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48.昔の小屋

 シャルワの酒場での情報を元にシャルワから南西にある以前騎士団が使っていたという小屋へ向かった。

 馬車で小屋に近付くと警戒されると思い少し離れたところへ馬車を停め徒歩で行くことにする。


 酒場の男たちが使われていない小屋と言っていたが実際に見ると平屋だが石造りの立派な建物だった。キッタカールにあればそれこそ屋敷の次に立派な家屋になるだろう。


「騎士団で使っていた建物なら私が開けます。万が一、不法侵入だと言われても言い訳が立つでしょう」

 サラはそう言ったが、俺はサラが犯人の顔を一番に拝みたいのではないのかと感じた。


 サラが扉を開けるが小屋の中は光が届きにくいのか薄暗かった。


「こんなところに何か用かい?」

 奥から白装束を纏った男が現れた。吊り目で顔は痩せ細っていている。身長もズザと同じくらいの高さがあるが顔と同じで痩せている。この男ならサラとズザなら勝てそうだ。


「やはりあなたでしたか……ローシャ隊長」

 サラが相手の名前を呼んだ。


「えっ、ローシャさん?!」

 ズザも知っているのか。

 隊長ということが騎士団なのか? そんな人間がリリを誘拐した? 俺の理解が追いつかない。


「サラ。えーっと、そっちはズザかい。こんなところで懐かしい顔、それに二人も同時に会えるなんで僕は嬉しいよ。でも、残念ながら今は騎士団の副団長ではないんだよ」


「昔からあなたのエルフ信仰は行き過ぎていたところがありました。それに少し前にシャルワに来た時にあなたに似た人を見かけたこともあって今回の件もすぐに顔が浮かびました。そうでないことを祈っていたのですが残念です。リリを返してください。大人しく返してくれたら手荒な真似はしません」

 普段口数が少ないサラが珍しく捲し立てた。


「君は今は北の騎士団なのか。うーん、困ったなぁ。返す気はないのだけど暴れられても迷惑なんだよね。それに君程度が元騎士団副団長の僕に勝てるとでも。あぁ、後ろにいるズザなら可能性もあるかもしれないけど。それにしてもズザ、君は商団を辞めて騎士団に転職でもしたのかい?」


 元騎士団副団長ということはクリスと同程度の実力。これは手強そうな相手が出てきた。前みたいな雑魚の誘拐犯とは訳が違いそうだ。


「今のあなたは騎士団の人間ではない。鍛錬もせず武器を持たない人間がまともに戦えるものか」

 サラはそう言って飛び掛かる。短剣の二刀流、サラのスピードを活かした戦い方に合っている装備だ。

 ローシャは白装束の下に武器を隠し持っている感じでもなかった。体術に自信があるのかもしれないが短剣二本を捌き切れるのか。


「やれやれ、仕方ないな」

 そう言うとローシャは足元にある木の枝を二本拾って両手に持つ。サラの二刀流に対抗するためにしては短剣と枝では勝負にならないだろう。

 サラは遠慮なく斬りかかる。

 しかし、ローシャの枝は切れることなくサラの攻撃を受け止めた。


「甘く見てもらったら困るよ。僕はこれでも元副団長なんだから」

 ローシャはそう言いながらサラを蹴り飛ばす。

 間髪入れずに吹き飛ばされたサラの身体を死角にズザが槍を突き出す。

 しかし、それもローシャは木の枝で受けきる。


「君を吹き飛ばすのは難しそうだなぁ」

 ローシャは受けた槍をいなしてズザの体制を崩す。


「でも、地面に叩き付けるくらいはできるかな」

 ローシャは木の枝をズザの身体に叩き付ける。するとまるでハンマーで叩かれたような鈍く思い音がしてズザは倒れた。

 予想以上に敵は強い。


「二人とも僕に勝つにはまだまだ甘いなぁ。騎士団を退団しても魔法は使えるんだよね。あっ、まだ一人残ってるねぇ。君も騎士団。おじさんだし、強そうには見えないなぁ。僕は戦うのが目的じゃないからね、逃げるなら見逃してあげてもいいよ」

 サラが立ち上がる。まだダメージが残っているのか足元がフラついている。


「魔法は昔から変わってないんですね。木の加護を受けて木を強化して戦う」

「それがどうしたのさ」

「木の魔法は火に弱い。基本ですよ」

「まさか……」

「あとは頼みますよ」


 俺はサラの「火に弱い」の言葉で既に飛び出していた。

 身体能力+と加速+、相手の隙を付くには十分なはずだ。

 刀で斬り掛かる。


「驚かせるんじゃないよ、サラ。ただの剣での攻撃じゃないか」

 ローシャは枝で受けようとする。


「火炎斬り!」

 刀に炎が宿る。


「そんな……」

 ローシャの持っていた枝を切り裂く。彼は呆然とした表情した、その隙を見てズザがすかさずローシャを投げ飛ばした。

 勝負があった。持ってきていた縄でローシャを縛った。


「タロウさんなら私の言葉で気付いて動いてくれると思ってました」

 サラが俺のことを信頼してくれていたようなことを言ってくれて嬉しかった。


 その時、背後から人が入ってくる気配があった。

 敵の援軍か?

 今、同じようなレベルの相手が来たら歯が立たない。


 しかし、入ってきたのはクリスとラフィッカだった。

 モニカが援軍要請をしてくれて、それぞれ駆け付けてくれたようだ。


「全員、無事でよかった。タロウ殿、よくやってくれた」

 クリスが労ってくれた。もう少し早く来てくれたらもっと楽だったのに、と思ったがそれは心に留めておく。

「ローシャ。エルフに傾倒し過ぎのあなたはいつか事件を起こすと思っていましたよ」

 ラフィッカが言う。


「君たちには分からないだろうが、あんな少女を見つけたらエルフを信奉している人間なら誰でも連れ出したくなるのだよ。エルフに育てられた少女、これは宝だ」


「そんなもの分かりたくない。せいぜい王都で反省することだ」

 ラフィッカが連れて行こうとする。


 すると奥からサラがリリともう一人、少女を連れてきた。

 ローシャはリリ以外も誘拐していたのか。

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