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42.謁見

 始まった女王との謁見は予想したような緊張感があるものではなかった。ノエルとモニカの近況をメルチェが聞くような形でまるで親子の里帰りのようだった。

 一通り話が終わるとメルチェが俺に話しかけてきた。


「ついついモニカとノエルとの話が盛り上がってしまったな。自己紹介が遅くなってすまない。すでに知っているかもしれないがゴルド王国の女王メルチェだ」


「私は転生者の魔法剣士タロウと申します。キッタカールで生活をさせていただいてます」


「うむ、種族の進化をしたり、水を確保するために川を作ったり、公衆浴場まで作ってしまう風変わりな男とは報告を受けていたからもっと風変わりな男かと思ったが案外普通なのだな」


「そういう意味では女王様の期待に応えられなくて申し訳ありません」

 そんな印象を持たれていたのか。案外、早く会うことができて良かったのかもしれない。


「それにそんな風変わりな男だからこそキッタカール鉱石の謎を解けたのだろう」

 やはりこの話題が本命だ。


「正直に言えば偶然でした。元の世界の知識と魔法石に少し前に触れていたこと、これらが上手く噛み合ったからだと思います。この世界で大切にされている五元素に捉われなかったのも良かったのではないでしょうか」


「ふむ、なるほど。そなたの言う通り我々は五元素に捉われ過ぎていたかもしれないの」

 俺の説明であっさり納得してくれた。少し拍子抜けだった。


「そなたは博識なのじゃの。見た所、わらわと同じくらいの年齢か。ちゃんと生きてきた分が知識と蓄積されていて素晴らしい」

 メルチェはそう言ってくれたが元の世界で生活していたらあれくらいは気付く知識は持てそうだが褒められて悪い気はしなかった。それと先代王女達から選ばれた王女なのだからエミルと同じ世代で、こちらの世界なら俺も同じ歳くらいだろう。以前、ノエルに説明した元の世界の何月の数え方を教えて、恐らく同じ歳くらいことも伝えた。


「なんと。そうであったか。この国は転生者が現れなくての。そなたの世界の話は知らないことばかりなのだ。この大陸の三大転生者もこの国に来るのは狩人しかいないから彼しか知らないのだ」

 狩人。何回か二つ名が出てくる転生者。聞いていた話の通りならプロント戦で助けてくれそうなものなのだが結局現れなかった。


「狩人しか会ったことはないのだが彼の話を聞く限り転生者は若者ばかりかと思っていたぞ」

 狩人はそんな話をしていたのか。彼だけでなく他の二人も若いのか。上手く表現できないが少しショックだった。


「狩人と同じくらいの歳だったら次期国王候補に今回の件で名乗りを上げてもらってもよかったのだが、わらわと同じ歳では王女達も嫌がりそうだな。残念じゃ」

 さらっと追加で傷付くような話をされたがそれは事実なのとノエルやモニカを見てると結婚は想像ができない。


「うちはタロウが国王でもいいのじゃ。わらわが女王じゃなくて側室でもいいのじゃ」

 モニカはまたこの話をし始めた。嬉しいのは嬉しいのだが複雑な心境でもある。


「モニカ、その話はダメって言ったでしょ。次期女王になる王女の気持ちもあるのだから、それは大切にしなきゃ」


「タロウが国王にならないならプロントの婿になってもらうつもりじゃ」

 ノエルとモニカのやり取りを聞いてメルチェが言った。


「タロウはモテるのだな。これからは国の繁栄のために王都へ来てもらうつもりだったがモニカに怒られそうだ」


「女王様! タロウ様はプロントの人間ではありません。モニカが怒るのも筋違いです。キッタカールの人間です。モニカが怒るのではなく私がどこにも出しません」


「そう怒るな、ノエル。彼をキッタカールから取るつもりはない。すまなかったな」

 メルチェは笑ったが、ノエルは怒り顔のままだった。本当に怒っているわけではないだろう。もっと女王と王女の仲は厳しい関係かと思ったが冗談でやり取りできるくらいには良好のようだ。籠で聞いていた通りの印象だった。


 この後はまた日常会話のような形で話が進んだ。それを見る限りでは家族の微笑ましい風景だった。


「久し振りに二人と話ができて楽しかった。よく来てくれた。くれぐれも身体には気を付けて領で頑張るのだぞ」


「はい!」

 ノエルとモニカは元気に返事をした。やはり家族のやり取りみたいで微笑ましい。


「二人は下がっていい。ご苦労であった」

 二人?

 俺とはまだ二人きりで話があるのか?


「女王様、タロウ様は?」

 ノエルが心配そうに問いかける。


「そう心配するな。少し二人だけで話がしたいのだ。外で待機しているラフィッカとクリスにも心配せずにもう少し待っているように伝えてくれ」


「分かりました。本日はお招き頂きありがとうございました」

 ノエルとモニカはそれぞれ挨拶をして退室した。

 俺とメルチェは二人きりになってしまった。


「そう緊張することはない。取って食うわけじゃない。そなたとだけ話しておきたいことがあるのだ」

 メルチェは王座に座り直し俺にそう告げた。

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