36.雷の王女
四人で進化の儀式をすることになった。
まずはモニカが決めてあった名前をハーピーに授けるが何もやはり何も反応が起きなかった。
「タロウよ、うちの代わりに進化の儀式をやってくれんかの?」
モニカに頼まれた。しかし、ゲンサンやグリーンのことを思い出しとどまる。
「もし成功したら彼女は俺と契約を交わすような形になってしまうのですが大丈夫ですか?」
「構わぬ。今はプロントの危機を脱出する方が先じゃ」
「私も大丈夫です。タロウ様、お願いします」
ハーピーからも頼まれる。
「分かりました。ダメかもしれませんがやってみます」
モニカの決めた名前をハーピーに授ける。
だが、進化は起きなかった。
当たり前だ。条件の一つにお互いに信頼するとあるのだから俺がやっても成功するわけがなかった。
ただ、それなら何故モニカがやっても上手くいかないのだ?
やはり信頼関係が足りないのか、それとも他に何か条件があるのか。俺には検討も付かなかった。
「そなたはうちのこと信頼できないのか?」
モニカが心配そうにハーピーに問いかける。
「いえ、そういうわけではないのですが……」
「なら、どうして進化できないのじゃ……」
「大変申し上げにくいのですが……」
「なんじゃ、気にせずに言ってみろ」
「私に限らず飛行種族はみな雷が苦手で、もしかしたら本能的にモニカ様からの進化を拒んでしまっているのかもしれません……」
「うぅ、確かにそれはあるかもしれないが……しかし、困った。このタロウではいけないのか」
「それはその……今日会ったばかりでこれは本能とかではなく信頼ができないのです」
それはこのハーピーが言う通りだ。俺がその立場でも拒否すると思う。
「タロウ、何か信頼を得ることをするのじゃ」
モニカが無茶振りをする。そもそも雷の魔法を使う王女がいる前で火や水の魔法を使ったところで信頼を得ることも出来なさそうだし困った。
その時、扉が開かれて衛兵が駆け込んできた。
「モニカ様、敵襲です!」
「敵の数は? 大型も来たのか?」
「敵は多数、数えきれない量が向かってきています。大型は確認できません」
「分かった、うちも出る」
「私も先に向かいます」
モニカと同時にハーピーはそう言うと部屋を出て飛んで行った。俺とノエルも後を追う。
外に出ると城からは距離があるが街へ侵入させまいとハーピーや鳥人が空中で戦いを繰り広げていた。
騎士団はその包囲網をすり抜けて来る魔獣を弓矢で迎撃している。空からの襲撃はは何も対策していなければ一瞬で壊滅してしまいそうだ。キッタカールで飛行型が出た場合、どうしたらいいのか。
その弓矢の雨を潜り抜けて城に向かってくる魔獣もいる。
俺も応戦する。
指を銃の形に構えて魔法を放つ。
「ファイヤ!」
しかし指先から放たれた火の玉は空中の敵に上手く当てることができなかった。陸上の相手と違って動きが予測しにくく距離が測りづらい。
「撃つ時はもう少し引きつけた方がいいですよ。ちょっと見ててくださいね」
弓を持った騎士団の男が助言をしてきた。弓を持っているが矢が見当たらない。
すると弓を構えて見えない矢を引くような構えを取った。そしてそこに光の矢が現れる。
魔法の矢だった。
矢を放つ。
物凄い速度で敵を射抜いた。
「こうやるといいですよ」
俺が仕留め損ねた距離とそんなに変わらなかったし、真似できるものではなかった。
「申し遅れました。この地の騎士団隊長のラフィッカです」
爽やかイケメンだ。中世的な顔に銀髪の長い髪を後ろにまとめていて女性に見えなくもない。これで騎士団の隊長で強いのだからさぞ市民からの人気は高そうだ。
「助けてくれてありがとうございます。モニカ様に呼ばれた転生者のタロウと申します」
「初めての空戦で戸惑うこともあるかと思いますが少しでも敵を撃退してくれると助かります。期待してますよ」
隊長なので物腰が柔らかく言い方もキツくない。こういう時はキツイ物言いの隊長が出てきそうなのに。
「モニカ様も魔法を使うようです」
この地は王女も戦線に立つのが普通のようだ。
「うちの領土で好き勝手するでない! 落雷撃!!!」
ノエルがそう叫ぶと十本、いやそれ以上の雷が空から落ちてきた。それらは街に落ちることなく全て確実に魔獣の上に直撃した。
凄い。一撃で魔獣を撃退する威力するだけでなく確実に当てるコントロールに目を見張る。
街への侵入を防ぐ戦いも何とか成功したようだ。数体がすり抜けてまだ城に向かってくるが、
「うちに任せておくがいい。落雷撃!!!」
二度目の魔法を放つ。今回も全て敵に直撃し一撃で撃墜する。
強い。しかし、これを見るとモニカの魔法は聞いている他の王女の魔法のようにその土地を豊かにするためというより戦闘用の魔法だった。電気製品のない世界では平和利用できないものだ。
「うちの魔法も強いがノエルの魔法も強いのぅ。その手にそんな使い方があったのか」
モニカが嬉しそうにノエルに声をかけていた。
「王都ではどうしていいか分からなかったこの魔法もタロウ様に出会ってから色んな使い方ができるようになったの。空飛ぶ魔獣とかは出ないけど北の地も魔獣が出るようになったから私も戦っているのよ」
「戦う王女がうちだけじゃなくなって嬉しいのぅ」
二人は何故か楽しそうに話していた。王女同士にしか分からない苦労や絆があるのだろう。
ノエルは巨大な手を使って空飛ぶ魔獣を叩き落としていたようだ。虫を相手にしているわけじゃないのに咄嗟の判断でよくやった。それに引き換え俺は一体も堕とせなかった。情けなくなってしまった。村に無事に帰ったら万が一のことを考えてもう少し魔法の精度を上がる訓練をしようと心の中で誓った。




