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32.タイマン

 屋敷に戻りプワンが目を覚ますまでにポワンから事情を聞くことができた。どうやら本当に血の繋がった姉妹らしい。

 二人は東南東あたりにある村の出身で、東側はやはりフィルニアの内紛の影響と魔障気の発生の多さで治安が安定していない地域で育った。

 ある日、例の誘拐犯の一団が村の付近にやってきた時にポワンは他の人たちを逃した後に身代わりになって誘拐されていったとのことだった。


「先ほどの立ち回りをしていたプワンがいたなら、あの程度の奴ら楽勝だったのでは?」

 俺が聞くとポワンは何故か言いづらそうに答えた。


「ポワンや村の実力者はその日は用事で村におらず……ただ、私も襲ってきた輩は多少撃退してしまって……その戦っているうちに捕まった方が色々楽になるかなって思って捕まってしまいました」

 ポワンにも何か事情がありそうだ。


「お姉ちゃんはどこにいるのよ!」

 二階から大きな声で叫びながら目を覚ましたプワンが一階に降りてきた。まだ安静にしていないとダメですよ、と看病をしてくれていたジョルジュ夫人の声が聞こえる。ほどなくしてプワンが食堂に入ってきた。


「お姉ちゃん帰ろう!」

 プワンは先ほどまで倒れていたとは思えないくらい元気だ。


「プワン、お姉ちゃんはね、今はここでメイドとして働かせてもらってるの。だから村には帰らない」


「お姉ちゃんは騙されてるんだよ。それに奴隷として売られてここにいるなら違法なんだから無効だよ」


「違うの。この人たちに助けられてから村に帰ることもできたけど自分の意思でここに来たの」


「そう言えって言われてるんだ! ここの大将はどいつだ、出てこい。タイマンだ。ぶっ倒してお姉ちゃんを返してもらう」

 プワンは無茶苦茶なことを言った。敵陣に単身で乗り込んで大将とタイマンで勝負ができると思っていたのだろうか?

 それとも敵が何人いようと負けない自信でもあったのか。

 あと、この世界もタイマンって単語が通じるのか、そんなことが気になってしまう。


「分かりました。いいでしょう。その勝負、引き受けます」

 プワンの言葉にノエルが乗った。


 キッタカール村は水路を整備した時に今後発展することを見込んで村の領地を決めたので、まだまだ敷地が広大に余っている。そこに子供たちの青空教室を行う場所を決めて確保していて訓練場のようなものも確保してある。ここでは村の子供たちが種族関係なしにジョルジュ、ブライ、サラから彼らが空いている時間に自身の身を守れる最低限のことを覚える目的に戦闘訓練を教わっている。村として食事も改善して運動もするようになったので子供たちの体付きも少しよくなってきているような気もする。

 この訓練場はノエルのための訓練も目的に作られている。ノエルに武術の稽古を行い魔法と連動することによって戦闘能力を高めるためだ。それはジョルジュが指導してくれているだが、屋敷の仕事はジョルジュ夫人で足りてしまうのでポワンも訓練に参加させられていた。


「恐らくポワンは格闘技の経験者。かなりの強者だと思います。ノエルに付き合うことを口実にして腕が鈍らないようにしておきます」

 ジョルジュが以前そんなことを言っていたが本当に強者の可能性が出てきた。

 今回のタイマンはこの訓練場で行うことになった。


 ジョルジュが審判になった。

「この戦いは殺し合いではなく、あくまで戦闘訓練の一環として行う。過激な行動をした場合は中止するのでそのつもりでいるように」

 ジョルジュが試合前に注意を二人に伝える。


「わかったよ。でも、ここにいる人で私を止められるわけ? 審判も執事だし、護衛もチビ女だし、そこにいる冴えないおっさんは弱そうだし、あとは身体が大きいだけの鈍そうな奴。こんなの全部倒して早くお姉ちゃんと村に帰るんだ」

 執事はジョルジュ。チビ女はサラ。冴えないおっさんは俺。鈍そうな奴はズザ。俺はともかく他の三人をまとめて相手して勝てるとは思えないのだけど、プワンのこの自信はどこから来るのか。もしかしたら本当に実力者なのか。 ブライとの立ち回りを見ると過信とも思えない。


「そんなこと言わないの」

 ポワンが妹を嗜める。


「お姉ちゃんに勝てるのなんて、騎士団の副団長や武装商団の強者くらいなんだから、お姉ちゃんは自分でこの前の悪党どももこいつらも倒して自由になればいいんだよ」

 その元副団長も武装商団の出身者も周りにいるのだが。ズザはプワンの言葉に居心地が悪そうだった。


「おしゃべりはもう終わりでいいかしら? そろそろ始めましょう」

 ノエルは周りが悪く言われたことに少し怒っているようだ。


「おちびさんじゃ相手にならないかもしれないけど、少しは頑張ってよね」

 プワンはそういうと構えを取った。

 ノエルもそれを見て構える。魔法と動きを連携させるために所作として一度を両手を大きく開いてから身体の前に両手を広げる。武術経験者からすると慣れない構えだろう。


「ふーん、独特だけど少しはやれるのかもね」

 ノエルの構えを見てプワンが呟く。


「それでは試合はじめ!」

 ジョルジュが試合開始の声を上げた。


 プワンが先に仕掛けてノエルの見えない手で勝負が付く。

 あっさり試合が終わると思ったのだが、二人とも構えたまま試合は始まらなかった。

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