 ピラクとモニカの感想は真逆だ。二人のそれぞれの個性が出てるような気がした。


「ダメかもしれません。でも、今はやってみるしかありません。お願いします」


「うちに任せるのじゃ。よし、ピラク。早くあれに水をかけるのじゃ」


「ふん。やるわよ。もうこれでダメなら私は帰るわよ」


 ハーピーの準備完了の合図を確認してピラクが魔法を放つ。


「全力で行くわよ! 覚悟しなさい」

 魔獣の上に大きな水の塊が現れた。ピラクが手を振ると、その水の塊が魔獣へ上から落ちていく。

 見事にびしょ濡れになった。


「今だ、モニカ!」

 俺は咄嗟に叫んだから、モニカを王女なのに呼び捨てにしてしまった。全部終わったら怒られよう。


「任せるのじゃ! 落雷撃!!!」

 モニカも全力を出さんとばかりに大声で呪文を唱えた。

 大型の雷が魔獣に付いた鉱石目掛けて降りかかる。

 

 鉱石が割れ轟音が鳴り響いた。今度は効いたか?


 ハーピーが報告のために飛んできた。

 どうやらある程度効果はあったようで侵攻は止まったようだ。だが、止まっただけで倒し切れてはいないとのことだった。

 プロントでもモニカの魔法で完全にトドメは刺せなかったから、この結果は分かっていた。むしろ進行を止めただけでもまずは良しとする。


 しかし、次の一手をどうするか?

 もう一度、同じ手を打つにしてもピラクとリエスは今のでかなり消耗をしているように見える。


「もう一度やるならやれるわよ」


「うちも大丈夫じゃ」


 二人ともそう言うが二回目は無理そうだ。

 すると下からリリの声が聞こえた。


「おーい、タロウさーん。リエス様は大きな声が出ないみたいだから私が呼ぶね! 魔法の木槌をリエス様が作ったからこれで攻撃できないかな?」

 リリがそう言って指を示した先には巨大な木槌があった。とても人間には持てない大きさだ。リリは自分もできることをしよう考えて村にある木材を集めて魔法でこの武器を生成していたのだ。

 だが、ノエルの魔法なら持つことが可能だ。


「木槌の中に私の魔法玉の成分も込めてもらったの。私には見えないけどノエル様の魔法でこれを持って戦えないかな、リエス様が言ってるよ」

 リリの声を聞いてノエルも木槌を確認した。


「ありがとう! あとは私に任せて」

 ノエルは巨大な魔法の手を操り木槌を持った。出会った時に比べると格段に操作が上手くなっている。

 ノエルはその木槌を持ったまま手を動きを止めている魔獣の方を動かしていった。


「これでどうなのよぉ!!!」

 ノエルが思い切り叫んで、まるで木槌を持っているかのように自分の両手を振った。

 それに連動して巨大な魔法の手が動く。

 大きく振りかぶった木槌が大型の魔獣に振り下ろされた。


 先ほどよりも大きな轟音が鳴り響く。

 木槌が割れ、リリの仕込んだ魔法玉の効果も炸裂したようだ。


 大型魔獣から産まれていた魔獣が発生しなくなったようだ。下にいたクリス達が大型魔獣へ近寄り状況を確認する。


 下から歓声が聞こえてきた。どうやら大型魔獣を倒すことができたみたいだ。

 土塁の上にいた俺達は安心してその場にへたり込んだ。

 王女達がそれぞれの国に帰るのはもう一日延期になりそうだ。今夜は大量に手に入った魔獣の肉で祝勝会をあげたい。余った肉は保存食にして冬を越すための足しにしたい。それに魔獣の素材もこの量なら外に売ることもできそうだ。村が豊かになる。


 そんなことを考えていたら、更なる魔障気が発生した。

 しかも、大きい。

 またあのサイズの魔獣が現れたら対処できないだろう。

 王女達の顔色も青ざめている。


 しかし、現れたのは魔獣よりも最悪な存在だった。

 魔障気から出てきたのは人型だった。


 俺は初めて魔人の姿を見た。

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