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57.水と木の魔法

 翌朝、屋敷へ王女達を迎えに行くと四人とも既に着替えて支度を終えていた。

 寝起きの姿を見せない姿勢はさすが王族なのか。ノエルやピラクは当然と言いながらやりそうだし、リエスも分からなくてもない。モニカはこの中では二番目に付き合いが長いがそういうイメージはないが、それでもこうして寝坊とかしないところはしっかりしている。


「タロウ様、おはようございます」

 ノエルが朝の挨拶をしてくれた。


「おはようなのじゃ、タロウ。しっかり寝坊せずに支度したのじゃ。褒めてもいいのじゃぞ」


「あのね、モニカ。王女は寝坊しないものなのよ。こういう時に寝坊するのはパルくらいでしょ」

 モニカのいつものような挨拶にピラクが突っ込みを入れる。それにしても北東の風の王女は自由きままなようだ。


 今日はまずは鉱山の近くにある壊れて修理を待っている道具置き場へやってきた。


「リエスの魔法は……木に力を与えます。ローシャが迷惑をかけたお詫びに……修理のお手伝いをします」


「リエス、それはそんなに気にしなくていいのよ。リリもティキットも和解しているし」


「そうじゃ。ローシャはリエスが領主になってからそんなに長く隊長だったわけじゃないから責任を感じることないのじゃ」


 リエスの言葉をノエルとモニカがフォローした。


「でも……これは気持ちだから……ちょっと見ててね」

 リエスはそう言うと、壊れたツルハシを拾った。キッタール鉱山は特殊な鉱石を採掘するためか、ツルハシがその強度に耐えられず壊れることが多い。使える部分を継ぎ接ぎにして利用しているが、それだと強度は益々落ちてしまいツルハシを手配するのにも苦労している。


 リエスは持ち上げたツルハシに魔力を込める。

 するとヒビ割れていた木の持ち手はまるで新品のように復活した。そのまま残りのツルハシにも魔力を込める。


「はい……これでここにあるものは全部ですね……壊れなくなるわけではないのですが、使う分には大丈夫かと思います……地味でごめんなさい……」

 リエスはかなりの量に魔力を込めたが全然疲れていないようだ。それにしも凄い魔法だ。確かに木の魔法があれば様々なものを再利用しやすいし、暮らしは豊かになるだろう。


「ありがとう、リエス。地味なんかじゃなくてとても素晴らしい魔法よ。助かるわ」

 ノエルがお礼を述べるとリエスは照れているようだ。リエスの魔法は本当はこんなものではなくもっと大きな木に力を与えたりもできるらしい。全然、地味ではなかった。


「はい、リエスの出番は終わりね。次は私の番よ。私の魔法はここだと使えないから湖まで行くわよ」

 ピラクはそう言った。次の目的地は湖だった。


「うん、ここなら十分な広さがあるわね」

 ピラクが湖を確認してそう言ったが、は疑問に思ったことを何となく聞いてしまった。


「水の魔法って街とかだと使えないんですか? こんな風に」

 俺はそう言って水の魔法を使ってみた。


「あのね、そんな基本的なことはできるに決まっているでしょ。それだけじゃないのよ」

 ピラクは手を銃の形に構えて水鉄砲のように俺の顔に魔法で水をかける。


「こら、いたずらしないの」


「これくらいいいでしょ。怪我するわけじゃないんだから」

 ノエルがピラクは叱るが、ピラクはどこ吹く風だ。俺もこれくらいで怒ることはしない。


「じゃあ、見てなさい。私の魔法を。海軍招来!!!」

 ピラクが呪文を唱えると船が湖に出現した。その衝撃で水飛沫が俺たちを襲った。さすがに冬の水は少し冷たい。


「どう? これが私の本気の魔法よ」

 こんな大きな船を召喚するなんて正直凄いと思った。


「これってどうやって操縦するのですか?」

 凄いと思いつつも俺は確認したくて聞いてしまった。


「それはもちろん。船員もいるのよ、船の中に」

 リエスがそう言うと船から船員が顔を出す。


「船員って言っても魔法の船員だからこの船の効力が効かない範囲でしか動かないけどね。でも、これで漁をしたり、海に魔獣が出た時は戦うのよ。それに私が許可した者は誰でも乗れるのよ。凄いでしょ?」

 ピラクが自信満々に話してくる。


「はい、びっくりしました。凄いです」

 素直な感想を俺は口に出した。


「そろそろうちの番じゃの。ピラク、あの船に雷を落としていいのか?」


「ダメに決まってるじゃない! あんたの魔法は私と相性が悪いの分かって言ってるでしょ?!」


「あの……私も相性が悪いから……私の木にも雷はやめて欲しいな……」

 モニカが魔法を使うことにピラクもリエスも反対する。確かに雷相手に水と木は相性が悪そうだ。五元素から外れているのに二つの元素相手に強く出られるモニカの魔法はこの世界では確かに異質なのかもしれない。


「ピラクばかり褒められてズルいのじゃ。うちも褒めて欲しいのじゃ」

 モニカは嫉妬していたようだ。


「モニカ様の魔法の凄さはこの前の飛行魔獣の時に見せてもらっているので分かってますよ」

 俺がそう言うとモニカは嬉しそうに笑った。


「そういえば、モニカ。帰りはあなたのハーピーを貸しなさいよ。馬車で帰るのは時間がかかるから嫌なのよ」


「嫌なのじゃ。ピラクはこの船で帰ればいいのじゃ。海まで続いてるから帰れるのじゃ」


「まぁ、それもそうね。王都からは無理でもここからなら船で下れるし、馬車よりも早く帰れるからそうするわ。リエス、ここからの川は南東も通るから送ってあげるわ」


「ありがとう……それならピラクちゃんのお言葉に甘えて船に乗せてもらおうかな……」

 やっぱりこの子達の仲は良さそうで微笑ましい。

 リエスがリリとティキットと情報交換をしたいらしく、明日はそれが終わったら王女達はそれぞれの領に帰ることになっている。


「そろそろ帰るわよ。タロウ、帰ったらお風呂に入りたいわ」


「かしこまりました。いい感じのお湯加減にしますね」

 王女達がいる今日までは公衆浴場を一般開放できなさそうだ。村人達には少し申し訳ない気持ちになった。

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