38.キッタカール鉱石の謎
俺の首飾りが壊れる発言を受けモニカが慌てた。
「どういうことじゃ? なぜ壊れるのじゃ? せっかく高い買い物をしたのに」
「すみません。まだ憶測なのですがモニカ様のおかげでキッタカール鉱石の謎の解明が進むかもしれません」
「タロウ様、それはどういうことですか?」
モニカが割って入ってきた。
「ここだと危ないのでどこか外で説明させてください。モニカ様の力が必要なのです。もしかしたら魔獣撃退の鍵にもなるなもしれません」
「わかった。じゃが、首飾りが壊れて何も成果がなかった時は首飾りの代金は弁償してもらうからな」
「うっ……」
半信半疑だがキッタカール鉱山の謎は確かめたい。しかし、火炎石の購入で俺の資金はほとんどない。どうしたものか。
「モニカ、分かったわ。もし首飾りが壊れて何も得られなかったら私が弁償してあげる」
ノエルが事情を察して庇ってくれた。元の世界だと中学生くらいの少女にお金の心配をさせてしまって情けない。
全員で城の中庭へ向かう。
「ではここの真ん中に首飾りを置いて、全員で離れましょう」
この場で盗む者もいないだろうがラフィッカとネルバに警戒をしてもらう。ただ、今の状況では俺が一番の不審人物なのだが。
「次はどうしたらいいのじゃ」
「首飾りに向かってモニカ様の落雷撃を落としてください。できればなるべく強めで」
「これで何も無かったら弁償じゃからな」
そう言うとモニカは構えを取って落雷撃と叫びながら雷を落とした。相変わらずのコントロールで見事に落雷は首飾りを直撃する。
落雷後の砂埃が収まるのを待ち首飾りの様子を見に行く。
「これはどういうことじゃ?」
モニカが声を上げた。俺の予想通り首飾りの装飾部分は破壊されていたがキッタカール鉱石は無事だった。
「これは魔法石の一種なのではないでしょうか。恐らく王都ではその可能性は検討されこの国で重宝されている五元素の魔法を与えたりはしていたとは思いますが効果が発揮されなかった。先ほどのモニカ様のお言葉でこの石は魔力を吸収するのかと考えましたが、それなら王都でも気付いているはずです。それでもう一つ、俺が元いた世界の技術を思い出したのです。この石は雷を吸収する石ではないのか、と」
王都では火水木土風の魔法は試したのは間違いない。雷を試したかは分からないが気付いていないことから恐らく試していないのだろう。
「最近、村で火炎石に触れる機会が多く、それと元々あった知識と重なってそうではないかと考えました」
「まさかそんな効果があったなんて」
ノエルとモニカはほとんど同時に似たことを口に出していた。他の三人も新しい発見に呆然としている。
「あと二つ考えられることがあります。キッタカール鉱石は少し透けているのですが雷を帯びた状態だと暗闇で光ると思います」
電球の要領だ。夜は電灯の代わりになりそうだが消し方が分からないので光りっぱなしだ。部屋では使えないかもしれないが街の灯りや夜間の移動には役に立ちそうだ、ということを伝えた。
「俺は魔法石に対しての知識が足りません。火炎石は炎を与え続けて石の中に魔法を溜め過ぎてしまうと破裂すると聞きました。魔法で熱したものを水に浸けて魔力を放出することで破裂を防ぎ生活に役立つものと聞いています。それならこの雷の魔法を溜められる石は炎と違い水で力を抜けないならどうなるのでしょうか。恐らく溜まっていた雷の力が破裂して甚大な被害が出るのではないでしょうか」
全員の顔が青ざめる。
「しかし、どうすればいいのじゃ」
「この首飾りについていた石は既にモニカ様の魔法を吸収していて危ないと思うので身につけるのはおやめください。それとできれば破裂した威力を確かめたいのですが、さすがに威力が分からないのでいくら小さな石でもここでは危険なので今は別のところに保管するのが良いかと思います」
「タロウの言うことも分かる。しかし、そなたも先ほどこの石が状況を打開する手段にはなるかもしれないと考えていると言っただろう。それならこの石の威力を確かめたい」
モニカのこの判断はさすが領主の王女という感じがした。先ほど前のノエルと雑談していた時とは違う。ノエルも同じだが重要な局面だと王族の雰囲気をまとったように見えた。
中庭では危険なので街の外でモニカが狙えるギリギリの範囲にネルバが石を運んだ。ラフィッカも威力を確認したいと装備を整えて部下を伴い城壁まで進む。
モニカは城から石を狙うことになった。それなりに距離があり視認するのは難しいため目標地点に旗を立ててもらう。
準備ができモニカが全力の呪文を放つ。
「落雷撃!!!」
モニカの雷は見事に旗に命中した。さすがのコントロールだ。
次の瞬間、石が弾ける爆発音がして溜まっていた雷の魔法が放出される。真横に弾けるというより地面に打ち付けられた雷が反射して斜めに伸びる感じだ。
首飾りの石なのでそれほど大きくなかったがモニカの戦闘中の反動の魔力と先ほどの中庭の一発と今の一発でなかなかの威力だった。分からずに首に着けたままだったらモニカの命が危なかった。
「タロウの言った通りになったのじゃ。もしあのまま着けて魔法を使い続けていたらうちは死んでいただろう。命の恩人じゃ、感謝する」
モニカはそう言って俺に飛び付いてきた。
ラフィッカとネルバが戻ってから俺の考えを伝えた。
「可能な限りキッタカール鉱石を集めてモニカ様の魔力を込めます。それをネルバ達やハーピー達に手伝ってもらって大型の魔獣に上から乗せてもらう。移動してるので当然落ちる分もあるかと思いますが、一定量は残ると想定してその状態でモニカ様に雷を直撃させて欲しいのです。溜めてあるキッタカール鉱石が連動して破裂して大きな痛手を与えられると考えます」
「しかし、それだけの鉱石をどうしたらいいのか……王都には二十五年分あるとは言えこの話をしただけで出してもらえるとは思えぬ」
モニカが困っているとモニカが助かる。
「今、採れている石をキッタカールから運びましょう。量は確保できるか分からないけど私の権限でできるわ」
「ノエル、それは心強いのだが王都へ納める分は大丈夫なのかの?」
「キッタカール鉱山は自慢じゃないけど採れない月もあるのよ。それに今は緊急事態。全部終わった後でこの効果を説明すればなんとでもなるわ」
エミルの時もそうだったが緊急時のノエルは判断が早くなるようだ。
「感謝するのじゃ、ノエル。ありがとう」
ノエルはキッタカールに向けて手紙を書いた。陸路ではとても間に合わないがハーピー達が運搬してくれることになった。人を運ぶよりは早いはずなので往復で三日もあれば届くだろう。
キッタカール鉱石がプロント防衛の切り札になることを祈るばかりだ。




