43.通信石
さすがに王女の二人きりになると緊張するなという方が無理だ。空気がピリッとした気がする。
「キッタカール鉱石のことはきっかけではあるが、口実に近い。そなたの意見を聞きたい」
「分かる範囲でならお答えします」
「この国に生まれてくる王女たちの魔法についてどう思う? 率直に答えて欲しい」
王女の魔法についての意見。確かに俺なりに考えていることもあるが確信しているわけではない。
「この世界の王女の魔法も直接見たことあるのはノエル様、モニカ様、それと見るとは違いますがエルミ様のものだけです。あとは話を聞いたくらいで。そんな状態の意見でも構いませんか?」
「構わない。そなたの意見が聞きたいのだ」
「それでしたら。俺が感じたのは元の世界での科学と呼ばれる技術に近いものが多いということです。生活に役に立ったり、メルチェ様のように国益になったり、国が豊かになる技術が先天的に与えられている。そんな印象です」
「なるほど。やはりそなたもそう思うか」
そなたもそう思う? その言い方は他にもそう考えているものがいるということだ。元の世界の知識と比較しているならメルチェではないだろう。それなら王女が顔を知っている狩人か?
「先ほどわらわは少しズルい言い方をした」
メルチェが言おうとしていることが俺は分からず沈黙するしかなかった。
「大陸の三大転生者、とは言ったが他の転生者は知らないとは言っていない」
「あっ」
俺は間抜けな声を出してしまった。ということはメルチェは他の転生者を知っているのだ。
「その通り。転生者は別に彼らだけではない。知られていないだけなのだ。そして今、わらわは他の者には伝えていない二人の転生者がわらわの協力者としている。わらわだけの駒だ」
「そんな大事なこと……ここで言ってしまって大丈夫なのですか?」
「盗み聞きとかされていないか心配しているのか? 大丈夫だ。この部屋は盗聴防ぐために特殊な魔道具が施されている」
「もう一つ、俺が他の人に話す心配もあるのでは?」
「その心配もしていない。わらわの話を聞いたらそなたはも恐らく協力するはずだから」
メルチェはやけに自信がありそうだ。
「わらわは王女たちの運命を断ちたいのだ。八人の王女が産まれなくても大丈夫なようにしたい」
「それは……」
俺は予想以上の話に驚いてしまった。
「実は八人の王女が産まれる仕組みの始まりも目的も知られていないのだ。何故か王家の歴史を記した書物も見つからず不明点が多過ぎるのだ。まずはこの仕組みの目的を解き明かしてどうすれば終わるのかを解明したい」
俺はまた返事ができずにいた。
「この国には謎の遺跡がいくつかある。そこの調査を行い古文書や石碑は出てきたのだが解読はできていないのが現状だ。そして二人の協力者は調査や解読を手伝っている」
「それで俺は何をすればいいのですか? 調査や解読ができるとは思いません」
「情報収集だ。キッタカールには恐らく何かがある。昔、エミルが魔法で感じ取ったものも本当は鉱石などではなかったのではないかと今では睨んでいる。だからキッタカールにいる間に何かあれば伝えて欲しい」
「しかし伝えるにしても王都とキッタカールでは距離があり過ぎます。ハーピーを使っても最短で二日はかかります」
「お主らの世界ではデンワという便利な道具があるのだろう?」
デンワ?
電話?
それは分かる。しかし、この世界で見たことはない。
「協力者の一人のアレックスが見つけた魔法石だ。わらわとアレックス、それともう一人の協力者のシノブしか持っていない」
メルチェが石を渡してきた。
「これはアレックスが通信石と名付けた魔法石でな。魔力があるものが自分自身の魔力を込める。そして魔力が込めた石同士を重なる。そうすると離れていても石を使って会話ができるのだ。アレックスがもし信頼できる転生者が現れたらデンワだと思って使うように渡してくれ、デンワって言えば通じるはずだ、と言っておった」
メルチェに言われた通りに魔力を込めてメルチェの石と重ねた。これで電話のように使えるらしい。
メルチェは俺、アレックス、シノブと通信できるが、アレックスとシノブはお互いに面識がないので通信ができない。電話番号でやり取りするわけではないので一度は会わないと通信ができないようだ。それでもこの世界にとっての通信のレベルを考えたらとんでもない石だった。
俺にとって先日キッタカールとプロントの間で空輸でやり取り可能になって格段に運輸と通信のレベルが上がったと思っていたのに限定的とは言え衝撃的なレベルアップだ。
「この石は秘密として守り抜くように。ノエルにも言うでない。いいな」
渡されてから約束させられるのはズルいが仕方ない。




