41.王都へ
プロントからキッタカールへ戻っても落ち着く暇はなかった。
往復の移動がハーピー達の協力があって短縮できたとはいえ、向こうでの滞在も含むと十日近く俺とノエルは村を不在にしていた。公衆浴場もその間は炎の石を十分温めることができないので開放して使ってもらうこともできず、村人の中には残念に思っていた人もいたらしい。使ってもらえないのは申し訳なかったが、楽しみにしてくれていた人がいると思うと頑張って働こうと思える。
だが村に戻って三日もすると王都からの使者が来た。
王都からの使者といってもいつもの定例の係の者ではなくプロントの鳥人が王都から手紙を持ってきた。キッタカール鉱石の謎が解けたということで至急関係者の招集をかけるということで陸路での移動の時間を惜しんで鳥人を使って空路での伝達を手伝わせていた。
キッタカールから王都へは街道が整備されて馬車で移動してもどんなに頑張っても五日以上はかかるようだ。こちらの世界での一週間、往復したら半月が移動でかかる。気軽に行ける距離ではなかった。エルフの森の南の街へ行くにも一日はかかるのだからそれくらいはかかるだろう。当たり前のことだが、こうやって移動に時間がかかると生まれた場所から動くことなく生涯を終えてしまうのも分かるような気がした。
今回も空路での移動をハーピー達が助けてくれる。それでも手紙を運ぶだけとは違い人を運ぶので二日から三日はかかるという。王都での滞在を考えるとまた長い間、村を不在にすることが心苦しい。本音は魔獣との戦いや政治よりも村で番頭として静かに平和に暮らしたい。
ただ、俺には転生者としての役割があるだろうということでやるべきことをするために支度を整えてノエルと一緒に王都に向かう。
一応、プロントの移動の時のことを思い出して、リリに乗り物酔いの説明してそれに効く薬を調合きてもらったが無事に効くことを願う。
プロントへ行った時と同じように王都や女王について、行きのハーピーの籠の中でノエルから情報収集を行う。
幸いリリの酔い止めは効いたみたいでプロント行きの時よりは気分も悪くならなかった。
「女王様ってどんな人なのですか?」
俺は単刀直入にノエルに聞いた。
「現女王、メルチェ様は厳しさはありますが、現在の王女たちには優しく接してくれます。過去の女王様は才の無いと判断した者には冷たく接したという話も聞きましたが、今はそういうことはありません。私も北へ派遣される王女だからとメルチェ様にそれを理由に厳しくされたり冷たくされたりはしませんでした。もちろん教育の中で叱られることはありましたが、それに理不尽さを感じたことはありません」
現在の女王であるメルチェはしっかり分別のできる人みたいで安心した。
「それなら王都に呼ばれたからと不安になることもなさそうですね」
「そうですね。純粋にキッタカール鉱石の謎が解けたことに興味があるのだと思います。ただ、メルチェ様は剣の王女だった方なので怒らせたら恐ろしいので気を付けてくださいね」
「剣の王女?」
「はい、女王になる前のメルチェ様は東領で戦いで名を挙げた歴代でも初めての王女だったのです。普段は穏やかな優しい方なのですが戦場に出ると自身の剣の魔法を使って騎士団や武装商団顔負けで戦闘を駆け抜けたと聞いてます。当時は東との国境も紛争が絶えなかったのですが、メルチェ様の活躍で国境を安定させたことが認められ女王に就任されました」
「凄く強い人なんですね」
「はい。この国で五元素に由来する魔法以外で史上初めて女王になられました」
怒らすようなことはするつもりもないが王都に着いたら大人しくしておこう。
途中で休息を取りながら王都に到着した。
この世界に転生してキッタカールやプロント以外の街や村を体験することができた。
どの街や村も破壊されていたプロントよりは発展している印象は受けず、キッタカールも順調に発展していけばすぐにこれらの街や村に負けない所になるだろう。ただ、辺境にあり過ぎて人や物資の交流が盛んになりにくいのは課題だとも思った。
そして、到着して痛感したのは王都の偉大さだった。
建築物はどれも立派で街を行き交う人々の服装も洗練されている。城下町のにおいも街の生活している人たちのにおいという感じで下水の整備も進んでいるのを感じた。商店も様々な種類があり経済的な反映も見て取れる。
さすが王都だ。
ゴルド城の城門へ到着するとクリスが出迎えてくれた。
「ノエル様、タロウ殿、遠いところよくお越しくださいました。女王様と先に到着したモニカ様がお待ちになってます。お疲れのところ申し訳ありませんが、このまま謁見の間までご一緒ください」
「ありがとう、クリス。もっとお話したいけどお待たせしてはいけないから今は城の中へ急ぎましょう」
謁見の間の前には二人の衛兵が見張りをしていた。
クリスが、
「ノエル様をお連れした」
とだけ言うと敬礼して扉を開けてくれた。
さすが副団長だ。顔パスみたいなものだ。
「女王様、キッタカールよりノエル様とタロウ様をお連れしました」
そこには先に来ていたモニカとラフィッカ、そして玉座に座る女王メルチェがいた。玉座は一つしかないが王様が座るわけではなく、この国では当たり前のごとく女王が鎮座していた。
「ご苦労であった、クリス。ラフィッカもプロントでの戦闘の報告をよくしてくれた。せっかく来てくれたのにすまぬが騎士団の二人は室外で待機していておくれ。王女二人と転生者タロウと話をしたい。ラフィッカの話の通りならこの者は危険ではないのだろう? それに危険だとしても私は負けるつもりもないがの」
剣の王女だっただけあって今も暴漢一人に襲われたくらいでは負けない自信があるようだ。
「はっ、承知いたしました」
クリスとラフィッカは部屋の外へ出て行った。
「モニカ、ノエル、そしてタロウ。よく王都へ来てくれた。この度は大変な戦闘をよくやり遂げてくれた。そしてキッタカール鉱石の解明。本当に感謝する」
女王との謁見が始まった。




