表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/86

34.北西からの使者

 プワンが自分の村に戻り準備を終えてキッタカールに引っ越してきたのは七月も終わる頃だった。エルフの森は秋になっても青々としていたが、エルフの森以外の木々は紅く染まっていた。

 プワンは引っ越すに辺り、公衆浴場の隣に一軒小屋を建ててもらった。俺の新しい家というか寝床だ。ブライも屋敷の一階の待機部屋を専用の部屋にしてもらい、二階は女性専用のフロアにしてもらった。ノエル、サラ、リリ、エミル、ポワン、それに新しく加わるプワン。さすがにこれだけ女性ばかりだと気を遣うので仕事場の隣に専用の部屋を建てた。

 プワンも青空教室で武術の先生として子供たちに教えるのも慣れているだけあって村で上手くやれそうで安心した。

 秋は気温も過ごしやすく大きな事件もなくキッタカール村として穏やかな日々が流れていた。


 八月に入った頃、北東の街からハーピーの使者がノエルのもとへやってきた。

 ハーピーは女性の顔と人間の身体を持ちつつ羽根が生えて足は鳥だった。元の世界で知っている知識の姿のままだった。

 この村には王室や王座があるわけではないので屋敷に来て話を聞かせてもらうのことになった。

 俺、ジョルジュ、それとエミルも同席した。


「北西領プロント、モニカ様からの遣いで参りました。現在、プロントは大型魔獣との好戦が続いており転生者様とノエル様のお力をお借りしたいのです。どうか私たちの街をお助けください」

 モニカは北西領を治める王女で、使者が持ってきたものは王家の印がある正式なものだった。


「事情をお聞かせください」

 ノエルが使者に言った。


「はい。五日ほど前にプロントに強烈な魔障気が発生しました。そこから大型の飛行魔獣が一匹と複数の魔獣が現れて街に襲いかかりました。小型の魔獣は討伐できたのですが、大元になる大型飛行魔獣は撃退こそすれ未だ討伐できずに傷が回復するとまた手下の魔獣を伴って街を襲撃するのです」

 飛行する大型魔獣なんていうのもこの世界にいるのか?

 そんなのが今この村に来たら手の打ちようが無い。


「北西領は元々空を飛ぶ魔獣が多発する地域で特別な体制が取られていたはず……そんな精鋭たちでも手をつけられないなんて……」

 ノエルがそう言うと使者は、


「いつもなら騎士団や私たちハーピーと鳥人たちで撃退するのですが今回の魔獣は魔力を帯びた攻撃しか効かずモニカ様の攻撃魔法や騎士団のラフィッカ様、それと鳥人の長であるネルバの攻撃しか有効な手段が出さずに撃退するのがやっとでして……繰り返しの襲撃に街は疲弊するばかりです」


「決して助けたくない、そういうわけではないのですが一つお聞かせください。そのような状況で何で私たちをモニカは頼るのでしょうか? 見ての通りキッタカールは八領の中でも一番貧しい地域でしてそんな強敵と渡り合えるとは思えないのですが……理由が分かれば教えていただけないでしょうか」


「失礼いたしました。強力な騎士団がいる王都や西領にも援軍要請はすぐに出したのですが空中戦ということですぐには援軍派遣は難しいから耐えて欲しいという回答が来ました。しかし、あまりにも今回の敵は手強くいつまでも耐えることが難しい。そんな時にモニカ様が北の転生者様の話を思い出し少しでも戦力わ増やそうと私たちハーピーの長であるハイ・ハーピーを進化させることにしたのです」

 俺がオークとゴブリンを進化した時の話だ。ハーピーも名を与えることで進化するのだろう。前にも獣人系は独自の進化形態があるって聞いたから鳥人には名前があって魔力を帯びた攻撃ができたのだ。

 実のところ、俺はあの時の出来事が少しトラウマになっていて明らかに人間でないと名前を尋ねることができなくなっていた。なのでエミルの時に着いてきたドワーフの名前は今でも知らない。


「しかし、モニカ様が名前を与えても私たちの長は進化しなかったのです」

 確か魔力を持ったものが互いの信頼のもとに名前を与えることで進化するはずだ。魔法の攻撃ができるモニカは魔力はあるはずなので信頼関係ができていないということか。


「それで種族進化の経験のある北の転生者様を至急連れて来て欲しいと私が遣いに出されました次第です」

 そういうことか。進化の経験者はこの前の話だとこの国に俺しかいないということだった。それで力を借りたいという話だ。だが、俺にもよく分からない。この前のは偶然なのだ。トラウマでさえある。


「分かりました。この救助要請をお受けします」


「感謝いたします。それでは早速出発しましょう」


「そうですね。ここからだと馬車で移動してもプロントまで十日くらいはかかります。急がないと被害が拡大するかもしれません」


「なので、馬車ではなく私たちが空を飛びノエル様と転生者様をお運びします。そうすれば二日もあれば着きますので」

 村の外に人を乗せる籠と他のハーピーが待機してくれているらしい。何らかの罠の可能性も考えてはいたが、この切羽詰まった感じは罠では無さそうだ。


「お気をつけて。モニカ様のこともよろしくお願いします」

 ジョルジュが出発前に声をかけてくれた。


「プロントはこことは違う形で特殊な王女の関係で必ず前王女も街にいるはずだから、もし会えたら私も今はキッタカールに戻ったって伝えておいてね」

 エミルが出発前にそんなことをノエルに話していた。


 準備が整い俺とエルミは北西領プロントへ出発した。

 この世界に来て初めての空中での移動が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ