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56.王女たちの女子会

 ノエル達が帰ってきた夜は屋敷で現王女四人の食事会が開かれた。

 エミルも前王女がいたら彼女達も気を遣うから、と出席をしなかったようだ。


 母親は違うかもしれないが、父親の血は繋がってるわけで、人前では楽しそうにしているが過酷な運命を背負っている姉妹同士、ひと時かもしれないが楽しく過ごしてくれることをみんな願っているようだった。


 そうやって俺はいい話にまとめようとしていたのに、公衆浴場の片付けが終わったら屋敷に来るようにと呼び出しがかかった。

 女子会トークに巻き込まれるのは目に見えているので遠慮して早く寝かせて欲しいところだが、ピラクが来るようにと言ってきて断れなかった。仕方ない。


 浴場の片付けを終えて屋敷に向かうとクリス達が警備をしていた。この国には国家転覆を狙うような過激派はいないようだが、魔獣の脅威はあるため滞在中は交互に夜通し警備に当たるとのことだ。


「こんばんは。ノエル様に呼ばれて来ました」

 俺が屋敷の入口でクリスに挨拶をする。


「ノエル様達は食堂でお待ちだ」

 クリスはそう言って屋敷に通してくれた。そういえばクリスの個人的な情報は今まで聞いたことがなかったが何歳くらいなのだろう。今日は珍しくノエルの誘いも断っていなかったから風呂上がりの良いにおいもする。年齢は俺よりは下だろうがノエルほど若くはないから気になると急に意識してしまう。


「私の顔を見てどうした? 早く行け」

 俺が余計なことを考えてボケっとしているとクリスに突っ込まれた。無意識に顔を見つめていたらしい。


「あっ、いや、すみません」

 俺はそんなことを言いながら屋敷へ入った。


「失礼します」

 そう声をかけて食堂の扉を開けた。


「おっ、タロウよ、待っておったのじゃ。どうじゃ、うちの寝巻き姿。可愛いか?」

 そう言ってモニカが駆け寄ってきた。

 部屋の中はミルクの香りがする。キッタールでは食後の甘いお菓子を出せる環境にはないため、フルーツと温めたミルクが代わりに提供されていた。ミルクが取れるようになったことはゲオルグの家族に本当に感謝だ。


「あ、はい。とてもお似合いですよ」

 この世界のパジャマは元の世界のものと比べて質素なものばかりだ。だが、さすが王族となるとデザイン性のあるものを持っているようだ。


「えへへ、嬉しいのじゃ。褒美として今夜は一緒に寝てあげてもいいのじゃぞ?」

 モニカは隙があれば一緒に寝たがる。またノエルに怒られるぞ。


「モニカ、それは社交辞令なのよ。王女ならそういうことも学びなさい」

 ノエルではなくピラクが突っ込んできた。今のは社交辞令ではなく本心で可愛いと思ったのだが、そうしてもらえた方がいいのかもしれない。


「それより昼間は悪かったわね。冴えないとか言ってしまって。ノエルやモニカからあなたの活躍は聞いたわ。凄いのね。それに公衆浴場、とても良かったわよ」

 ピラクは昼間も思ったが、基本的には素直でいい子なのだろう。


「気に入ってもらえて良かったです。それにピラク様から見たら冴えないおっさんですから間違いないですよ」

 モニカにしろピラクにしろ王女から褒められて嫌な気はしない。


「ピラクもタロウの良さにやっと気付いたか。だが、うちが先に手を付けたのじゃから、ピラクはもう遅いのじゃ」

 モニカが訳の分からないことを言っている。


「早いとか遅いじゃないのよ、モニカ。王女は好きな殿方にどれだけ良い環境を与えられるかが大切なのよ。キッタールはもう十分発展したし、そろそろタロウも環境を変える時期なのよ。私の街は南西ほどじゃなくても娯楽もあるし、気温も暖かく過ごしやすいわよ。というわけで、私が帰る時に一緒に付いてくるといいわ」

 娯楽があるのは気になるが、メルチェからの命もあるし付いていくわけにはいかないでしょうに。何よりキッタールはまだまだ発展する。


「もう、勝手なこと言わないで。タロウ様はこの村からは出ていかないわよ! 出ていかないですよね?」

 心配そうにノエルが俺に聞いてきた。もちろん俺は頷いた。


「それなら順番にすればいいのじゃ。毎月、希望する各領を順番に巡るのじゃ」

 いや、それ俺の負担が増えるだけなんですよ、モニカ様。


「それと私も珍しくモニカと意見が合ったのだが、明日は私たち王女と混浴してみるのはどうか。裸の付き合いはお互いのことをよく知ることができると言うし」

 それは同性でやるものなんですよ、ピラク様。


「リエスは……あの、その……結婚前に男の人に裸を見られるのは恥ずかしくて……混浴はちょっとお断りしたいのですが、大丈夫でしょうか……」

 それが真っ当な意見ですよ、リエス様。


「もう、ちょっとタロウ様もリエスも困ってるでしょ。あまり変なことばかり言ってるとモニカもピラクも今夜は屋敷に泊めないからね」

 ノエルはいい加減にしなさい、と言わんばかりに怒った。


「リエス以外はタロウに好意を持っておるわけだし、ノエルの北の辺境の地を発展させた功績で次期女王に名乗りを挙げてもタロウを王様にしてくれればいいかもしれないわね。その時は私は賛成票を入れるわよ」


「なら、うちも賛成票を入れるのじゃ」


「本人以外の四人が賛成すればいいなら、あとはリエスと、残り一票はパルかミネスのどちらかが入れればいいのだからできそうね」


「もう、私は女王にはならないわよ」

 ピラクとモニカの女王推薦のとんでもない提案にノエルは呆れていた。これも仲が良いからこんな話ができそうな雰囲気で良いと思う。

 彼女達のこういう雰囲気を見ていると誰が女王になるにしてもメルチェの言うように運命は断ち切れるならそうしてあげたいという気持ちが強くなった。


「それと明日は私とリエスが魔法を見せてあげるから楽しみにしてなさい。感動して私に付いてきたくなってしまうかもしれないわよ」


「あの……私の魔法に感動しても付いて来なくてもいいですから……感動してくれるのは嬉しいかもだけど……」


「それは楽しみにしてますね」

 明日はピラクとリエスが魔法を見せてくれるようで、どんなものか楽しみだ。


「それではおやすみなさい。今日はお招きいただきありがとうございました」

 挨拶をして俺は屋敷を後にした。

 モニカは当然のように付いてこようとしてノエルの止められていた。

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