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45.モニカの休暇

 プロントや王都への滞在が終わる頃、すでに八月の半ばになっていた。すっかり暑さは落ち着いて過ごしやすい気温になっている。


 俺は開放できていなかった公衆浴場を再開して村人達に楽しんでもらっていた。番頭としての仕事に精を出す日々が帰ってきた。

 俺とノエルがいない間に村は少しずつだが発展していた。

 村の中も今までは人が通るところが踏みならされて道になっていたが、それを整地して歩きやすくなっていた。また村の外も来訪者が増えたこととエルフとの約束の森林管理を行うことを考えて獣道だったところを整地して人の移動を安全にできるように整備してくれていた。

 村を囲う土塁も初めは水路工事で掘り起こした土を高く積んでいただけだったが、しっかり固めて土塁の上にも足場と登るための梯子を作り土塁の上からの巡回警備ができるようになっていた。

 村への入り口は橋だけでなく改めて木でしっかりとした門を作り夜間は閉じることになった。

 さらに外貨を稼いだことで鉄鉱石を王都の定期便に依頼することとドワーフの作業環境を整えることができそうな目処が立ったとジョルジュが教えてくれた。これで鉄製品がこの村でも作れるようになればやれることも増えそうだ。


 それとジョルジュが言うには鉱山の労働力の増加をしたいがなかなか上手くいっていないのが課題とのことだ。観光や商売で来訪者は増加したが定住には至らない。ゲンサンが集められる限り近隣のオークを集めてくれたが周辺の工事への人手を考えると鉱山に回ってこない。それと労働力を増やした際の食力の確保もまだ間に合わない計算のようだ。村の食糧事情は水の確保で大幅に改善されたが、今の村の人口でちょうどいいくらいで余裕があるわけではなかった。

 元の世界と同じで地方での労働力確保は課題のようだ。しかし、キッタカール鉱石の謎が解けたからには研究を進めるためにも王都としては少しでも発掘量を増やして欲しいとのことだった。ノエルの手前、あまり無茶を言うことはないだろうが、これは手を考えないといけない。


 それから少し経つとモニカが一度遊びに来た。


「公衆浴場に入りに来たぞ」

 このような軽いノリでやって来たが、他の領の王女が街にやって来たなど今までこの村では無かったから村は少し騒がしくなった。しかも空から突然やって来たのだから。


「モニカ、来るならちゃんと事前に連絡してちょうだい」

 ノエルが嗜めると、


「うちもプロント再建でなかなか忙しいのじゃ。ラフィッカが気を遣ってくれて少し休みをくれたのが急だったからの。思い付いて飛んできたのじゃ」


「もう勝手なんだから。本当は王女が他の領に来たら歓迎会を開かないといけないのに何もできないわよ」


「かまわないのじゃ。ノエル達がプロントに来た時も開いてないからのぉ」


「それは大型魔獣が出現した緊急事態だったからじゃない。今みたいな平穏な時とは違うのよ」


「ノエルもそんなに怒らなくていいのよ。モニカさん、お久し振り。お母様はお元気?」


「エミル様、お久しぶりなのじゃ。この前、避難先から帰って来て今はプラントで元気にしてるのじゃ」


「そう、ならよかった。また私も会いたいわ」

 エミルも会話に入ってきて王族が三人揃うと華やかになる。

 プロントから預かっているハーピーたちは村の空いてる敷地に集落を作りそこで生活をしてもらっている。モニカを運んできたハーピー達は今夜はそこに泊まることにして、モニカは屋敷の空室に泊まらせるつもりだった。


「うちは浴場の隣にあるタロウの家に泊まるから気にしないでいいのだ」


「ダメに決まっているでしょ。モニカは屋敷に泊まるのよ」


「じゃあ、せめて混浴は許可して欲しいのだ」


「ダメです。初めに難しい課題を出してからそういう要求をして許されると思ったの?!」

 どちらもダメに決まっていた。そもそも高校生くらいの年代の娘と風呂に入るだ、泊まるだという話が危険過ぎる。元の世界なら逮捕されている。


「あら、いいじゃない混浴。私もタロウさんとなら一緒でもいいわよ」


 同世代のエミルにそんなことを言うとドキドキしてしまう。湖に行って以来、呼び方も様付けからさん付けに変わっていた。生活も安定してきたからか容姿も村に来た時よりは明るくなり、いきいきしていて魅力的なのだ。


「私は前の世代の王女でも結婚はしていませんし、それに夏に湖に二人で出掛けてから騒動が多くてノエルばかり一緒にいて全然二人でお話できないのですもの」

 これはモテ期なのか。からかわれているのか。あと、俺は何も悪いことしていないのにジョルジュの目が怖いのは勘弁して欲しい。


「エミル様まで何を言っているのですか?! とにかくキッタカールは今は私が領主です。混浴は絶対禁止です!」


「ならノエルも抜け駆けは無しなのじゃぞ」

 エミルの来訪は騒々しいものになった。


 その夜、モニカがやらなくてもよいと言っても簡単な歓迎会は開かれた。

 そこでモニカにこんな話を言われた。


「いくらタロウのような転生者でも風呂は作れても厠の整備は難しいのじゃのぉ。王都以外はどこも苦労している。スライムの召喚士や浄化魔法や浄化石は貴重だからのぉ。ほとんどが王都へ集中してしまっている。羨ましいのぉ。プロントは再建中だから余計に辛い」

 やはりトイレや下水の整備はどこも課題のようだ。この村ではリリが頑張ってくれているが、また明日にでも話を聞いてみよう。

 これで何かまた村が発展するきっかけができればいい。

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