28.入村希望者たち
エミルだけでなく、ズザとジャーべもキッタカール村へ来ることが決まった。
事件の後処理が全て終わりキッタカール村へ帰る準備も整った時のことだ。
「わしらも一緒に連れて行ってくれ」
救出前に酒場で情報を教えてくれた三人のドワーフと、もう一人は知らない老人だった。
「ここ数日、あんたらの話は色々聞いた。この地は金が採掘されるということで国が管理することになるのだろう? そうなると鉄で加工する仕事が益々減ってしまう。それなら一緒に連れて行ってもらえないか? 鉄鉱石は採掘できていないと聞くが、もし鉄製の物を作ったり修理したければやってやるぞ」
鉄鉱石は採掘できないが、もし他から買い付けれるなら加工もできるようになるのか。それに長年放置されている道具の修理がもできるなら心強い。
「あと、酒も造れるぞ」
この国は酒造に関しての法律は無く誰でも知識と技術がはあれば作っていいそうだ。
俺は元の世界でも酒は付き合い程度で飲むくらいで家で飲んだりはしなかった。ジョルジュも同じようでドワーフたちの酒造りの言葉に反応しなかった。
「お前たちはあまり酒は飲まないのか」
俺とジョルジュの反応を見てドワーフたちはがっかりしていた。
「お前さんたちはどうだ?」
ズザとジャーべに聞いたが、
「あっしはあまり飲まないもので」
ズザの返事は悪の組織にいた者の言葉とは思えないものだった。ジャーべも横で首をふっている。
ドワーフたちはさらにがっかりした。こちらの世界でも若者の酒離れが進んでいるのかもしれない。
「そんなにがっかりしなくても大丈夫ですよ。村人たちは喜ぶと思います。大歓迎です」
ノエルがそう言うとドワーフたちの顔が明るくなった。 ノエルは人を喜ばせるのが上手い。
「それでドワーフの皆さんのことは分かったのですが、もう一人の方はどなたでしょうか?」
ノエルが聞いた。酒場にはいなかったので俺もジョルジュも知らなかった。
ドワーフたちの説明によると馬の飼育を生業にしている人だった。
「ドワーフたちと同じでここが国の管理になるなら、わしの仕事もここには無くなると思って、できれば一緒に行かせてくれんかの。そちらの馬車の馬もドワーフの馬車の馬もわしが面倒を見ていたのじゃ。離れるのも寂しくての」
エミル、ズザ、ジャーべが乗る馬車は元々は誘拐犯たちの馬車だがエミルのために騎士団が接収対象にせずに使えるように置いていってくれた。それをキッタカール村の新しい馬車とすることになった。誰が村まで運転するのか悩んでいたので、馬のことを分かっている人が付いてくれるなら心強い。それに村に来てくれるなら馬の管理もお願いしたい。
それと更にもう一人、村へ付いてくることになった。
ポワンという奴隷として誘拐されてきた女性である。
奴隷だったものは、この国では違法なのでもちろん解放され自由になった。帰る場所があるものは帰ることが許され、この地で残って仕事をしたいものも鉱山が国で管理するにあたりそのまま残って鉱夫として仕事をすることも認められた。
奴隷から国家公務員へ転職するのだから、帰る場所が無いものはポワン以外は残ることを希望した。ある意味、大出世である。
「私もエミルさんに付いていきたいんです」
ポワンはそう言ってエミルにお願いしたらしい。
ズザはかなり大柄で180センチ以上ありそうだった。身体は引き締まってるわけではなく横も大きい。
ポワンはズザの横に立っても同じくらいに背の高さがあった。横幅は全然違うが、ヒールが無い靴を履いているのにズザと同じ身長なのは女性にしてはこの世界にしてもかなり高い方だと思われる。
「私、力仕事でも家事でもなんでもやります。ここにいるより楽しそうなので、どうしてもお願いしたいです」
実際に誘拐犯にはポワンは身体が大きく力もあるため鉱夫として採掘の仕事もさせられ、女性ということで食事作りや掃除、洗濯など家事もさせられていたらしい。
エミルはその姿を知っていたので、村に来ても働けるだろうと考えポワンも連れていくことになった。
武装商団出身で戦闘能力も高い商人のズザ。
鑑定や解錠ができるホビットのジャーべ。
鉄の加工ができる三人のドワーフ。
馬の飼育員の老人。
何でもこなせる元奴隷のポワン。
今までオークとゴブリンの新しい入村希望者しかいなかったが、やっと人型の人口も増えることになった。
馬車も二台も増えた。
そして先代王女のエミルも村へ帰ることになった。
また約三日かけてキッタカール村へ帰還した。
事件の事後処理も含めるとほぼ十日間、こちらの暦だと丸々二週間も村を空けていたことになる。
村人には当然出発前はエミル捜索の話は伝えていない。
だから、ノエルと同時にエミルが帰還したことが伝わった時は村は大きく湧いた。
その夜はドワーフたちが持ってきてくれたお酒を振る舞いエミル帰還の宴が開かれた。
朝まで大騒ぎの楽しい夜になった。




