39.空中決戦
ハーピー達がキッタカールから戻ってくるまでは大型の襲来も小型の大量襲来も無く過ごすことができた。
なんとか大型飛行魔獣との決戦に準備が間に合いそうだ。
これも仮定なのだが割れるギリギリの量になるとキッタカール鉱石は光を放つようになるようだ。キッタカールから持ってきた鉱石すべてが光るようになるまでモニカが魔法を込める。
モニカは攻撃する時のコントロールが上手い。それは魔力のコントロールが上手いということだった。雷を落とすことなくとも手元に魔力を纏ってそれを石に移すことができた。器用なものだ。
モニカが鉱石に魔法石を埋め込め終わった翌日。タイミングを測ったように大型飛行魔獣とそれに追従する魔物達の襲撃が始まった。
これも仮説なのだがキッタカール鉱石とモニカの魔法に反応したのかもしれない。だが、これはまだ誰にも伝えていない。
俺たちは作戦通りに動く。
ネルバ達鳥人は大型にキッタカール鉱石を括り付ける。大型は小型と違って速度はそんなにないらしい。ただ乗せるだけでは落ちてしまう量の方が多そうなので速度で対応できるネルバと鳥人の精鋭部隊に頑張ってもらうことになった。
ハーピー達はネルバ達の作戦を妨害してくる小型の飛行魔獣の撃退。
騎士団は地上から街へ侵入させないように応戦。今回、モニカも最前線に向かうためラフィッカは護衛を担当。俺とノエルもモニカを護る役割だ。
この準備している期間、俺はラフィッカから魔法の使い方を学んでいた。ラフィッカの見立てでは俺の魔法は威力は十分だが直線にしか飛ばせない上に速度が少し足りないようだ。それだと空中戦だと距離があると避けられてしまう。ラフィッカのように速度が出ればいいがすぐに改善できない。結局は魔獣をギリギリまで近付けて当たるしかないようだった。魔獣を引き寄せるなら身体能力+を使って火炎斬りで飛び掛かるのもありかもしれない。
いよいよ戦闘が始まった。
大型飛行魔獣は先日襲撃してきた鳥型を大きくしたような形かと思ったが違った。実物は知らないが本で見るようなプテラノドンがいたらこんな感じだったのではないか。
それと初めて知ったのだが大型魔獣は手下を引き連れてくるわけではなかった。大型魔獣が纏う魔障気から小型が生まれてくるのだ。
これだと本体を倒さない限りキリがない。
あらかじめて決めていた体制で迎撃はしている。
ハーピー達が大型魔獣を守る小型魔獣の撃破、騎士団は街へ向かってくる魔獣の撃破。
しかしネルバ達は大型魔獣へ鉱石を巻き付ける作業に苦戦していた。
大型魔獣はゆっくりとした速度でプロントへ向かって飛んでくる。この感じだと目標はモニカか。魔獣からそんな意思を感じる。
大型魔獣は速度が速度が遅く何をされているのか分からないのか反撃もしてこないため、ネルバ達が鉱石を括り付けることはできるのだが身体全体に付けるにはプロント到着までは間に合わないかもしれない。身体が大きいのと慣れない作業で人手が足りないのだ。しかも周りでは魔障気から魔獣が発生し続けているためハーピーの支援があっても自分達でも対処しないといけないのだ。
大型飛行魔獣がいよいよ街へ近付いてくる。
鉱石の破裂を考えるとそろそろモニカの魔法を放たないといけない。
しかし大型魔獣の両翼にはいくつか鉱石を取り付けることができたみたいだが身体へは間に合ってないようだ。
「モニカ様、魔法の準備を」
ラフィッカからモニカへ指示が出る。
「だが、まだ身体へ鉱石が付いておらぬ」
「しかし、このままでは街への被害も出てしまいます」
その時、ハーピーの長が叫んだ。
「モニカ様、もう一度私の名前を呼んでください」
「えっ」
「モニカ様、お願いします」
もう一度、ハーピーが大声でこちらに呼び掛ける。
進化したら何か変わるかもしれない。
「ここは彼女を信じて思い切り大きな声で呼んであげてください」
恐らくハーピーは何か掴んだのだ。俺は進化することを確信してモニカにお願いした。
「分かったのじゃ」
モニカは先日から決めてあった名前をもう一度叫んだ。
「テンサ!! なんとかしてくれなのじゃ」
モニカの呼び掛けに呼応してテンサの身体が光り出す。
ハーピーは進化した。ハーピーキングではなく女性種なのでハーピークイーンといったところか。遠目なので詳細は分からないが参加はしているようだ。
「ネルバ、私に残りの鉱石を貸して」
そう言い鉱石を持ち高速で大型飛行魔獣に近寄り魔獣の上空から鉱石を叩きつけた。乗せるというより背中に力で埋め込む勢いだ。
「みんな離れて」
鳥人もハーピーも離れる。そしてテンサは高速であっという間にモニカの所まで飛んできた。飛行速度が段違いになっていた。ハーピーは上位になればなるほど飛行速度も上がるようだ。
「今です。モニカ様のありったけの雷撃を喰らわせてやってください」
そう言うとテンサは倒れてしまった。進化直後にパワーもスピードも限界まで出し切ってしまったようだ。
「あとは任せるのじゃ」
騎士団の護衛部隊が大型の盾を構える。ノエルもその後ろで念の為に自分の巨大な手を出し防御の構えを取った。俺はできることもないので情けないが更にその後ろにいる。
「これがうちの全力じゃ、喰らえ!! 落雷撃!!!!」
魔獣の頭上から五本の稲妻が魔獣に落ちる。両翼に二本ずつ、本体に一本。魔獣に付けられた鉱石に見事全て直撃した。破裂音と共に鉱石に込められた雷の魔力が解放される。両翼には無数の穴が開き、身体は内部から鉱石と雷が弾けたようだ。魔獣を内側から撃破したおかげで、魔法や鉱石の欠片がこちら側へはほとんど飛んでこなかった。
しかし、大型飛行魔獣は最後の力を振り絞り減速しながらも街に突撃してきている。
モニカは全力を使い果たし追撃する余力は無く座り込んでいた。
「ここまで弱っていたらトドメは私でも刺せますよ」
ラフィッカが弓を構え魔法の矢が放たれる。
その矢は魔獣の眉間を貫き、魔獣は街へ突撃することなく街の手前で地上に堕ちていった。
こうしてプロントを襲った大型飛行魔獣を撃墜することができた。
今回、俺は戦闘そのものでは役に立たなかったがキッタカール鉱石の謎を解いたことは北西領を守る役に立てたと思いたい。




