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26.救助

 キッタカールから目的の鉱山までは約五日かかった。

 実際の距離は分からないのだが、元の世界のように自動車があったり鉄道が整備されているのではない。同じ国内でも徒歩で移動が原則で、身分の高い者は馬車や馬がある。さらにその上位の存在として飛行生物や魔法での移動が可能だ。

 元の世界の便利さが身に染みる。


 目的の鉱山の麓の村に到着して情報収集をする。ここは国の管理地では無いので民間人が村で様々な商売をやっていた。期間工のような働き方もあるようで宿もあり、日頃のストレス発散をするための酒場もあった。

 情報収集はノエルやクリスでは不向きだろうということで俺とジョルジュで酒場へ向かう。


 そこで昼間から酒盛りをしている三人のドワーフと話をすることができた。


「金を掘り当てた連中は少し前にやってきて、今開拓しているところとは別のルートを掘り始めたらすぐに金を掘り当ててしまったんだ。それはそれはみんなびっくりしたさ。それから急に仕切り出して、元々の鉄鉱石の採掘量が減ってしまったんだよ。ワシらは鉄鉱石の加工が仕事だったのに仕事量が減ってしまって、こうやって昼間から飲んでるんだよ。でも、あいつらおっかなくて誰も文句言えねぇんだ……」

 ドワーフたちが事情を説明してくれた。

 急に集団でやってきた、働いてるのは奴隷のようで賃金が払われているか怪しい、仕切ってる奴らは武装をしていて恐ろしく元々いた人たちは逆らえない、ということだ。


「ありがとう。ここの酒代は情報のお礼ということで私たちが出しましょう」

 ドワーフたちは仕事が無くてお金も減っていたからありがたい、と喜んでいた。


 馬車に残っていたノエルとクリスにジョルジュが酒場で聞いた話を報告した。


「エルミ様がいなくてもどんな者たちかは確かめないといけませんね。視察ということですぐに行きましょう。怪しい動きがあれば好戦は許可します」

 ノエルが言った。今回のノエルは先代王女が関わってる可能性があるからか好戦的だ。


 鉱山の手前に待機場のようなものがあった。


「私はここより西にあるキッタカールを治める第八王女ノエルと言います。私たちの村にも鉱山があり、まだまだ開拓途中で参考にしたく視察に参りました」

 待機場に着くなりノエルが名乗りをあげる。


「あぁ、どうぞどうぞ。あの辺境の地の鉱山の参考になることがあるかわかりませんが見て行ってください」

 代表の男がそう言うと、周りの男達が笑った。

 感じが悪いな。


「感謝します」

 ノエルは気にせず返した。ジョルジュとクリスは恐らく怒りを堪えている。俺もあまり表情に出さないように気を付ける。


「そろそろ鉱夫たちが休憩に出てきますし、案内しますよ」

 代表の男はそう言った。丁寧に見えるが馬鹿にしているのが丸わかりだ。


 鉱山には代表の男だけでなく他の連中も付いてきた。余計なことをしないように見張りだろう。

 入口に着いたところで鉱夫たちが出てきた。その中に少し目立つ女性が俺の目に入った。髪は肩くらいで少し癖毛、身体は小柄でくりっとした目のしている。恐らく俺と同じくらいの歳だが童顔なので幼く見える。鉱山で働くようには見えない。


「エミル様!」

 ノエル、ジョルジュ、クリス、三人がほぼ同時に叫んだ。


「迎えに参りました。一緒にキッタカールへ帰りましょう」

 これはジョルジュが言った。約二十五年、一緒に村で暮らした自分が言うのが伝わりやすいと思ったようだ。


「ジョルジュ……」

 エミルと呼ばれた女性が呟いた。名前が分かるならエミルで確定だ。


「おっと、お知り合いですか? この女は借金があってね。返済ができないけど、ろくに働き方も知らないって言うから困っていたんですよ。そしたら金脈を探す使える魔法が使えるって言うので働いてもらってるんですよ」


「借金なんてありません! それはあなた達が騙して作ったものでしょう」


「でも借用書もあるんですよ」

 代表の男は言う。典型的な悪役だ。


「そんなものは無効です。エミル様は連れて帰ります。それとあなた方は詐欺で逮捕します」

 ノエルが言った。逮捕は大きく出たな。


「なーにが逮捕だ、小娘。この状況が見えないか? 後ろには屈強な男達が何人もいるんだぞ。ガキとじいさんと女と後ろにいるへなちょこ野郎なんて相手にならんぞ。お前達、第八王女とその連れは事故で亡くなったと王都に報告することにしよう」

 こういう時はこの男は強敵のパターンと、口だけの小物のパターンがあるのだけど、あっさり勝負が決まり後者だった。


「殺さないように気絶させるように」

 ジョルジュにそう言われたけど、魔獣としか戦ったことなく対人戦は未経験の俺は出番が無かった。

 クリスが相手の副将と思われる人物に苦戦した以外はあっさり終わった。副将がクリスと互角ということはこの男は本当は強敵かも知らないと思ったがそんなことはなかった。


「この女がどうなってもいいのか? 武器を捨てろ」

 悪役のお決まりの人質を取った。エミルの首にナイフを当てている典型的な展開だ。

 俺もジョルジュもクリスも武器を置いた。

 ノエルはそもそも武器を持っていない。


「この女さえいれば金は見つけられるだ、どけ」

 ノエルは人形の手を掴むような動作を始めた。それにあわせて、男がエミルを捕まえていた手がエミルから離れていく。


「エミル様、こちらへ」

 ノエルがエミルに声をかけると、こちらへ走ってきた。

魔力のエミルには何が起きていたか俺と同じように見えていたから逃げるのに迷いがなかった。

 ジョルジュとクリスもしっかりは見えていないが何が起きたかは分かったらしい。

 男には当然、ノエルの巨大な手は見えないので何が起きているか分からないまま拘束されたということになる。


 こうしてエミルを助け出すことに成功した。

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